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7.十七条憲法に観る武士道の原点

 これまで武士道関連の本を出してきた私が、なぜ憲法十七条をとりあげるのか、いぶかしく思う人もいるかもしれません。
 実は、武士道の原点がどこにあるのか突き詰めて追求していったところ、十七条憲法に辿り着いたのです。
 武士道の研究者は少なくありませんが、その原点を十七条憲法に見いだした人は、ほとんどいないのではないかと思います。中には「武士道の原点が憲法十七条だなんて、おかしなことを言う」と受け止める人もいるかもしれません。

 けれど私は「十七条憲法があったからこそ、その後の武士のあり方や生き方が定まった」と考えているのです。
 憲法十七条で述べられていることは、すべて武士道の徳目に当てはめていくことができますし、聖徳太子信仰が広まった鎌倉時代の御成敗式目や、現存する最古の武将の家訓といわれる北条重時の家訓にも十七条憲法の影響がはっきりと見えています。
 種々の史実や、こうしたことを考え合わせて、憲法十七条は武士道の原点でもあるとしたのです。

 花山信勝氏が「『憲法十七条』はわが国最初の憲法であり、それとともに、後の近江・大宝・養老の『律令』をはじめ、中世および近世の『武家諸法度』にいたるまで、久しくその影響をおよぼした、きわめて重要な憲法であります」(『聖徳太子と憲法十七条』大藏出版)と述べているのを見いだした際には、我が意を得たりと膝を打ったものでした。

 武士道による人としてのあり方は武士階級だけの矜持ではなく、江戸中期以降は広く一般庶民にも浸透していきました。ゆえに武士道は日本精神ということができます。このことは同時に、今なお私たち日本人が「憲法十七条の心」によって生きていることを示しているといっても過言ではありません。




 



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