映画　【空白】

現在公開中の吉田恵輔監督作品
映画「空白」を観てきました

スーパーの店長に万引きを見咎められた女子中学生は、逃げて車道に飛び出したところ、悲惨な事故に巻き込まれて命を落としてしまう。彼女の父親である添田は、事故の原因となったスーパーの店長を追い詰めようと、マスコミを巻き込みながら激しい憎悪をエスカレートさせていく。

オフィシャルの概要には以上のように書いてありました
これを読んで今、なるほどなと思った箇所がありました

「マスコミを巻き込みながら」

このひと文には少しの違和感があるのです
父親の添田（古田新太）は
マスコミを巻き込んでいくような策士ではなく
マスコミが勝手に入り込んでいったような印象を
私は持っていたからです

日本のよくある地方都市での出来事
この映画の素晴らしいところは
父親の古田新太さんはじめ
俳優陣のキャスティングだと思いました

なぜ娘は死んだのか

父親は娘が万引きしたとは到底思えず
スーパーの店長（松坂桃李）の過去を詮索します
物語の性質というか伏線を張るのは仕方がないので
ツッコミどころもあるのですが
そんな脚本の隙間を全く感じさせない俳優陣の演技

私が特に大絶賛だったのは
スーパーに勤務するおばちゃん役の寺島しのぶさん
寺島さんの役は普段からボランティアに精を出す
正義感に溢れた熱血おばちゃんなんですが
「正義」とは何か
「正しいこと」は万人にとって「正しい」のか
このサブテーマが寺島さんを通じて
ずっと物語に寄り添っているのです

そしてもう一人
逃げている途中に急に道路に飛び込んできた女子中学生を
車で轢いてしまった女性の母親役の片岡礼子さん
私はこの片岡さんと古田さんの会話のシーンで
涙腺崩壊しました
要するに片岡さんで泣いたのです
１番の泣き所だったかと思います

「心の弱い子に育てた私の責任です」

このセリフが刺さりました
そんなこと言わなくていい場面で
こんなことを言える母親
嫌味に取られるような言葉かもしれませんが
片岡さんの演技からは
嫌味など微塵も感じず
子供の責任は親が取るといった覚悟が
余計に泣けるシーンでした

タイトルである「空白」
最後の最後にこのタイトルの意味がわかりましたが
この映画の中にはいろんな「空白」がありました
それが伏線にもなっていたように思います
あえて「空白」の時間をたくさん表すことで
観ている人に「真実」までの可能性を想像させていたなぁと
総じて作り手の意のままに鑑賞でき
とても完成度の高い映画だったなと思いました

モンスターと化した父親は
漁師で気性は荒く
もともとモンスター気質なので
その不器用さをどう見るかという所ですかね

行き場のない怒りや悲しみの折り合いのつけ方

私は片岡さんが正解というか
そういう人間でありたいと思いました

とてもおすすめの映画です

余談ですが
私の大好きな地下芸人のチャンス大城さん
チョイ役で10秒ぐらい出演されてました

↓「チャンスさんと私」の貴重な写真

映画『空白』公式サイト