年明けの仕事始めは稲穂なのです
真冬ですが
銀座では年明けの仕事はじめに
稲穂の簪(かんざし)をつけます
稲穂には2種類ありまして
鶴と鳩です
そもそも正月に稲穂の簪をつける意味は
商売繁盛であり
稲穂のようにたくさんご縁が繋がりますように
(めっちゃ綺麗に表現してみました)
ってやつです
世間的には稲穂の簪は
いろいろな種類があるのですが
正月の銀座では鶴と鳩の2種類が主で
大抵のホステスさんは鳩を選びます
なぜ鳩の稲穂を選ぶのかといいますと
鳩の稲穂には「目」が入っておらず
初日に来てくださった
ご贔屓のお客様に
稲穂の鳩に目を入れてもらう風習があるのです
(鶴には初めから目が入れてあります)
今日フェイスブックであがってきた過去ログで
2年前の正月の稲穂の写真がありました
写真は贔屓のお客様に
「目」を入れてもらった稲穂です
香港人であるそのお客様は
日本の風習をとても大事にしてくださり
銀座での遊び方も日本人以上に美しい人でした
鳩はひとつしかないので
どのお客様に入れてもらうかも大事なのです
私はこの年
その香港人のお客様に体験していただきたいと
初日にお呼びたてまでして入れてもらいました
1年に1度の1人にしか出来ないこの作業を
楽しんでくださいました
銀座は他にもおろし立ての着物は
しつけ糸をつけたまま出勤するという
慣わしもあります
お客様にしつけ糸を取ってもらうからです
お客様はとったしつけ糸を自分の5円玉に結び
着物の奥襟から中に落とします
家に帰って着物を脱ぐと忘れていた5円玉が
落ちてくるものでした
ある日、お客様に招待され
お相撲の地方巡業にお供したとき
一緒に連れていったお店の若い女の子が
おろし立ての着物を着て来たんですね
もちろんしつけ糸はつけたままです
お客様と一緒に
巡業先の施設の周りを散策していると
見知らぬ2人のご婦人がお客様の元へ駆け寄り
なにかを耳打ちしているのです
お客様は困った様子で
私を手招きし呼び寄せました
「ママ、ちょっと僕じゃわからないんだけど。話を聞いて」
と言われ
ご婦人方に向き直すと
「あの、若い方の着物、しつけ糸がついたままなんですけど、気づいてらっしゃらないようなので言ってあげたほうが。。。」
と申し訳なさそうに教えてくださいました。
私は
「ああ、すみません。花街ではおろし立ての着物のしつけ糸は取らずにお客様に取っていただく風習があるのです」と説明しましたが
一般社会にはそんなの関係ナシゴレンな訳で
逆にお客様に恥をかかせてしまったのかもしれないとのちに深く反省しました
女の子にすればママの大事なお客様が
スポンサーをしている地方巡業に
呼ばれたという大役で
あつらえた着物をその日におろすという
大変な気遣いだったわけです
私がひとこと
「しつけ糸は外してくるように」だとか
「初おろしの着物じゃなくていいからね」だとか
気を回せれば良かったのですが
全く世間との差に気づけませんでした
とても勉強になった場面でした
余談が死ぬほど長くなりましたが
「稲穂の鳩に目を入れるお客様」になる事も
選ばれし事なので
銀座遊びのひとつとして目指すのも
楽しいかもしれません
そして仕事終わりに
お店の近所のbarで肘をつきながら
仕事初めからクダを巻いている
私の後ろ姿の写真が出てきました
この時はまだママではなかったので
黒留ではなくて振袖きてます
態度の悪いホステスで笑える
こちらはママになっているので
黒留着てます
美容院で出勤前の写真なので
稲穂の鳩にはまだ目が入ってませんね
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