「フリーランスPMって成り立つの?」に対する1年やってみての回答

こんにちは。フリーランスPMの小西です。

この記事は プロダクトマネージャー Advent Calendar 2023 の12/17の記事です。

昨日の記事はたけまささん変化を3ステップで実現する目標設定でした。


僕は昨年末に独立して、この1年間はフリーランスとして活動をしてきました。
何人か同業者の知人友人はいるものの、そんなに一般的な働き方ではないので自己紹介をする度にその存在自体を驚かれるということがとても多かったです。

ということで、せっかくなのでこの機会に「フリーランスPMって成り立つの?」という疑問への自分なりの回答を書き留めようと思います。


結論

普通に成り立つと思っています。

あくまで自分の経験が前提になりますが、仕事のパフォーマンスに対して契約形態そのものが影響していると思ったことは特段ないです。

これは、全ての案件で最高の成果を出したという意味ではなく「もし自分が正社員だったら〜」「今業務委託だから〜」ということを課題に感じたことがないということです。


どういうことなのか。少し抽象化して考えると、PMがワークするかどうかは様々な要素が絡むわけで、契約形態はその中の一要素に過ぎないと考えています。

要するに、業務設計や期待値調整ができていれば業務委託でも十分ワークするし、それが不十分ならば正社員含めた他のあらゆる形式でもワークしないだろうということです。

業務委託の方が働き方の幅がある分、少しマネジメントに癖があるようには思いますが、一般的に採用などで考えるようなポイントが抑えられていれば大きな問題にはならないように思います。


以下に、個別の観点についての見解を示そうと思います。

稼働時間

業務委託というと、ハーフコミットを想像される方が一定いらっしゃいますが実際の稼働時間には様々なパターンが存在します。

稼働時間単位の契約で週4-5相当の稼働をすることもありますし、役割と報酬ありきで必要な稼動はこちらで調整するという稼働の仕方もあります。
また、アドバイザリーに近い案件では比較的少額でお互いの負担の少ない稼働をすることもあります。

いずれにせよ、稼働時間は契約で縛れるので「PMはやることが多いので稼働時間が足りない」という問題は適切な業務設計と合意ができていればそうそう起きないかなと思います。

「フルタイムだとしても業務が膨大で追いつかない」という問題については正社員でも起こることなので、それも変わらないです。


キャッチアップ

PM業務においてユーザーやドメインについて深く理解することは言うまでもなく重要です。「業務委託だとキャッチアップってどうしてるの?」と聞かれることは一定ありますが、「基本的には正社員としてジョインした場合と特に変わらない」と回答しています。

理由はシンプルで、正社員として入ってもキャッチアップは必要で、新しく現場に入る人なら漏れなくキャッチアップに時間はかかるからです。

強いて言うならば、十分な情報を業務委託のメンバーにも公開しているかは影響が出るところかと思います。ただ、基本的には必要な情報には問題なくアクセスさせていただける現場を自分は選びますしリクエストもするようにしています。


主体性

どうしても業務委託というと発注者とその依頼を受ける人という構図をイメージされる方がいらっしゃいますが、ここも期待値調整次第でどうとでもなるかなと思っています。

案件の中には広く主体性を発揮してもらいたいというものもあれば、ある程度限られた範囲内でうまくやってほしいというものもあり、その期待役割に対して必要な範囲を意識して動くようにはしています。

とはいえ、基本的にプロダクトマネジメントに必要な業務範囲や役割を事前に想定し切ることは難しいので、自分としては主体性を求めてくれる、期待されている役割の中である程度柔軟に動くようにするというケースがほとんどです。

「自分は業務委託なので〜」と言って主体的に動かない方はいるようで、そういう方はそもそもお話にならないかなと思います。


その他

人や組織との相性、前提となる戦略やビジョンの妥当性、本人の能力などPMがワークするための要素は他にもありますが、これは当人の契約形態に依存しない話なので割愛します。
正社員だったとしても能力不足やミスマッチの問題は当然起こるという話です。


まとめになりますが、フリーランスPMを活用するには戦略を組織や業務の設計に適切に落とし込めるかに尽きるかなと思います。
ただ、これ自体も正社員採用の場合も必要なことなので契約形態によらず採用を行う企業においては避けては通れないプロセスです。

フリーランスPMは成り立つし、成り立つかどうかは正社員を雇うときに必要な要素と大きくは変わらないだろうというのが1年間この働き方をしてきての感想です。


フリーランスPM採用のメリット・デメリット

もう少し具体的なイメージをつけるためにも、フリーランスPMの使い所や課題についても少し言及しようと思います。

「こういう使い方があるんだな」「こういうことを考えて仕事しているんだな」ということの参考になれば嬉しいです。


フリーランスPMの使い所

1年間でいくつかのパターンのお仕事を受けてきたのでその例を紹介します。

  • フルタイム想定でまるっと実務を行う

  • 社内からの1人目PMの育成と実務のサポートを行う

  • 一時的な欠員補充として業務のサポートを行う

  • アドバイザリーとしてチャットやMTGベースで支援を行う

  • プロジェクトベースで実務及びその支援を行う

という案件に自分は携わったことがあります。

1点目は本来は正社員採用をしたいところの穴埋めというニュアンスが強いですが、他のものは期間が限定的だったりフルタイムほどの稼働が不要だったりするもので構成されています。

そういった隙間を埋めるようなところに採用いただくのはフリーランスの上手い使い方だなと思います。(もちろん、フルタイム相当の長期の仕事もありがたいのですが)

期間の切り方さえ工夫すれば、必要に応じて稼働を増やしたり早めに終了したりということができるのも業務委託の良いところかなと思います。


在籍期間

一方で、よく言われる懸念として一般的には正社員より業務委託の方が在籍期間が短いというのはあり、受け入れ企業からすると明確なリスク事項かなと思います。

ただ、これに関しては個人的には言いたいことがあって業務委託の在籍期間が短いというよりかは正社員側に「辞めたい(切りたい)けども継続せざるを得ない」構造があるだけでは?ということを思ってます。
また、フリーランスのポジショントークと受け取られるかもしれませんが、個人的にはそれを好ましいことだとは思っていません。

具体的な例としては、ミスマッチや業務の縮小があっても契約終了にできないこと、辞めたいけども経歴を汚したくないからしばらく在籍することなどがあり、これらは業務委託ならば終わってるけども社員だから関係が続いている場合になります。
個人的には、そういう状況でダラダラと関係が続くのはお互いにとってあまり良いことではないだろうと思っています。

そういう意味で、契約を切られるリスクもあるわけですから業務委託の方が在籍期間が短くなることは当然だと思います。
一方で、私自身は短期の切り替えを前提にお仕事を受けることはあまりなく、できるならば継続的に関わっていきたいと考えていることが多いです。

実際、自分もPJの都合で終了したものの1年近く携わっていた案件が過去にありましたし「辞める・切り替える理由があれば終了する、無いなら継続する」というシンプルな話に尽きるかなと思います。

お互いに終了を切り出す理由がない限り関係は続くわけで、お互いを満足させるように努め続けるというある種緊張感のある関係を保つことが結局長く一緒にやるためのコツではないかと考えています。


おわりに

1年間フリーランスをやってみての感想や受け入れ側の目線を交えてのフリーランスの活用の仕方などを書いてみました。

契約の話を書くとドライな印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、クビにできるし正社員よりも比較的辞めやすい中で契約を継続するということは両思いであることが保証されているというところが好きで自分はこの働き方を続けています。

実際、オープンな求人は決して多いとは言えず、企業さんの抵抗感があることもわかっているつもりなのですが、そんな中でも検討をされる企業さんや独立を考えている方にとって何かしら参考になれば幸いです。


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