ひと匙日記 列

 列に並んでいる。又吉さんのイベントのための列。わたしは先頭から二列目だ。よし、いい位置に並べているぞ、と思う。すると途中で突然、先頭者が走り出した。わたしも慌てて後ろをついて行く。後方の人たちも「なに?なに?やばい!」と騒ぎながら走り出す。わたしは必死に走る。必死で先頭者について行く。なんとしてでも二列目を死守したい。わたしは走る。次第に列がぐちゃぐちゃになりはじめる。次々に抜かされる。全員がキャーキャー騒ぎながら走っている。慌てたイベントの関係者のような人が数人現れて大きな声を出しながら列を整えはじめる。もうはじめに並んでいた順番は大きく崩れ、わたしは先頭からずいぶん後ろになってしまった。悔しいが仕方ない。おとなしく列に並び続ける。とにかくここに並んでいれば、イベントには参加できるはずだ。
 背後から誰かがわたしのフード付きトレーナーのフードをわたしに被せながら「今回のイベントは全部店側の人がやってくれてるから、走ったり大きい声出したり、迷惑かけないようにお願いしますね」と注意された。え?と思って振り抜くと、又吉さんだった。又吉さんはさらにわたしのトレーナーの中に着ているシャツの襟を直しながら「近隣の方の迷惑にもなるから、ね、ちゃんと並んでくださいね」と諭す。わたしは、なんでわたしだけ怒られなあかんねん。みんなも走ってたし、走りながらキャーキャー騒いでたのわたしやないし…わたしの服ダサいのかな。あーでも、又吉さんのふかふかの手がわたしの首元にある。触れたい。と、思ったところで目が覚めた。
夢。
あーなるほどね。こんな夢を見るには心当たりがありすぎた。まず、中村文則さんの「列」という小説を読み終えたばかりであったこと。さらに又吉さんがデザインしたパジャマが販売されるというお知らせを聞いて、欲しいけど値段が値段だしどうしようどうしよう…と寝る直前まで考えていたことが要因だろう。たとえ夢でも又吉さんに襟直してもらうなんて幸せすぎるな。