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自分の姿を気に入っておきたい/田房永子『いつになったらキレイになるの?〜私のぐるぐる美容道〜』


こんちには!
此島このもです。

今回は田房永子さんのエッセイ漫画について書きます。

田房さんはご自身の内面と向き合って言語化するのがとてもお上手な方で、更にそれを漫画に落とし込むのもまたお上手なんですよね。
だから漫画がとても面白いのです。

それから彼女は日本社会で日常をおくるうえでの“生きづらさ“に独自の視点から切り込む方だとも思います。

私の好きな本はたくさんあるのですけれど、今回は新刊である『いつになったらキレイになるの?〜私のぐるぐる美容道〜』を取り上げます。

タイトルの通り美容…というか、自分の外見を少しでもいいなと思えるようになるまでの過程が描いてある本です。

共感できるところがとても多くて面白かったのでゆるっと書いていきます!



共感&素敵ポイント

自分の姿がイヤすぎる!!

10頁

わかる…
私も仕事を退職したタイミングですごく太って(8キロくらいかな)、楽しいはずのお出かけ時の身支度も楽しくなくなってしまった…鏡を見るたびに私はなんてデブなんだろうと思った。


あの母に似てるなんて
耐えられないよォー

22頁

わかる…
親子だから顔の形とかも近いのか、私も母と同じような髪型にするとああ似てるなと思う。でもそれが嫌。
「お母さんのことが大好きだった、お母さんの容姿も大好きっていう人は、年を取るのがすごくラクなんじゃないかな〜」にはなるほどと思いました。私も自分の母が苦手なので。


(私は)自分の姿を気に入っておきたいだけなんだ

27頁。()内は此島が入れました

わかる〜〜〜!!!!!
絶世の美女になりたいわけじゃない。自分を肯定したい。

私は子供の頃からずっとずっと母にお腹がぽこっとしてる幼児体型と言われていたので(大人になってからも実家に帰るとお風呂上がりなどに言われる)、自分はデブなんだと本気で思っていた。

友達は否定してくれるけどそれはお世辞で、私はデブなんだとずっとずっとずっと思っていた。

でも今になって思うのは、退職前の私は全然太ってなんかいなかった。
もし可能ならあなたは綺麗だからそんなふうに思うのはやめなさいとその頃の私に言ってあげたい。
(そしてきっと今も、見る人が見れば私はたいして太っていないのでしょう)

女は若いうちが華とは言うけれど、若い時の私はずっと自分はデブとかニキビ面とかコミュ障とか眼鏡が似合わないとか髪型が変とか、自分の悪い面がとにかく目について自信がなくて仕方なかった。

たまに似合う(ような気がする)服を見つけて喜ぶけれど、その服を着て歩いていてもふと何かに写り込んで目に入った自分の姿がものすごくダサくヘンテコに見えるときもあって、そんな時は今すぐ透明人間になって家に帰りたかった。

自己肯定感がぐらぐらして不安定だったので、自分が気に入って買ったイヤリングを彼氏にわざわざ「どう?」と聞いて「別に好きじゃない」と本心を答えられてその場で泣くこともあった。
※今は自分が好きで身につけているならそれで良いと思う。自分が好きなものを恋人も好きとは限らない。それは仕方がないことだ。とはいえ、「(好きなものを身につけられて)いいね」って言ってくれよとも思うが…

今の方がずっと自分を好きだと思う。

痩せなきゃとか目をでかくしなきゃとか小顔じゃないととかムダ毛をちょっとでも残しておくのはアウト、みたいに「○○じゃないとダメ!」な価値観で生きていくのが本当に本当につらかった。今の私はそこから多少解放されて生きやすくなっていると思う。油断するとまたデブな自分無理…と思ってしまうけど。


渡辺直美ちゃんていいなァー

32頁

わかる…
渡辺直美さんは白髪すら「自分が成長した証!」みたいなこと言っててスーパー明るいんだよね。太ってる人向けの服もプロデュースしているし。その服は確か単にサイズがでかいだけってわけじゃなくて、太ってる人が着てもいい感じのシルエットになるようにとか身体を動かしやすいようにとかすごく考えられていたはず! めっちゃすき…太っててもお洒落を楽しめるようにって考えが尊い…泣ける…。


80代女性や中年女性、さまざまな体型の人たちがモデルになっていた!
「わ…私と同じ感じの体型の人が…はいてる!ジーパンをはいてる〜」
「これだよ私が見たかったのは!!」
“お前もジーパンはいていいよ”神様が言ってる気がした

39頁

わかるぅ〜〜〜〜!!!!!

いろんな人がモデルに使われているのって肯定なんだと思う。

シュウウエムラというコスメブランドがあって、そこのインスタでお歳を召された女性がモデルになっていてすごくすごく素敵だった。余裕があってかっこよくて楽しそうで。

ああ、歳をとってもメイクを楽しんでいいんだなと素直に思えた。


やっぱり似合わないのになぜか大好きで手放せないものって「いつか似合うようにできてるんだ!」

45頁


このセリフ前の指輪のエピソードがとても素敵。

田房さんの「『おばあちゃんになったら着こなしたい』から手放せないアイテム」が輝いて見える…!

似合わないけど手放さずに持っていたら似合う時が来る…そんな発想がなかったので、私はいま似合わないと思ったらそもそも買わないとかバンバン手放してしまう。

でもこれからは手元に置いておきたいなあと思いました。LOVE…🫶


(優しかった相手が試合になると)きゅ…急に

私にボール取らせないように

めちゃくちゃ意地悪になってる!!

無理つらすぎ

(略)

あからさまに負かそうとしてくる気迫が怖い!

57〜58頁。()内は此島が入れました


わーかーるぅーーーーー!!!!!

学生の頃そもそもスポーツが嫌いだったので体育の授業はなるべく後ろの方にいたんだけど、
それでも球技の試合のときなどはボールが回ってくるときもあって(バスケットの試合。優しい人がボールをまわしてくれる)、「あっ回ってきちゃったどうしよう」と焦っているときに相手チームの人にボールを手からもぎ取られたことがあった。

怖かった…。

日常生活を送っていて手の中のものをもぎ取られることってほぼ無いからね…同級生の勝利への欲求が剥き出しで伝わってきて怖かった。


初めて間近で馬の顔をじーっと見た。馬はジーッとしている。私のことを見ているわけでもないけど、無視しているわけでもない。私が近くにいても馬はそれに対して良いも悪いも思ってない感じが伝わってくる。

89頁


私には競馬場に馬を見に行くような馬好きの友人がいる。友人が好きだと言うので馬は良いんだろうなとぼんやり思っていたが、これを読んで俄然私も馬に乗ってみたくなった。

引用部分から私が感じたのは、ただ存在することを馬に受容されていること。

ガイド音声の入った瞑想アプリなどを使うと「存在を受容する」「良いとか悪いとかジャッジせずただそこにあることを感じる」とよく言われるイメージがあるが、それを馬から感じることができるのかなと思った。

存在をただ受容するのはおおらかな肯定なんじゃないかな。
”良い”も肯定だけど、これは「相手からの評価が”悪い“に変わらないように頑張らなきゃ」と力が入ってしんどくなってしまう(私の場合)。
だから、ただ存在を受容されるだけの方がおおらかな気持ちでありのまま過ごせていいなって思う。


体型や健康に関することはストイックにやってるとちょっとできない日に自己嫌悪するだけなので、今後の人生は以下のことに気をつけ守るだけにすることにした。

109頁


田房さんは「自分の姿を気に入っておく」ために色々試してみて挫折や失敗もした結果、ストイックにやるよりも自分が守りやすい9つのルールを決めたとのこと。

こんなふうに自分の性質に合ったルールを決められるのはすごく良いことだと思う。

そのためには自分がどんな性質なのか知らなくてはいけないから、失敗や挫折などの紆余曲折も結局は自分の性質を知るために必要なことなんだと思うな。

私が歳をとってよかったなと思うことの一つにこれがある。
自分がどんな性質の人間なのかわかったこと。

子供の頃は自分の性質もよくわからなかったから何か失敗すると「怠けているダメ野郎だ」と自分を責めていた。けれどそれを続けると病んでしまって心の健康に悪影響だった。

社会人になって何年か経つと、自分が楽に出来ることが同僚には難しかったりその逆があったりすることに気づいた。
それで「これは怠惰とかではなくて性質なんだ。自分の性質を知って対策をすればいいんだ」とわかり、それからは精神的に救われたし失敗も減らすことができた。

たとえば小さい例だけど、料理にこんなに肉を入れたら多いなと思って冷蔵庫にちょびっと残すと私はそれを大抵腐らせてしまう。
その経験があるので今はもう残さない。多いと思ってもガバッと入れる。
肉を摂りすぎるデメリットはあるけれど、食材を無駄にしないし自分を責めないから心の健康にも良い。

自分の性質を知るとそんなふうに対策できるようになるから、歳をとって(自分の性質を知ることが出来るくらいの時間を生きて)よかったなと思うのだ。


そうか、自分でやっちゃえばいいんだ。

112頁

ここがこの本の中で一番! 好きなところ。

「爆音で好きな音楽聴きながらカラフルな照明がクルクル回る場所で、気の許せる人たちと踊りたい!」と思ってからの「自分でやっちゃえばいいんだ」と気付く流れが最高すぎる。

更にそこにいつもと違う好きな格好で行くのは最高を超えた最高で泣きそう。

そんなアガる空間が日本にあったんだ…!!!

いや、違う。

日本にあったとかじゃなくて、田房さんが、自分で、最高な空間を作ったんだ…!!!!!!

素敵すぎる…🙏🙏🙏🙏🙏

田房さんがポジティブにメイクを楽しまれているのもすごく良いなーーーーと思った。
そうそう、私もこういう理由でメイクが好きなの!!!!! 古くさいメイクなんてダメダメとかそういう追い詰められるような、知らないことを責められるようなメイクじゃなくて、楽しくなれるメイク。それがしたいんだーーーーーーーーああああああ!!!(感情大爆発)


そして最後の清水ミチコさんとの対談の田房さんがとびきりの笑顔で楽しそうで…!!!

私もこんな顔になりたい…😭と思った。すきすきすき。

あと裏表紙のこの絵がかわいくてよきです。
好きなものが似合うって最の高でテンションブチ上げですよね。

というわけで素晴らしい本でした😊

最後に、田房永子さんのほかの素敵なエッセイ漫画を紹介して終わります!

田房永子さんのエッセイ漫画3選

  • 『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』
    この本に登場するA面B面の概念がすごく新鮮で、独自の視点を持ってる方なんだと感じました。読んだ当初はそうなんだ〜くらいの認識だったのですが、入院したときに「あっ! ここがB面の世界!」とスルッと腑に落ちる感覚がありました。
    この辺のこともいつかnoteに書けたらいいなあ。

  • 『呪詛抜きダイエット』
    今回紹介した本とも共通するテーマがありますね。太ってる自分は駄目だ等の“呪詛“を自分から取り除いて良い変化を起こそうとする本です。

  • 『キレる私をやめたい〜夫をグーで殴る妻をやめるまで〜』
    田房さんって内面の言語化うまいな〜と思った本です。過去に心に受けた傷を回復させる過程のことが書いてあります。

全部すてきな本なので是非読んでみてください〜!






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