文学座「アラビアンナイト」
文学座公演「アラビアンナイト」を観た。
具体的なあらすじや、概要は省く。
個人的な感想だけを綴っていこうと思う。
感想
テーマパークのSHOW、みたいな芝居だった。
小道具は、全て手作り感あふれるモノだった。
紙、ペットボトル、フェルト、ダンボール、ゴム、布、サングラス。
どこでも手に入るものを使って、人形を作ったり、剣を作ったりしている。全体的に子どもの学芸会を思わせるような装飾だが、まるで「生活の中から、演劇は生まれる」と言われているような感覚になる。
演出も趣向を凝らして、おもしろい。
「劇と日常の境界線をいかになくすことができるか」にチャレンジしているような印象を抱いた。そして、観客に拍手を求めたり、実際に対話をしたりする中で「演劇は観客と共に創り上げるのだ」という強いメッセージが込められているような気持ちになった。
客席のほとんどは高齢者で埋め尽くされていたが、みんな笑顔を浮かべながら手拍子をしたり、声をかけている姿には感動すら覚える。
なんて素敵な空間なのだろう! と。
しかし、そんな全体的な喜びもありつつも、個人的には不満が残る公演だった。
1番は、俳優の演技に対して、だ。
不満
「これからの未来を担う子どもたちに、生の演劇に触れてもらいたい」
公演のチラシには、そう書かれていた。わたしも大賛成だし、素晴らしい試みだと思う。老舗の劇団がこのような取り組みをされることを、勝手に誇らしくさえ思った。
しかし、問題は、その演技なのだ。
先述したように、演出や小道具、空間作りにはすごく好感を抱いた。しかし、肝心のお芝居には不満が積もるばかり。
いくら「子ども向け」とはいえ、キャストのほとんどは、常にニンマリ笑顔を作りながら演技をしていたのだ。まるで本の読み聞かせをしているかのような態度。わかりやすく過剰な演技で……。
そう。子どもにだけ、ベクトルが向いている気がしてならなかったのだ。
わかる。やりたいことは分かる。
だが、6000円以上の金額を支払った観客としては、どうしても物足りない。どこかで引き締めるようなシーンが欲しい。真実の演技が見たい。心を揺さぶられたい!
祈るような思いで観ていたが、約2時間30分、役者のベクトルは子どもに向いたままだった。そして残念ながら、わたしが観た回に子どもの姿は見当たらなかった。
疑問
脚本は素晴らしく、演出も面白い。
それなのに、どうして俳優陣は真剣に物語の役を演じなかったのだろうか・・・。
「アラビアンナイト」は「千夜一夜物語」とも言われている。その内容を聞けば、誰もが「あぁ、それね!」と明るい表情を浮かべるであろう作品だ。
作品のテーマは「物語のチカラ」。
劇中、さまざまな物語が広がり、そんな物語を通して、人は何を学び、生きていくのか。そんなことが描かれる。
では、その物語の力を最大限に発揮するのは誰なのか。
1番は、俳優なのではないだろうか。
たとえ話が破綻していたとしても、演出がメチャメチャだったとしても、彼らが大真面目に役を生きれば、物語に真実が宿り、作品は光り輝くのだ。だからこそ、わたしは俳優に対して敬意を払うし、心から尊敬している。それなのに・・・。
俳優は、「作品よりも、わたしを愛して!」と言わんばかりの自己主張や、過剰で軽薄な演技をするものばかり。
バカにしているわけではないが、本当にテーマパークのSHOWを見てるような気分になった。特撮ヒーローショーであるとか、アンパンマンショーを見ているような感覚だ。
ショーに出演する俳優も、もちろんプロである。みな、素晴らしい演技をしていると思う。演技にもTPOのようなものがあり、その会場や作品に見合った演技を求められるのだ。
その意味で、文学座公演として、《質の違った演技》を見せられたことに、わたしは面食らったのだろう。シンプルに「場所がちがうよ」と思ったのだ。
文学座アトリエという、密な空間。社会から身を潜めるような秘密基地のような素敵な空間だからこそ、違和感を抱いてしまったのだ。
作品は本当に面白かった。
世界で戦争が起こっている今だからこそ上演する意義も感じだ。
だが、個人的に引っかかることも多かった。
ぜひ、全国のイオンモールや、イベント会場で上演して欲しいと思う。
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