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3年越しの合宿と、次なる展開 #このひだより

2020年10月にインタビューギフトサービスの提供を始めて、まもなく3年が経ちます。

以前も書いたように、『このひより』の運営メンバー3人はみんな異なるバックグラウンドと仕事を持っていて、所在地もバラバラ。立ち上げから今に至るまで、ほとんどの打ち合わせをオンラインでやりながら、取材/執筆/編集/デザインなどの役割を補いあってきました。

そんな『このひより』ですが、実は2023年夏、はじめての合宿を開催したのです……!場所は僕(佐々木)のホームである滋賀県。コロナ禍を経て、ようやく実現したリアルミーティングで、僕たちはこれまでの貴重な本づくりの成果と、なかなか出口の見えない課題を改めて整理しました。

何を話し、これから何をやっていくと決めたのか。応援してくださっている方々にもお伝えできればと思い、ここに記録しておきます。

なぜ“3年越し”のリアルミーティングか

月2回の定例ミーティングはZoomで、日々のタスクや相談、雑談はSlackでと、フルリモート体制で開発してきた『このひより』。

関東メンバーの2人はもともと知り合いで、時々会うことはできるのですが、関西にいる僕を交えて会う機会は滅多にありません(たぶん、揃ったのは2022年春の1回だけ)。それでも基本は問題ない、と自分たちでは思っています。

ただ、「同じ空間で過ごす時間」が与える安心感が大切であることも、自分たちが“取材”というフィールドに日常的にいるからこそ感じています。長く運営をしていくのであれば、「重要な局面でのコミュニケーションはやはり実際に会って」という気持ちもずっと抱えてきました。

そもそもリリース前、初めて『このひより』を世の中に発信する前も、直接会って、3人の目線を合わせる計画をしていました。……が、突如訪れたコロナ禍によって延期。最初の重要な局面を、なんとかオンラインで切り抜けた経緯がありました。

そこから3年が経つ今、『このひより』はまた一つの転機を迎えようとしています。

これまでコツコツいただいた注文が、一旦落ち着く気配を見せていたこと。すでにお届けした方から、確かな手応えを積み重ねていたこと。そして同時に、今のままでは広げることは難しいと感じていたこと。結婚や独立など人生のフェーズの変化も経て、改めて話し合うべきことがたくさんあり、3人の仕事や家庭の条件が整った2023年夏、僕たちは3年越しに、関西に集まることにしました。

今後やっていくことの確認

さて、前置きが長くなりました。今回の合宿(ミーティングをしたのは実質的に半日ですが)で僕らが整理したのは、大きく次の3つです。

本当にこのサービスを続けていくか?
② 持続可能性をどう担保するか?
③ 土壌をどう耕すか?

さっそく順に書き連ねてみます。

① 本当にこのサービスを続けていくか?

ここには2つの意味が込められています。1つは、「インタビューギフト」に対するニーズがどこまであるか。もう1つは、自分たちにこれを続けていく意志があるかどうか。

前者の「ニーズ」については、これまでの注文数が決して多くはないことが、僕たちの気持ちを不安にさせていました。一方で、一部の方々からは「めちゃくちゃいい」「タイミングが合うときに絶対注文したい」といったポジティブな反応をもらえているのも事実です。

テーマ性や高い金額を考えても、「今こそ必要」と思ってもらう瞬間まで、きちんと続けていくことがまず重要ではないか。これまでご利用いただいた方々からのうれしい声を思い出すと、「続ける意味はある。むしろコツコツでも、続けないと意味がない」という結論に自ずと3人で至りました。

後者の「自分たちの意志」については、それぞれのキャリアとの重なりがポイントになってきます。現状、利益を出すことが構造的にかなり難しい(詳しくは後述)なかで、3人とも『このひより』の事業にだけ全力投入することはできません。また『このひより』をやっていることが、他の仕事にポジティブに働いているか、と言われると……たぶんまだ、直接はそんなに関係してこない。

それでもこのプロジェクトでの気づきは、普段の仕事で「自分が何を大切にするか」という視点に、多少なり影響を与えていると感じています。またAIをはじめ、産業の構造からガラリと変わろうとしているメディアの世界で、「それでも人が人に話を聞き、言葉にする」意味を、もっと追い求める必要があるとも思っています。

『このひより』で本を作るとき、この意味や可能性を感じることは少なくありません。だから、プライベート含めて忙しさに波があるなかでも「今はとにかく、続ける」。これも改めて、3人の共通の意志として確認を行いました。

② 持続可能性をどう担保するか?

『このひより』を始めて以来、常に最大の悩みであったのがここ。特にネックなのが「価格」です。

現状、β版半額で「5万円+税」という設定は、オーダーいただく方にとって、決してポンと出せる値段ではありません。とはいえ、僕らが制作にかけている時間を考えると、正直まったく割に合わない仕事といえます。

β版の制作(今もまだ数件進行中ですが)が一旦落ち着こうとしている今、これをもともと考えていた「10万円+税」で出すかどうか。それで本当に利用してもらえるのか。いやいや、もっとちゃんと手間暇と価値を伝えれば……。

今まで何度となく悩んできた問いに、今回の合宿で改めて向き合い、結論としてはβ版を近々正式に終了し、当初設定していた10万円より少し下げた形で届けようと考えています。僕らが本当に使ってほしい人たちに届きうる可能性と、僕らの経済的な事情と、ギリギリの間でバランスを取ってみることにしました。

また、もう1つの持続可能性の視点は、僕らがお届けできる量です。これまでのβ版制作の経験から、安定してお受けできる制作のペースの限界も見えてきました。もちろん急なオーダーにもできるだけ丁寧にご対応したいと思いつつ、高価な商品だからこそ、最高のものをお届けしたい。なので正式なサービスとして打ち出す際には、今掲げている日程を目安にしつつも、受注状況にあわせて納品日を都度ご相談させていただく旨をお伝えできたらと思っています。

③ 土壌をどう耕すか?

ここまででもお分かりのように、『このひより』は大量にオーダーをいただけるものでも、大量につくれるものでもありません。世の中にたくさん出回る製品でなく、認知が広がりづらいものを、それでも「ここぞのタイミングで選んでもらいたい」と願う点には、矛盾や葛藤もあります。

そこを承知でやるのだから、多少なり戦略を立てなくてはいけません。僕たちが今感じているのは、「インタビューをされる/してもらう」ことがもう少し日常にあるような、「文化」づくりの重要性です。この領域そのものに注目してくださる人が増えた先に、選択肢のひとつとして『このひより』があるようにしないと、みなさんの視界に入ることすら実は難しい。

もちろん、note連載『#大切な日が言葉になったなら』のようなコンテンツの積み重ねは今までも大事にしてきましたし、これからも力を入れていきます。一方で、『このひより』だけで何かをやろうとせず、もう少し近接領域の方々を巻き込む必要もあるだろう、とも考えています。

たとえば、「インタビューとは何か」といった問いを掘り下げる連載を、いくつか仕掛ける。同じようなまなざしを持って活動されている方々にお話を聞いたり、『このひより』で紹介したりする。共同で企画展をやる。などなど。

そうやって、いろんな角度から、ゆるやかにでも「インタビュー」を取り巻く土壌を耕すことが、新しい文化の醸成につながったらいいね……という話を3人でしました。

すでに具体的な仕込みを始めているものもあれば、まだアイデアベースのものもあります。協業に関心を持ってくださる方がいたら、連絡をお待ちしています。

【まとめ】

なので引き続き、『このひより』というサービスを継続して、インタビューギフトを世の中に増やしていきます!という、宣言のnoteでした。(長くてすみません!)

具体的なβ版終了、および正式価格のご案内などは、12月にと思っています。それまでにご注文いただける方がいらっしゃれば、もちろんβ版の特別価格でご提供いたしますので、遠慮なくお申し出ください。


アザーカット(関東メンバーの滋賀と京都めぐり)

・鴨川沿いの風景@京都

・みんなでいろいろ買い込んだ、丸太町の書店『誠光社』@京都

・初めての滋賀にはしゃぐ、ウィルソンと染谷(神奈川在住)

・琵琶湖添いのカフェ『なぎさWarms』

・ミーティングと2人の宿泊に使った、大津駅直下のレストラン&ホテル『Calendar』

・数年ぶりに夜お店を飲み歩いた佐々木(滋賀在住)

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