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向き合う関係から、一緒に進んでいく“仲間”になったみたいな。

2019年11月22日、“いい夫婦の日”。京都に暮らす早紀子さんが、夫・康孝さんと入籍した記念日です。

当時、すでに1年以上一緒に生活していた2人にとっては、ただ婚姻届を出しただけの日。けれどもそれは、普段と変わらない日常のなかに現れた、少しだけ特別な1日でした。

「『嬉しいです』って言われたことに、すごくびっくりして」。早紀子さんは当日のことを少しずつ振り返りながら、この1日を境に変わっていった、康孝さんとの関係についても語ってくれました。

(聞き手・執筆/佐々木将史 編集/ウィルソン麻菜

“いい夫婦の日”なら、忘れない

入籍日を11月22日にしたのは、そんなに深い理由があるわけじゃないんです。プロポーズしてもらったのが去年の6月で、そこからお互いの家に改めて挨拶してから……と思うと、2人の記念になりそうな「これ」って日が、どうしても見当たらなくて(笑)。

一緒に住むのは、2018年の夏からしていました。もともと結婚する前提で、「四季を過ごしてみてから」と話してて。だから、ちょうどプロポーズが1周年なんですけど、そこから大きな生活の変化もなかったんです。

思いつく日がないなかで、「簡単に忘れない日にした方がいいよね」と考えて、分かりやすく“いい夫婦の日”を選びました。平日だったから、2人とも昼間は普通に仕事して、夜に婚姻届を出しに行こうって。

で、その日は私の方が終わるのが遅かったので、職場まで彼に車で来てもらったんです。区役所の夜間窓口に行ったときに、ちょっとした出来事がありました。私たちとほぼ同時に、駐車場に入ってきた車があったんですよ。

「——こんな時間に?もしかして?」って思うじゃないですか(笑)。そしたら車から男性と女性が出てきたから、「もう、そうだろう」ってこっそり言い合ってて。

あまりに同時過ぎたので、ちょっと恥ずかしくなって先に建物に入ってもらったり、その2人がちょっとだけ書類の指摘をされてるの見て、こっちもドキドキしたり。“いい夫婦の日”ってわかりやすいから、他にも誰か来るんだろうなとは思ってましたけど、「まさか出す瞬間が被るとは」って思いました(笑)。

そのあと、無事に向こうの書類が受理されて、最後お互いちょっとニコッとあいさつして。それを見てた、受理してくれる職員さんもちょっとニコッとしてくれて……っていうのが、照れくさい空気もありながら、おもしろいなって感じたのを覚えてます。

「家族の仲間に入る」のを、受け入れてもらえた気がして。

もう一つ、入籍した日で覚えてるのは、そのあと2人でご飯を食べに行ったときのことですね。彼の実家の近くにあるイタリアンのレストランに行きました。記念になる日なので、やっぱりちょっと特別な気持ちになりたくて。

そこは、向こうのご家族が10年、20年とお付き合いをされてるお店なんです。私も誕生日のお祝いとかで、数回行ったことがあって。普段は2人では入らないお店だけど、緊張しないのに特別感があるし、もちろんごはんもおいしい。私から「行きたい」ってリクエストしました。

行ってみると、彼が事前に結婚のことを伝えてくれてたらしく、席に着いてすぐ「おめでとうございます」と言ってもらったので、びっくりして。あと、何もまだ注文してないのに白ワインのボトルを1本持って来てくれて、記念にプレゼントしてくれたんです。

「この店を、大事な記念日に選んでくれてすごく嬉しいです」って。

それまで、そのレストランに行くときは彼のご家族のお祝い事で、外から「参加させてもらってる」感覚でした。でもその日、向こうの行きつけだったお店の、親しい方たちから言葉をもらえたことで、私が「家族の仲間に入る」のを受け入れてもらえた気がして。

だから、ここに来てよかったなって、すごいあったかい気持ちになったのを覚えてます。そうやって祝ってもらえたのが、とにかく嬉しかったんですよね。

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一緒に進む“仲間”って気持ちが強くなった

籍を入れてからは、友達に「おめでとう」とか声をかけてもらうことで、「ああそっか、新婚なんやな」って自覚することが多かったです。でも、生活自体はその前と一緒だから、正直何かが特別変わったとは思っていなかった。

けど、今こうやって話しながら改めて考えると、あの日から、目に見えるものは変化してないけど、気持ちの部分は結構変わってきたかも、って思います。

仕事とか家事、生活のいろいろな話を突っ込んでできるようになったなって。もちろん、同棲してたときからお互い話はしてましたけど、やっぱり遠慮してたところはあったし、折り合わないところもあったんです。

例えば、私は一人暮らしの経験があって彼はそれがないので、どうしても家事の細かな部分で気づくことに差があったし。向こうも同じように色々思ってたり、価値観の違いを感じてたりしたと思うんです。そこを、前よりはちゃんと責任負う感じで話し合うようになったかな……って。

これは私の感覚なんですけど、“恋人”として向かい合ってる関係から、より一緒に進んでいく“仲間”になったみたいな。するとだんだん、同じ場所から同じ方向を見れるようになるんですよ。「ええ!?そこ向いてたん?なんや、私こっちのほう見てたわ」ってことにやっと気づいて(笑)、お互いの話が噛み合うようになった部分もありました。

あと、もう一つの変化は、周りの夫婦を見る目が変わったことかなと思います。それまで、「結婚したら普通は」とか「夫婦ってこうあるべきかな」とか、やっぱり意識してたところがあったんです。でも、自分もその立場になってからは、本当に夫婦それぞれというか、2人にとってのうまいやり方を見つけていくしかないなって、人に話を聞けば聞くほど感じるようになって。

結局は、働き方も家族の過ごし方も「お互いに心地いいとこを探り合ってくしかない」って思えるようになりましたね。と言うと、すごく聞こえがいいですけど(笑)、実際は時に激しくぶつかり合いながら考えるしかないんや……って気づいたのが、この半年でした。

リアルに描けるようになった「これから」

残念だったのは、コロナの影響で、今年6月に予定してた結婚式を延期にしたこと。来年できたらいいなとは思いますけど、こればかりはどうなるか分かりませんね。

ただ、彼がリモートワークになって、私は働いてる店舗が営業休止になって、「こんなに長い時間2人でいたのは初めて」ってくらい一緒にいました。不安な状況のなかで、そうそう揺るがない関係の人がいたのは、本当にありがたかったです。もし結婚してなかったとしても、このタイミングで結婚しようってなったかもしれない。それぐらい、「家族になれてよかったな」って感じる機会にはなってて。

将来のことも結構話してますね。子どもはほしいなとか、そうなったらもう少し田舎に引っ越したいなとか。今はアクセスを考えると街中にいるのがベストなんですけど、やっぱり家賃も高いし、もともと私も田舎の出身なので、子育てはそういう環境がいいなと思う気がしていて。

もし本当に子どもができたら、2人の価値観もまた変わる。それに合わせて、仕事や住む場所も変えていけたらって思います。

これまで自分のなかだけでふわっと思ってた将来のことが、今は一緒に「じゃあどうする?」って、リアルに思い描けるようになった。夫婦になって、そこが今一番変わってきてるところかもなのかもしれないですね。

2人にとって鉛筆


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