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21-4 梅すだれ 肥後の国

「ぼっちゃん!ぼっちゃん!」と何度呼び掛けても目を開けることもなく息もしていない。しかしその夜は屋敷に残っていた布団の中で坊っちゃんを抱いて寝た。もう二人の坊ちゃんと使用人が何人もいて賑やかだったお屋敷では夜だろうと誰かしらの気配を感じるのが常であった。なのに音ひとつしない。坊っちゃんと二人冥土の入り口に取り残されたようで淋しさが体の奥から湧き上がってくる。お菊は布団を頭からかぶると「奥さまぁ」とすすり泣いた。

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