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34 結婚したい女たち 秘密

五年前の九月。夏休みが終わって新学期が始まりまだ暑い日の続く頃だった。
暑さがピークに達した午後三時。一花はダイニングで窓の外を眺めながら座っている。一歳十か月の息子英雄えいゆうは寝室で昼寝中だ。一緒に昼寝をしていた時もあったけれど最近は息子のいない自分だけの時間が欲しくてこうやって息抜きの一時ひとときを過ごすようにしている。

真っ青な空に浮かぶ大きな白い雲は疲れた一花の心に一枚の絵として映った。現実感がなかったのだ。心地よさそうに浮かぶ雲を見ていたらこのまま青空へ飛び込みたくなった。

(私もあの雲のように浮かびたい)

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