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帰ってきたウルトラマンより前にあった、サクセス物語とは?

第二期ウルトラシリーズの『帰ってきたウルトラマン』の主人公・郷秀樹はウルトラシリーズでは初めての成長する主人公として設定されました。

郷秀樹は『ウルトラマン』のハヤタや『ウルトラセブン』のモロボシダンと違い、元は純粋な民間人です。
MATの新人隊員として入隊し、色々な苦難を経験しながら成長していき、番組後半からは立派なMAT隊員として、ハヤタやダンにも引けを取らない主人公として大成しました。

以後のウルトラシリーズでは未熟な主人公が成長を重ねていくサクセスストーリーを交えたドラマが基本となっていきます。



モロボシ・ダン

ご存じ、ウルトラセブンの仮の姿であるダン隊員は最初からウルトラ警備隊だった訳ではありません。第1話では突如現れた謎の風来坊であり、その活躍が認められて隊員の一員に加わるというものでした。

何故、地球にやってきたのかという設定は第17話とそこそこ番組が進行してからようやく明かされています。

ダンの正体はウルトラセブンなのでサクセスストーリーなどは基本的にないのですが、実は番組の企画段階ではダンも郷秀樹と同じように未熟な主人公として設定されていました。

本来、ダンは警備隊の正隊員ではなく準隊員として、ポインターのドライバーから出世をしていくというサクセスストーリーが予定されていました。
ところが、ダンを演じる森次晃嗣氏は番組の撮影開始時にまだ運転免許を持っていなかったため、結局その設定はなくなります。

しかし、本編ではこの初期設定の名残があり、ダンはポインターを運転しているシーンが多いです。

ドライバー設定の名残は所々にある

さらに第1話の制作順は5番目であるため、その前の制作順のエピソードでは所々にまだ未熟なキャラ付けだったような行動や言動の片鱗が見られます。

  • 第4話「マックス号応答せよ」

  • 第5話「消された時間」

  • 第6話「ダーク・ゾーン」

特に以上の3話ではどこかダンが子供っぽかったり、迂闊な行動に出てしまうといったシーンがあり、シリーズ初期ではややキャラ付けにブレが生じているのが分かります。

結局、本格的なサクセスストーリーはウルトラセブンでは成されませんでしたが、ウルトラマンが憑依した郷秀樹と違ってセブン本人が変身しているダンではサクセスストーリーをやっても無理が生じていたかもしれません。

実の所、帰ってきたウルトラマンの初期は郷秀樹の成長にこだわり過ぎたため、ドラマの演出や展開に問題が発生して視聴率が落ちる結果になりました。

モロボシ・ダンは最初から成長しているキャラだからこそ、ファンから支持されたと言えます。


ホシノ・イサム

ウルトラマンには少年ゲストの準レギュラーとしてホシノ少年が登場します。
科学特捜隊に憧れる彼は本部にも普通に出入りしていますが、設定上は候補生といったもので、同時に民間人でもありました。

演じた津沢彰秀氏が事故で骨折したため、25話を最後に登場しなくなってしまいますが、実はこのホシノ君こそがウルトラシリーズで最初のサクセスストーリーの主役だったと言えます。

科学特捜隊に入隊するのを夢見るホシノ君は第1話から登場しています。この時は本部に残るだけでしたが、続く第2話ではアラシ隊員に同行して本部との連絡役を任されています。

さらに次の第3話では何とアラシ隊員愛用のスパイダーショットを持ち出して、ネロンガに戦いを挑むという無謀ながらも小学生とは思えない行動力を見せています。
スーパーガンを撃つ機会すらなかったのに、あろうことかスパイダーショットと、光線銃を持って怪獣に果敢に挑んだのは後にも先にもこの回だけです。

第4話ではフジ隊員の休暇に同行した先で巨大化したラゴンに襲われます。
この時もラゴンにナイフを投げつけたり、自ら囮になったりと小学生離れした勇敢さを発揮しています。
本来なら大人のフジ隊員が守るべきはずなのに、逆に守られているので大人の面目丸潰れかもしれません……。

第9話では台風の情報を集めてその資料を本部に持ってくるなど、誰よりも先に積極的に情報収集という地味ながら重要な役目を果たしています。

また、ガボラを迎え撃つ防衛隊の前線に科特隊と一緒に同行もしており、その後はガボラを誘導するヘリコプターにフジ隊員と一緒に密かに乗り込み、結果的には助手としてハヤタをサポートすることになりました。
ジェットビートルに乗った訳ではありませんが、航空機で怪獣と交戦する機会を経験したとも言えます。

第16話では尊敬している岩本博士がロケット開発競争に負けたことを悔しがりますが、キャップから「科学者の勇気」について説かれています。
単に活躍するだけでなく、周りの大人から大切なことを教わるというサクセスストーリーとして重要なシーンが描かれています。

そして、次の第17話ではついに科学特捜隊の準隊員として、隊員服を身に着けるようになります。
正確に言うと16話のエンディングで既に着ていますが、これは宇宙服としてのような扱いです。

何気にホシノ君は宇宙飛行という貴重な経験をしたことになります。
サクセスストーリーとして、これはとても大きな進歩と言って良いでしょう。

隊員服を着るようになったとしても、まだ子供であることには変わりないので、第18話においては非常に危険な宇宙パトロールには残念ながら同行は許されませんでした。
それでもピンチになったハヤタを助けるという大活躍をしています。

第21話では気絶したフジ隊員に代わって、ビートルの操縦まで行うようになります。自動操縦ではありましたが、キャップから発進方法を教わってしっかりビートルを発進させることに成功したので、近い内にはビートルを本当に操縦できるかもしれない可能性が出てきました。

その後も怪獣ケムラーとの地上戦に同行までしており、先輩隊員達の戦いぶりを間近で見て勉強する良い機会を得ました。

ホシノ君が最後に登場するのは第25話までですが、そちらはほんのちょい役で物語には全然絡まないので、第24話が事実上最後の活躍になります。
海底基地に閉じ込められても決して慌てたりせず、キャップに基地内の異常を逸早く連絡もしています。画面には映りませんが、流星マークの通信機を使ったのは明らかです。

ゲストの少女を励ましたり、体調を気遣うなど民間人を守るという責任感もしっかり備わっていました。

第2クールの終わりには、ホシノ君はもう立派な一人の科学特捜隊員になっていたと言えるでしょう。


ホシノ君の成長譚・IF

第2クールまでで残念ながら番組からいなくなってしまったホシノ君ですが、実は第3クールでも登場していた可能性がありました。

それが、メフィラス星人が登場する第33話「禁じられた言葉」です。
このエピソードではフジ隊員の弟のサトル君というゲストが登場しますが、実はエピソードの原案ではその立ち位置がホシノ君だったのです。

科特隊の一員であるホシノ君が、メフィラス星人と対峙して地球を売り渡すように迫られるという、新たなシチュエーションとなっていたかもしれません。

ただの民間人であるサトル君よりも、科学特捜隊であるホシノ君が地球を売り渡すなら、メフィラスが選んだのも納得だったと言えます。

ちなみに事故で降板した津沢氏が退院したのは2月です。第33話は2月中に撮影が行われていたので、復帰は完全に無理でした。

ですが、それ以降のエピソード、36話以降は3月以降の撮影なので、脚本とスケジュールを調整すればギリギリ出演ができていたかもしれません……。

●第36話「撃つな!アラシ」

冒頭にパトロール中のキャップ達が児童会館を訪れているので、ホシノ君が同行していたとしても違和感がありません。
中盤でその児童会館に子供達が取り残されているので、ハヤタやアラシと一緒に助けにいくという展開もありだったでしょう。
そうなると、ザラガスのフラッシュでホシノ君も目をやられてしまいますが……。

●第37話「小さな英雄」

冒頭でデパートに現れたピグモンの元に駆け付ける他のメンバーと一緒に同行しているというのもアリでしょう。
ジェロニモン達が潜む岩山には案内役のピグモンが来ていますが、ビートルに残すピグモンと一緒に留守をキャップ達から任されても不思議ではないです。

ピグモンは再生ドラコに立ち向かいますが、それを助けるために追いかけてきたホシノ君がついにスーパーガンを使うという展開もあり得たかもしれません。
ピグモンはイデだけでなく、ホシノ君まで守ろうとしてドラコに殺されることになります。
そうなった場合、ホシノ君もエンディングで黙祷をすることに。きっと号泣していることでしょう……。

●第38話「宇宙船救助命令」

舞台となるQ星は非常に危険なので、同行したとしても宇宙ステーションV2までで、フジ隊員と一緒に留守番になっていたことでしょう。
あまり活躍の機会はなかったと思われます。

仮にQ星まで行った場合、宇宙船で留守番だったかもしれません。
あえて見せ場を作るなら、途中でキャップ達がキーラに襲われるので、第21話と同じようにホシノ君が自動操縦で宇宙船を近くまで飛ばすことができた可能性があります。

●第39話「さらばウルトラマン」

基地が岩本博士に化けたゼットン星人に襲われてしまいますが、気絶したフジ隊員や閉じ込められている岩本博士をホシノ君が救助していてもおかしくありません。

最終回は正直な所、見納めとして第25話のようにほんのちょい役でも良いので登場しても良かったような気もします。

以上のように、ホシノ君は番組の半ばで退場してしまったのが本当に惜しまれる、影の主役とも言うべきキャラクターでありました。


ウルトラシリーズのサクセスストーリーは第2期ウルトラシリーズから本格的になりましたが、第1期でもその試みがあったことは間違いありません。

残念ながらトラブルなどで成立には至りませんでしたが、ウルトラシリーズが単なるヒーローの活躍だけに留まらないドラマであったことが再認識させられます。

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