都会の洗礼で寿司まで逃げていった話


「知らない人に着いて行ってはいけません!」
まさか小学生時代の教えがここにきて役に立つとは思わなかった。


ついさっきの出来事である。

※その後、警官の話は丸く収まりました


思えば私は昔から「知らない人に声をかけられやすい」見た目をしているようで、今日も声をかけられたのは2回目のことだった。
(1回目はおじいちゃんにレジの場所を聞かれた)
だけど最近は「損をする出来事」から避けられる習慣を身につけ始め、人間への不信感というものも漸く薄れ始めていたのである。
※過去関連記事
https://note.com/konomihiyoko/n/naef9eb381052

今日の午後17時までの私に言いたい。
「人間結局、悪い奴はいるぞー!!」

本当、こんなにも大きくしくじったのは久々だった。
しかしただで泣き寝入りする程ヤワな女では無いので、
自分への戒めと周囲への注意喚起の為、今日の出来事として記すことにする。
(マジで身をもって知ったことは※付きで書いて行くのでよければ皆さんも頭に入れてください。後結構リアルタイムの出来事なので、時々私の腹立ったポイントも書いてあります)


夕方の出来事である。
歯医者の検診を終えた私は、「今日は都会に出てきたしちょっと良い寿司を買って帰るぞー!」と意気込んでいた。
目当ての寿司屋は随分前に母と行った店だったのだが、確かお手頃でテイクアウトが出来る気がすると思い付いたのである。
我ながら名案だ。頭に寿司を沢山浮かべて歩いていると、前方50メートル前の男と目が合った。

『あー、合っちゃったな』

ぼんやりとそう思ったのは、男が明らかに私を見てロックオンしたのが分かったからである。
『よく街中で話しかけられる側の人』には何となく分かる感覚だとは思うが、そういうのは雰囲気で伝わるものだ。
私は「急いでるんで」という最強の武器を持っていることだし、めげずに真っ直ぐ進んでいると、なんと男は隣からではなく、正面に回り込んで声を掛けてきたのである。

「すみませんー!僕ナンパじゃないんですけど」

これは初の出来事で、思わず歩みを止めてしまった。
そして私の武器「急いでるんで」を発動する声の掛け方でも無く、いつもと違う展開につい怯んで口をパクパクさせてしまったのだ。

「どっか行って帰りですかー?」
「ええ、まあ晩御飯を買って帰ろうかと」
「ああー、作るのめんどくなっちゃった感じですか??」
「はぁ・・・」
※反省点1。悪質な勧誘はお金に余裕があるかを気にしているので、こういう無駄なことは一言も話してはいけないらしい!私は阿呆なのでこの一言で一人暮らしという情報もバラしてしまった!

「あのー、今街でアンケート取ってて、お答え頂ける方を探してるんですけど」
「アンケートだけですか?」
「はい!アンケートだけです!」
↑これほんと、今思い出しても腹たつ

今思うと反省はいっぱいあるのだが、この後マジで寿司を買う予定しか無かったのと「まあ個人情報とか断ればいいか」という気持ちで足を止めたのが最大の過ちだった。微かな良心が「アンケートとかあまり答えてもらえないんだろうな」と思ってしまったのだ!クゥー!!!
年齢と職業を聞かれたので抽象的に答えた後、小さなチラシと共に「○○でエステ店やってましてー」とエステについての質問がはじま…ら無かった。
※職業も同様、お金があるか見定められてる可能性があるらしいので、ヤバそうな人には「ニートです!実家で親に養ってもらっています!」と言おう

「エステって結構敷居が高いという方が多いんですけど、後悔される方も多いんですよねー。それで今から実際にお店を見て貰うっていうアンケートなんですけど」

あーこれマジでヤバい奴だわ。

心の中の幼い私が叫んだ。
「知らない人に着いて行っちゃダメだって、お母さんが言ってたよー!」
幼い私よ、同意である。
もう既に眠たかった私の頭にスイッチを入れた瞬間だった。

私はすぐ様大きなジャブを打った。

「え、店行くんですか!?店まではちょっと、すみません!」

「えー、何でですかー??」

男はヘラヘラと笑いかけてくるが、それどころじゃない私は
「いや、アンケートだけだと思ってたんで、場所移動するとかは無理です!」
丁寧に手振りまで付けて返した。

結構ストレートにパンチをかましたつもりだった。
しかし男は顔色ひとつ変えず、「いやだから敷居が高いからこそ今見とかないと」とか説得に入った。
え、今断ったよね??聞こえて無かった??流石に無かったことには出来ないでしょ今の断り方は!?!?
返ってきたのが強気な勧誘すぎて顎をマトモに喰らった私の頭の中には緊急事態アラームが鳴り響いていた。
長々と同じようなことを口にする男を前に、最早その言葉は殆ど入ってこない。
これで連れて行かれたらマジでやばい。絶対無償では帰って来れない。


ウーウーウー!緊急事態!緊急事態です!!


私は頭をフル回転させて、「そうだ男の影を出そう!」と思った。
※今思ってもこれは私みたいなタイプの人には一番有効だと思います

今までの会話で一人暮らしをしていることがバレている私には、誰か頼りになる存在が身近にいるというアピールが非常に効果的なのだ。
なんならその場で電話してやろうかとも思ったが、何も知らない(本当は実家にいる)彼氏に電話をするのは少々リスキーだと思い辞めた。

「あのー。家で彼氏が待ってて、晩御飯買ったらすぐ帰るって言っちゃったんで早く帰りたいんですけど」

どうだ…!?
辿々しい言い方になったが、これが無理ならもう無理だと思い、意を決して男の顔色を伺った。
今思うと笑ってしまうくらい、この瞬間男の態度は360度変わったのである。

「は?時間ないんなら早く言って欲しいんですけど。
時間の無駄だわ〜」

セリフを捨てるように、男は去っていった。
私はまあまあ大きな声で「そうですよねー」と言ってみたが、
きっと男には届いていないだろう。
私だけが、何も言えぬままその場でポツンと残された。
絶対に「すみません」とは言わなかった。
そこは自分の褒めてやりたいところである。

メチャクチャ腹が立った。悔しかった。
本当は怖い男の人に怖いことを言われるのが大層苦手な私は、泣きながらその場を去った。
こんな奴を野放しにしてたまるかと思った私は、角を曲がった先にたまたま立っていた警察に告げ口をしてやった。
(サラッと書いたが警察に告げ口したのは生まれて初めてのことである)

しかしまあ、このままでは腹の虫が治らぬということで記事に書いてやった次第である。あいつもまさか、自分の行動が記事に晒されているとは思うまい。

暫くは手の震えを治めるために本屋に身を隠した私だが(情報量が多いので、気を紛らわせるのに持ってこいである)
何だか寿司を買って帰る気分は全く無くなってしまい、
家でうどんでも作ろうと真っ直ぐに帰宅した次第である。
(無事に帰って来れた今、一番悔しいのはここだ)

その後、「強気な勧誘まではまだ分かるのだが店に連れて行くって怪しすぎるのでは!??」と正気に戻りネットで調べてみると、こんな記事があった。

https://www.shibukei.com/special/109/

私は初めて勧誘では無く詐欺に遭いかけていたことを知ったのだった。

「そんなん最初から無視すれば良いじゃん」
ああ、色んな角度から飛び交う声が聞こえてくるが、今はそっとしておいて欲しい…。
そうなんだけど…何故出来ないのかと聞かれれば、良心が痛むのである。
(被害に遭う前の注意喚起ではどんどん言ってやってください)

詐欺だと分かった途端、「大人の男が怖かった」という事象は「正気じゃない男が怖かった」という当たり前の事象に変わり、何だか気持ちを落ち着けることが出来た。寧ろ断れた自分よくやった!褒め称えるくらいである。

しかしあいつのせいで寿司を食べ損なったことだけは、これからも一生忘れない。

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