近所のピザ屋と靴磨きの少年

突然ですが作詞って難しいですよね。
僕はプロフルーティストの妻とBossa nova系というかラテンポップというかジャズ系というかフレンチポップ系というか…まぁとにかくそんな感じのデュオをやってるんですね。んで作曲もいっぱいするんですけど、今回は歌詞の話。

僕が思うJポップの歌詞の内容って…。

1 君を好きだけど振り向いてくれない。それでも想い続ける。
てのと、
2 頑張っている君を僕はずっと見ているから頑張り続けて。
てのと、
3 今の自分があるのは何々のお陰だから感謝しています。
みたいな感じが多いと思うんですけど。

僕はこーゆー歌詞は書きたくないんですね。僕にはなるべく使いたくない言葉がいくつかあるんです。それは「僕」とか
「俺」等の自分を表す言葉。それと「君」とか「あなた」等の2人称を表す言葉。僕は歌詞の中に自分を登場させたくないし、特定の誰かに対したくもないんです。

そこで考えたのが、短編小説のようなショートストーリーを歌うって事なんです。自分はあくまでもストーリーテラーに徹するって事です。

ちなみに僕、実は筋金入りのハルキストで、村上春樹さんの大ファンなんです。ごく最近の作品を除けば長編、短編、エッセイは全部読んでいます。翻訳作品もかなり読んでいます。ってちょっと脱線しちゃったけど村上作品に「カンガルー日和」っていう短編集あったじゃないですか?あんな感じにショートストーリーを考えてそれを歌詞にしようってのが僕の曲の歌詞における基本コンセプトなんです。

という事で、一曲取り上げさせて頂きます。
小学4年生の娘とデュエットした曲です。
タイトルは…。
「近所のピザ屋と靴磨きの少年」
といいます。いかにも短編小説っぽくないですか?
まずは歌詞を見てみましょう!

「近所のピザ屋と靴磨きの少年」
近所のピザ屋のシェフが僕にこんな事を言った。
靴磨きの少年の焼くピザは俺より旨いぜ
誰にも言わない秘密の隠し味
絶品のそれが何なのか俺にゃ見当もつかない
それなら靴を磨いて貰って確かめて来るさ
君はピザ生地に何を塗って焼いているのか?と

いやいや旦那、それだけはちょっと教えられませんね
あの味出せるのは靴磨きの僕だけなんだから
諦め切れずに夜な夜な忍び込む
こっそり覗くと彼はピザ生地に
靴クリーム塗っていた!
シェフに伝えると俺も真似て店を流行らせる
そう言ってすぐに靴クリーム大量に仕入れた
近所のピザ屋と靴磨きの少年の焼くピザ
言うまでもないけど僕はきっと二度と食べないさ

もうお分かりでしょうが、更に分かりやすく台本の様にするとこうなります。

「近所のピザ屋と靴磨きの少年」
(僕)
近所のピザ屋のシェフが僕にこんな事を言った。

(シェフ)
靴磨きの少年の焼くピザは俺より旨いぜ
誰にも言わない秘密の隠し味
絶品のそれが何なのか俺にゃ見当もつかない

(僕)
それなら靴を磨いて貰って確かめて来るさ
君はピザ生地に何を塗って焼いているのか?と

(少年)
いやいや旦那、それだけはちょっと教えられませんね
あの味出せるのは靴磨きの僕だけなんだから

(僕の行動)
諦め切れずに夜な夜な忍び込む
こっそり覗くと彼はピザ生地に
靴クリーム塗っていた!
シェフに伝えると「俺も真似て店を流行らせる」
そう言ってすぐに靴クリーム大量に仕入れた

(僕の意見)
近所のピザ屋と靴磨きの少年の焼くピザ
言うまでもないけど僕はきっと二度と食べないさ

となります。
こんな感じに僕はショートストーリーを考えてそれを歌詞にしています。

そしてPVを予算0円で制作しています。
歌詞のイメージに合う無料動画や画像を繋げて編集加工し所々に我々の演奏シーンを差し込んだりして仕上げています。これは一応短編映画のつもりです。其の内にショートショートフィルムフェスティバルに出品しようかと思うくらいですって嘘ですけど。僕はジム・ジャームッシュが好きで比較的最近だと「パターソン」がお気に入りなんですけどあんなセンスでPV出来たらなっていつも思っています。
とにかくよかったら是非ご覧になってくださいね。

私の創作活動の対価としてサポート頂けましたら、今後の活動資金とさせていただきます。皆様よろしくお願い申し上げます。