YouTubeというプラットフォームが創り出した世界
2020年。過去最高数の視聴者が YouTube を訪れ、好きなエンタメを発見し、新たなスキルを学び、自宅での過ごし方を模索した。
アーティストたちは YouTube をバーチャルコンサート会場にし、ファンに音楽を届けた。
物理的な距離を保ちながら、人々のつながりを創り届けてきた "YouTube" という場所。
1日に30億回再生。
毎分500時間以上の動画アップロード。
月間アクティブユーザー20億人。
全世界で2番目に人が集まる YouTube というプラットフォームについて、
深ぼり、まとめてみました。
※ これを見ればYouTuberになれる的なことは書いておらずです
YouTube とは何か
2005年2月に、YouTube は PayPal の元従業員であるチャド・ハーリー、スティーブ・チェン、ジョード・カリムの3人によって設立されました。
YouTube の創設者が目指したのは、世界中の人々と動画を共有すること。
「Broadcast Yourself (あなた自信を放送しよう) 」
というメッセージとともに立ち上がった、ユーザーが動画をアップロード・共有できるプラットフォームは現在、どの映画会社よりもヒット作を生み出し、100カ国以上・80の言語で展開されています。
YouTube が生まれるまでは、世界中のユーザーが動画を投稿したり、自分のストーリーを共有するなんて想像もつかなかったし、
面白いダンス、予想外の行動をする子供、たくさんの猫動画など、日々の生活に関する動画を見たい人々こんなにいたんだと驚きがあった。
従来型メディアが描き、放送してきた「完璧な人間のドラマ」ではなく
飾らず、正直で、ありのままの姿であることを映す YouTube が人々に刺さり、ここまで成長してきました。
初期のYouTubeを成長させた3つの施策
2000年代はテキスト、画像、音声の共有と続き数多くのサービスが生まれてくる中で、動画を簡単に共有できるサービスはなかった。
また動画を簡単に再生できるサイトもなかった。
もっと簡単に動画を共有したり、閲覧できるサイトは作れないか、というところから生まれた YouTube 。ただ初期は、メールやCraigslistを使ってハックするも全然うまくいかなかった。
そこからハックではなくプロダクトの改善にフォーカス。
「関連動画」「配信者と視聴者のコミュニケーション」「動画埋め込み」の3つがYouTubeを大きく成長させました。
・関連動画
アルゴリズムに力を入れ、一つの動画を見たら、次の動画を見たくなるような「関連性」を重視することで、サイトに長く滞在する人が増えました。
・配信者と視聴者のコミュニケーション
二つ目は、動画のレーティングやコメント機能を押し出すこと。
それによりユーザー同士のやり取りを活性化し、他のユーザとコミュニケーションすることがサイトへのリテンションを高めました。
また動画に対して動画で返信する文化が初期はあり、メントスコーラのような人気コンテンツに、自分も返信!と、どんどんバイラルしていきました。
・動画の埋め込み
三つ目は、動画埋め込み機能。HTMLコードをコピー&ペーストするだけでブログ記事などに動画を簡単に埋め込めるようになります。
動画を共有する方法がなかった時代に、当時の大手SNS「MySpace」の投稿に埋め込まれて、SNSと一緒にグロースしました。
2005年4月にサービスをスタートさせたYouTubeは、2006年の夏に世界で最も急成長していたWebサイトとなりました。
そして2006年10月、YouTubeは「Google」によって買収されます。
創業から1年半、Googleによる買収は10日で決まる
Googleから最初、2億ドル(約220億円)の買収オファーが来たときは拒否していました。上場したいと思っていたし、売却するとしても、もっと良いものを作って大きくしてからだと思っていたとのこと。
ただ、サービスが伸びすぎてサーバ費用などでキャッシュが枯渇。
当時のYouTube社員は67人しかおらず、人もお金も足りない。
こうして、YouTubeが存続を続けるためには、売却だけが唯一の道だと判断し、Googleに売却されました。
買収価額は16.5億ドル(約1,800億円)のGoogle株式。(Google株式は当時から約6.4倍になってるので、今となっては創業1年半で1.2兆円の売却...!)
当時GoogleのCEOを務めていたエリック・シュミットは、このYouTube買収の意思決定を10日ほどで決定しました。取締役会を開いたのも1回だけ。
急成長していたYouTubeですが、買収時点では評価額に見合った収益を挙げておらず、「馬鹿げた買収」として批判されていました。
2009年には「過去10年で最大のテクノロジー業界における失敗」にも選定されました。
ただご存知のとおり、Googleの買収後、YouTubeは圧倒的にグロースしていきました。
買収後のグロース。YouTubeから"スター"を生む
Google買収後、当時は企業にお金を払って動画をアップロードしてもらっていたYouTubeですが、その後2007年にYouTubeパートナープログラムを開始。広告収入の支払い対象をメディア企業だけでなく、全てのクリエイターにまで拡大しました。
その背景には、YouTubeを新しい才能の拠点にする。ただ見てもらえるだけでなく、いくらかの収入を生み、それで食べていける場所になって欲しい、という思いがありました。
動画を趣味から商売に変える。
エンターテイメント界でのキャリアをコネと運に恵まれた人のものではなく、全ての人に開かれた道に変える。
クリエイターが稼げる仕組みを作ることで、いろんなクリエイティブが生まれ、YouTuberという職業が生まれ、スターが生まれてきました。
さらに収入が入ることでクリエイターたちは映像の質を向上させることもできました。
他にも、インフラの整備、権利管理業務のサポート、データ分析、特殊広告技術の提供といった仕組みを提供し、クリエイターを支えてきました。
また、同時に起きたのがスマートフォンの誕生です。
スマホのカメラで簡単に高解像度の映像を取れるようになりました。
誰もがクリエイターになれる可能性が広がり、誰もが視聴者になれる可能性も広がっていきました。
成長に伴い生じる権利問題。解決を目指すContent ID
ただ、YouTubeの成長とともに、権利問題にも直面。
テレビ番組やプロモーションビデオ、アーティストのライブを録画したものなどが違法に多数アップロードされており、違法コンテンツは後を絶ちません。
そこで生まれたのが Content ID です。
1. 著作者が音声や映像の参照ファイルを提出
2. そのファイルをハッシュ化しDBに保存
3. 動画がアップロードされるたびにそのDBと照合
4. 一致があると著作者は3つの方法で対応できる
→動画をブロックする / 動画を収益化する / 詳しいアナリティクスを取得する
(ほとんどの著作者は動画を収益化する方法を選ぶ)
というContent IDの仕組みにより、自動で収益がアーティストや権利者へと分配されるようになりました。
例えば、アーティストのファンが弾き語りをしたりカバーを歌うと、その収益は元のアーティストにも自動で配分される。
もし仮に広告なしでアップロードされている動画であっても、Content IDにひっかかると自動で広告が表示され、収益が権利者へと分配されます。
その一致の精度は実に99.9%とのこと。(よく間違うと聞きますが..)
この Content ID の仕組みの構築と改善に1,000億円以上投資しています。
そして、ファンがアーティストの動画をあげたりすることで、結果として 音楽業界に5年間で20億ドル以上の収益をもたらしています。
YouTube は音楽業界を壊しているとよく言われますが、同時にアーティストの自分の音楽を世界中の視聴者に届けられているのも事実。(ジャスティンビーバーも YouTube があったからこそレーベルの目に止まりました)
その他権利問題以外にも、ヘイトスピーチや嫌がらせ動画等とも戦い続けています。
テクノロジーの力でニュースの真贋を判定
権利問題以外にも起きたのは、フェイクニュース。
これまでテレビのみが発信していたニュースを個人も発信できるようになったことは、同時に多くの問題も生じさせました。
ただフェイクニュースに対しても YouTube はテクノロジーの力で解決していきます。
ある写真や動画が本物かどうか判別する時に、
1. あるビデオに映っている行動のクラスタを特定する
2. もし何かの出来事がソーシャルメディアに上がっていれば察知する
3. 自動的にその映像を調べてDBと付き合わせてそれが確かに新しいものかを確認する
4.もしその映像が独自のものであればジャーナリストがさらに踏み込んでグーグルアースやGoogleマップを使いさまざまなランドマークを特定する
5. またその場所の天気のデータと付き合わせて、影が適切な場所にできているか、風が適切な方向に向いているかを確認する
6. 言語と方言を特定・翻訳し、特定の地域でサイレンがどの様に聞こえるかを調べて映像の中でどんな武器が使われているのかを特定する
7.ビデオが本物だと証明されたらチームはそれをアップロードした人を探して使用許可を取る
これらを数秒~数分単位で行っています。
フェイクニュースとの戦いはまだまだ続いていますが、確実に改善の方向に向かっています。
広告以外の新たな収益還元を創り出す
YouTube はクリエイターやアーティストに、広告以外にも視聴者とつながる新たな方法・新たな収益還元を創り出しています。
・Super Chat / Super Stickers
・メンバーシップ
これらが収益の大半を閉めるYouTuberが2019→2020年で3倍になりました。
・Super Chat
Super Chat とはライブ配信のチャットで目立つように固定表示されるコメント。購入金額に応じて、色と固定表示される時間の長さが変わります。
Super Chat のメッセージを受け取ったチャンネルは 10 万以上。
ファンは Super Chat を利用して、クリエイターに挨拶やお祝いの言葉を送信し、交流しています。
(世界のスパチャランキングのトップ10のうち7名日本人だったりします)
・メンバーシップ
クリエイターが月額料金を支払っている視聴者とより深く交流しながら、収益を得られるプログラム。
視聴者は毎月料金を支払うことで、特製バッジやカスタム絵文字などクリエイターが決めたさまざまな特典を利用できます。
視聴者との交流を深め、視聴者が応援する気持ちを示せるようにしたい。
時には投稿者から感謝を伝えるための便利なツールとして活用されています。
また月額で安定して収益が入ることが、クリエイターのより新しい挑戦へとつながっていきます。
その他にも生み出されている新しい体験
上記以外にも新しい体験をYouTubeは創り続けています。
・YouTube Originals
YouTube によるオリジナルシリーズや映画、イベントを視聴できるサービス
(話題になっている作品はあまり聞かないですが、それぞれかなり再生されている模様)
・YouTube ストーリー
要はInstagramのストーリー機能と同じです。
YouTube ストーリーは新しいチャンネル登録者を見つけるのに役立ちます。ストーリーを積極的に活用しているクリエイターは、毎週の新規チャンネル登録者数が平均で 8.5% 増加しています。
・YouTube Shorts について
要はTikTokです。2020年9月に発表され、日本ではまだ展開されていない。
現在、インドのみ展開ですが1 日の動画視聴回数が 35 億回。
その他にもYouTube内で購入まですぐにできるコマース、動画の一部を短いクリップとして切り取り共有するクリップ機能、新しいクリエイターを発掘する YouTube NextUp 、クリエイターのための YouTube Space など、どんどん生み出されています。
YouTube Space 。今東京はクローズされオンラインに。
YouTube のKPIについて
2014年よりCEOになったスーザンウォジスキ率いる YouTube の各種KPIを見ていきます。(スーザンウォジスキはGoogle16番目の社員であり、初の女性最高幹部であり、Facebook COOシェリルサンドバーグの師匠であり、5人の子供の母でもあります)
MAUについて
売上(広告のみ)
視聴者はアメリカのみでなく、インドや日本でも多い。
また、サブスクリプションのYouTube Premiumもどんどん拡大していっています。
2018年には1,560万人
2019年には2,500万人
2020年には3,000万人
2014年11月の「Music Key」の失敗を経て、Premiumは拡大中。
2019年末には年間売上30億円ペースで進んでいます。
最後に : YouTube が創り出したもの
好きなことで、生きていく。
2014年に日本で公開されたあのCMから、6年が経ちました。
趣味で作られた動画が商売となり、
エンターテイメントを全ての人にとって開かれた道にした YouTube 。
注目される難易度は上がり続けていますが、
YouTube によって民主化された仕事は、世の中にどんどん色んなクリエイティブを生み出していくので、
個人的にはとても面白くてありがたいです。
「#一緒に 歩んだ 2020 年」を置いて終わります🙏
これだけ変化してきた YouTube 。
このまとめnoteも YouTube のごく一部だと思いますし、来年にはこの内容が意味ないぐらい変わっていそうです。
もしよければ、いいね♡ぽちお願いします!
ps. YouTubeみたいなプラットフォームを、これから一緒に創っていきたい人いたらDMください🙏
参考ソース
・YouTube Hits a Billion Monthly Users
・YouTube says has 1 billion monthly active users
・YouTube crosses 2 billion viewers a month
・YouTube is 15 years old. Here's a timeline of how YouTube was founded, its rise to video behemoth, and its biggest controversies along way
・YouTube Now Has 2 Billion Monthly Users, Who Watch 250 Million Hours on TV Screens Daily
・Why YouTube and the Music Biz Are Getting Along Better Than Ever
・10 facts about Americans and YouTube
・YouTube Revenue and Usage Statistics (2020)
・YouTube Official Blog
・The Ten Biggest Tech Failures Of The Last Decade
・YouTube Creator Academy
・CHART OF THE DAY: YouTube's Staggering Growth Continues
・YouTube革命 メディアを変える挑戦者たち
・2005年11月のYouTube投資検討
・ユーチューブなぜ成長? アップルの始まりは? 共同創業者が福岡で語った成功体験と起業家へのアドバイス
・ジャネット・ジャクソンの「ポロリ」事件が契機?YouTubeの創業(前編)
・【エリック・シュミット】YouTube買収、スピーディーな決断が重要