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窓際のおっさん18 君付けの違和感 職場での後輩同輩との接し方(後編)

 前回は君付けの気持ち悪さについて具体例と理由を述べた。また、「くれるかなぁ?」「できるかなぁ?」といった、大人同士ではまずあり得ないような、小さな子供に対する口のきき方を多用する先輩について、リスペクトがないだけでなく、意識過剰な上下関係、会社ごっこが過ぎることを述べた。

 今回はその続きとして、君付けの違和感について、その他の例を紹介し、考察したい。

<ケース3:メモ書きにひらがなで「~くん」>


 年賀状を最近は書かない人も増えたと思うが、手紙やはがきのあて名は「様」が一般的である。君、ちゃん、さんはあまり一般的ではない。
 ところが会社のメモ書きとなると「〇〇君」と書かれているケースがある。そこも「〇〇様」ではないだろうか。

 色々な上司や先輩、同僚にメモを貰ったことがあるが、やはり「〇〇様」が多いと思う。逆に面倒くさい人ほどやはり「〇〇君」を使ってくる。「〇〇くん」とひらがな表記の場合もあって、その時はさらに気持ち悪い。出来の悪いラブレターみたいだ。しかもほぼ男からであるのでぞっとする。

 逆にかなり親しいとあだ名のこともあるが、大勢に見られる前提でない限りは、君付けよりはマシとおっさんは思う。とはいえそれでも、仕事場のメモについては「〇〇様」で統一が良いと思う。

 ここら辺はマナーや礼儀というよりは、文語を知っているかどうかにもよるだろう。現代こそ文語と口語の差は少なくなったが、書いたものは残る、視覚的に訴えかけるものでもあるので、小さなメモでもやはり大事にしたい概念であるとおっさんは思う。

<ケース4:何故か同期入社を、いつまでも君付け、または呼び捨てにする風潮>


 ある先輩で、普段から他者に「〇〇君」「してくれるかなぁ」を多用する人がいた。ところがある時、特定の人に対しては、上役なのに急に呼び捨てで話をし始めた。普段仲良く遊んだり談笑したりといった親しい友人というわけではないようだが、どうやら同期入社なので、そのような接し方に変えているようだ。

 これもよくあるケースなのではないだろうか。

 一部で聞く価値観だが「同期はいつまでも横の関係を保てるから良いよね」という考えがある。日本ではこの同期入社は横並びという価値観が未だに残っているところがあるが、近年では疑問符がつく。

 同期だからと言って、それだけで親しい人と同じように呼び捨て、ため口の距離感で話してしまうのはなんとも馴れ馴れしくないだろうか。別に仲良くしたいわけではない場合もある。長いこと親しい交流も無い上に、社内外で立場が離れてくれば尚更だろう。

 無論、たまたま仲良くなって友達付き合いしている人が、階級がずっと上だったというパターンならば、その人の魅力や人間関係構築能力の賜物ではあるので十分理解できる。だが同期という理由一本だけで、急にため口で呼び捨てしてしまう姿は、傍から見ると、単なる筋が通っていない態度である。更に勘ぐれば、出世できなかったもんだから、出世した同期に無理やり乗っかているようにも見えてしまう。みっともない姿だ。

 特に普段から上下関係を気にする態度がにじみ出ている人がやると尚更そう見えてしまう。

 恭しく頭を下げろとまではいわないが、やはり事の初めからさん付けなりで、適切な距離で居たら、付き合いやすかったのではないかと、見ていて思う(もっともそういう人だからこそ、出世も遅れているのかもしれないが)。

<言葉だけで上下関係を醸そうとするのはみっともない>


 以上述べてきたように、いずれにせよ君付けはやはり好ましくないとおっさんは結論する。

 そんなのは、おっさんの趣味や好みの問題だろうという人や、会社での上下関係なのだから当たり前だろうと思う人も居るかもしれない。組織のカラーや目的にもよるので分からなくもない。

 だが、もしその価値観が大事なのであれば、警察や軍隊などの、階級によって役割が明確化されていて、上位下達の形式をとことん追求する世界にでも行ったらいいと思う。

 公安関係など、軍隊的な組織では今でも「復唱します」「拝命します」「了解、○○致します」といったキリッとした軍隊言葉を日常業務の中で多用している(もっとも最近は緩くなったり廃止の傾向にもあるが)。そういう組織にいれば、おっさんでも仕事中はその価値観に順応するだろう。また、上下関係が入れ替わって一瞬で言葉遣いが変わったとしても、そうするしかない世界なので違和感もない。

 しかし多くの会社組織では、前例のような「同期だから理論」のようなチグハグな価値観や、立場変化後の距離感問題に違和感を持つ人が後を絶たない。

 やや話が逸れたが、一般的には、やはりそこまで上下関係の形式を徹底する組織は多くない。となれば、さん付けからスタートすることが最適という結論は変わらない。
 
 さん付けの距離感と万能性は素晴らしく、その後の関係も長く続けやすい。君付けの馴れ馴れしさや、まとわりつくような上下関係の一方的表明はとにかく不快である。それでも続けてしまうのは、自信の無さの表れや、形式主義的行動の妄信ではなかろうか。

 年下であろうと後輩であろうと、相手に対して敬意を抱くべきことは当然であるし、誰に対しても言葉づかいには気を付けた方が良いのではないだろうか。

 変なビジネスマナーのことを言ってるわけでもない。比較的普遍的な相手への敬意の問題だろう。
 また今回は、下が上の立場にどう礼儀を通すかという話ではなく、上が下の立場に対して、どう振舞うかの話をしているつもりである。
 一方向の礼儀しか考えていない人は、本項を機会に、上の立場が下に接する時の礼儀も当然あることを理解・認識してほしい。

 上の立場である程、言葉で上下関係を作ろうとする態度は鼻につく。なめられるのが嫌だとか言う人もいるが、そう思うのも含めて、みっともない考えだ。

 下の人間の言葉遣いや接し方も、自分の成長に伴ってついて来る。言葉遣いが下手でもリスペクトは感じられる。むしろ仲良くなって助けてもらうには、舐められるぐらいが丁度良いとすら思えるはずだ。


 気持ち悪い君付けを止め、誰とでも一番良い距離感を築けるよう、相手との会話に選択の幅や余白を常に残しておきたい。

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