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実践したくなるプレイスメイキング。”場づくり8要素”とフランスの公共空間。

 2年前にパリとフランスの地方都市をめぐる旅をしました。平日にも関わらず、ランチタイムになると大勢の人が広場に出てきてくつろいでいてました。「なんで、こんなに居心地がいいんだろう。場づくりが上手だなぁ。」とボンヤリ思いました。

 その後プレイスメイキングについて調べていたら、筑波大学芸術系の渡和由准教授が場づくりのコツをとてもわかりやすく整理してくれているではありませんか!
noteマガジン”まちなかウォーカブルのヒント”の前号に、渡先生の提唱する「8つの場の要素」の話が出てきます。画像のクリックで記事に飛びます。

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プレイスメイキングのための「8つの場の要素」
(渡准教授提唱、作画/大竹英理耶)

 今日は、この「場づくり8要素」に従って、フランスでみた素敵な公共空間たちを整理してみたいと思います。

1. 座り場

 まず、縁側、ベンチ、敷物、可動イス はプレイスメイキングの基本と言われています。これらは、人々の自由な滞留を促します。特にイスは可動性が高く、縁側や敷物も自由度が高いとのことです。

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こちらはパリのセーヌ川沿いです。右奥の人たち、輪になって話し込んでいますね。「自分で椅子を自由に動かせること」「自分にとって居心地のよい環境を自分で主体的に作り出せること」これが大切なんでしょうね。

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ベンチで喋っている人たちも楽しそうですが、奥の芝生で何かを覗き込んでいる2人組。この人たちもすごく快適そう。上述した敷物の自由度の高さが発揮されていそうです。
 また、こんなパレットとクッションを組み合わせたソファもいっぱいおいてありました。部材の使い方が本当に上手。広い座面でくつろいで座れるんだろうなと想像できます。

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2. 眺め場

座ったときに見たい対象がある、良い眺めの場所がいいよねという話です。視対象と視点場を意識しましょうと言われることもあります。さらに、自分で眺めの方向を選択できると楽しいようです。
 この写真もセーヌ川ですが、川なのか、はたまた対岸の街並みなのか、何かを眺めながらだときっとついつい長居できてしまうんでしょうね。

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2020年はコロナ禍で路上のテラス席が一気に増えた反面、外に席を作っても人が座ってくれない、と嘆く地方の声も耳にしました。私もよくやってしまうのですが、屋外に机と椅子を出すときに、向かい合わせて置いてしまいます。それよりも、どんな向きだと眺めが良いかを意識してみてはいかがでしょうか。(飲食店の方は当たり前にやってますよね、偉そうにすみません)
 
そして渡先生は「そんなに簡単には人は座らない。置き方を試行錯誤しながらちょっとずつ良くしていく、慣れていって文化をつくるようなもの。」とおっしゃっていました。うーん、深い…!気長に頑張らなきゃですね…。

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3. 囲い場

人間は、座面の周辺を囲まれていると、守られている=居心地良く感じるようです。例えば、低い植栽や塀、木の枝、イスの背などが囲み要素になりえます。写真はアンジェの中心市街地の広場です。この広場は数ヶ月ごとにプレイスメイキングが模様替えされています。私が見たときは夏だったから少し南国チックでした。確かに、段差を背にするように椅子が置かれていて、”囲われ感”がありますね。

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セーヌ川のカフェも囲われ感たっぷりの一角にお店を出していました。そういわれてみると、人って隅っこが好きですよね。囲われ感を快適に感じるのは本能なんですね、きっと。

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4. 陰り場

言葉の通り、日陰となる場のことです。樹木の緑陰、屋根や庇、パラソルやテントなどを積極的に利用しましょう、と渡先生の講演でも話されていました。実際に日差しがつらい、日焼けがというのもあるかもしれませんが、それ以上に心理的に、頭上を守ってくれるものがあると、快適に感じるものです。上述の「囲い場」についての、こっちは垂直方向でのイメージですね。
写真はオルレアンの中心市街地です。みなさんみごとに木陰に入っていますね。

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また、こちらはパリの一角ですが、パラソルを大胆に傾けています。守られている感、出てますね。

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5. 食場

人が滞留する空間を居心地よくするには、食べ物を提供したり、食べ物を持ち込めることも大切です。食がセットだと人の滞留時間が増えるそうです。したのセーヌ川でもテーブルに自由に飲み物・食べ物を持ち込んでいますよね。写真には映っていませんが、すぐ裏でワゴンで飲み物とホットドッグを売っていました。素敵空間と食との関係は相思相愛ですね。

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6. 話し場 離し場

都市の本質は交流、「公共空間では話を聴ける場、話しかけられる人の居る場であることがとても大切」です。1人でふらっと出かけても、誰かと話せるとそれだけで1日がちょびっといい1日になった気がします。
 その一方で、「話をしないで居ることもできる場、離し場があることも大切」だと言われています。隣の人と距離を取れる場、欲しい時ありますよね。都市だからこその匿名性も確保されたい。深いですね。コロナ禍では人と離れることも求められていますしね。

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7. 灯り場

主に夜に、人の気配と灯りのある場のことです。飲食店や室内から漏れる「イン照リア」が効果的とのこと。渡先生はダジャレが好きなんですね!そして、すみません、フランス旅行では日没後に出歩けられず写真がありませんでした。(旅行に行ったのは夏で日没が22時とかでした。)この項には、灯り場が魅力的な地元の写真を置いておきます。

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8. 巡り場


そして最後です。これまでに挙げたような、魅力的な場が複数つながっているともう最強です。ひとつの場から他の場に楽しく移動できる、ということです。セーヌ川沿いのパリプラージュは数十メートルおきに様々な場づくりがされており、気づいたらあっというまに数キロ歩いていた!といった感じでした。連続性がありました。

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このほかにも、渡先生は「複数の用途を混在させよう」、「境界(エッジ)を開こう」という場づくりのポイントを提唱されています

おわりに

場を作らなきゃいけないシーンはいろいろあります。この「8つの場」を知っていると、ちょっとしたときに意識できて周りの空間が変わるかもしれません。例えば会議とかシンポジウムなんかでもこの8ポイントは使えたりします。好きなので再掲です。クリックすると記事に飛びます!

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プレイスメイキングのための「8つの場の要素」
(渡准教授提唱、作画/大竹英理耶)

 素敵な場づくり、きっと、建築家やデザイン分野の方にはそんなセンスはとうに身についていて自然と実現しているのだと思います。ですが、私も含めて悪戦苦闘している公務員仲間がいるんじゃないかと思い、ちょっとでもヒントになれば、と書きました。訓練してセンスを磨いていきたいですね。私も修行します。
 場づくり・プレイスメイキングのコツについて、もっと知りたい人は渡先生の講演を聞きに行ってみましょう!あとは以下のURの検討会も資料がわかりやすくオススメです。








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