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暮らし尋ねる日々

僕が本を出すとしたら、どんなタイトルにするだろう?

と、ふと空想していた。

先日、新潟県は糸魚川市から、石川県金沢市に向かう途中。

早朝、外も薄暗いうちから家を出て、各駅停車のワンマン電車に乗った。

駅のコンビニで買ったコーヒーをお供に、車窓を眺めながら考えたことだった。

今すぐ本を出したい。

とか、そういうわけではない。

ただ何となく、自分の人生のテーマというか、生きる上での軸みたいものって何なんだろう?と思ったのだ。

これまでの人生、あるいはこれからの人生を一冊にまとめるとしたら、どんな本になるのだろう?

そんなところから出発した。

とりとめもない、まるで抽象的な話だが、「本にする」という具体で考えると不思議とイメージしやすいな、などと思った。

そうして、いくつかのキーワードが出てくる。

暮らし。

暮らしという単語は、自然とすうっと身体に馴染むような感じがした。

これを軸に思い付いた単語をお尻にくっ付けたり、頭に持ってきたり、言い換えたりしながらイメージしていく。

本当の自分を見つける暮らし
本当の自分を探す暮らし
本当の自分を尋ねる暮らし
本当の自分を尋ねる日々
日々、本当の自分を尋ねる
暮らし、尋ねる日々
暮らし尋ねる日々
日々、暮らし尋ねる
過ごし尋ねる日々
尋ね過ごす日々
日々、尋ねて過ごす

今、LINEに残したメモから引っ張り出してきて思い出したけど、読点を付けたり、入れ替えたりもしていたみたいだ。

ちょっとしたニュアンスが変わってくる。

LINEアプリのKeepメモトーク画面と睨めっこしながら、ときに窓の外の山に目をやる。

目の保養。

山の木々を見ながら、頭の中では日々の暮らしがぐるぐると巡っていく。

夕暮れに海を眺めたり、山の中で焚き火をしたり、家で文章を書いたり、カフェでコーヒーを淹れたり。

そのイメージの中の僕は、基本一人だった。

ひとりぼっちというわけではない。

自ら進んで一人の時間を作り、自分と対話をしているという感じだ。

日々の暮らしの中には、必ず自分自身に尋ねる時間があった。

どんな暮らしがしたいのか。

どんな自分でありたいのか。

どんな生き方をしたいのか。

糸魚川に移住してきてから、僕の中でその時間がとても大事だと気付いたし、だからこそ今、穏やかな日々を過ごせていると思う。

自分の人生を生きているなという実感がある。

暮らしながら、自分自身に尋ねる。

こういう人生を生きたかったんだっけ?これからどういう暮らしをしたいんだっけ?と。

たぶん、完璧な答えには一生辿り着くことがないけれど、自分自身に尋ねていくことが人生なのだと思う。

それこそが生きる意味なのではないかと思う。

それだけが、と言っても良いくらいだと思う。

答え合わせは死ぬ時までできないし、死ぬ時でもなお、正確な採点はできないだろう。

だから、尋ね続けることそれ自体が生きる意味であり、暮らしそのものだと言える。

昨日より今日、今日より明日と、せめて過去と比べて良い方向に進むように、生きていくというほかにない。

逆に言えば、暮らしながら自分自身に尋ねることで、良い方向に進んでいける。

暮らし尋ねる日々。

これは僕が生きる上でのテーマであり、僕に関わってくれている、あるいは見かけたりすれ違ったり、ほんの少しだけ人生が交わった人にも伝えたいテーマだ。

世の中を見渡せば、凄い人がいっぱいいる。

僕の目から見たら、全く軸がブレずに芯があって、目標に向かって突き進んでいる人がいる。

(あるいは、そのように見えている。)

そういう人を見ると、なんて自分はだめなんだと情けなくなってくる。

日々、揺れ動いている。

これでよかったんだろうか?

本当にこれをしたいんだろうか?

どんな自分でありたいんだっけ?

風に吹かれる柳のように、ミシミシと音を立てて、左右に揺ら揺らとしている存在だ。

でも、同時に多くの人がそうなのではないか、とも思う。

だとしたら、そんな自分を肯定したい。

なぜなら、それは僕のように日々揺れている多くの人を肯定することになるからだ。

そんな自分でいいんだ、と。

むしろ、そのように日々自分に尋ねて生きていくことこそが人生というまである、と。

そういう在り方を認めて生きていくことが、僕の存在価値なのではないだろうか。

たぶん、これも変わっていくんだろうけど。

揺れていくんだろうけど。

でも、それでも、今このときの想いは本物だし、きっと振り返って読んだときに「そうだよね」と肯定できるものだと思う。

一方で、もしかしたら、これは変わらない幹のような考えなのではないかとも思う。

そうだとしたら。

僕の根底に根付いていく考え方だとしたら。

数年後、何年か分の文章をまとめたものが、"暮らし尋ねる日々" として一冊の本になるのかもしれない。

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