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【読書感想文】何者 朝井リョウ

前書き

 前回、読書感想文を書こうと思っている、などと書き、2週間たってしまいました。読んでくださった方、スキをつけてくださった方、ありがとうございます。上手くまとまっているとは言い難いですが、投稿します。この本を読んだ後の行動として、いつまでも投稿できずにいるよりも、拙いものでも形にする方が相応しいと思ったからです。

↓は目次になります。「本について」の途中からネタバレ注意です。


本について

↑出版社の作品ページへのリンク

読書感想文記念すべき第一弾は、朝井リョウさんの『何者』(新潮社)。
2013年の直木賞受賞作です。平成時代、就活に奮闘する若者たちのエゴや葛藤が浮き彫りにされていきます。

※ネタバレ注意

 主人公の拓人をはじめとする5人の若者たちの就活模様と人間関係が描かれているのですが、それがまあなんともドロドロしています。爽やかな青春物語、ではない。登場人物のほとんどが裏の顔を持つことがはっきり描かれています。例えば拓人。序盤で優れた観察力を発揮し、学生演劇で脚本を書いていたと説明されています。そして、どうも演劇の相方と仲たがいしてしまったらしい……ということが記されています。

 しかし終盤、拓人の恐ろしい別の面が明かされます。相方の劇がネット掲示板で叩かれているのを見て安心し、就活仲間を裏アカウントで貶す。就職先が決まった同居人が傍にいるのに、スマホでその就職先の悪い評判を探そうとしてしまう場面は本当に怖かったです。そして周りから距離をとり、冷徹な観察者に徹する拓人は、何か成し遂げたわけではない。内定を得ることもできず、好きな人に告白もできず、演劇からも遠ざかってしまっている。

 そんな拓人のどうしようもなさが暴かれる終盤は謎が明かされてすっきりすると同時に、読んでいて自分自身もダメージを負ってしまいました。本当は何かしなきゃとわかっているのに、あれこれ言い訳を並べて行動せずに終わってしまう。きちんとできない自分を直視するのが怖い……。自分はそういうことがよくあるので、カッコ悪くてもあがくしかない、という言葉が刺さりました。正直に書くと、この感想文の作成も諦めかけていました。「やろう!」という気持ちになれたのはこの作品のおかげです。ラスト、新たな気持ちで就活を続ける拓人にホッとしました。自分もなんとか続けていこうと思います。

瑞月の別の面

 上述の感想とはまた別のことなのですが、気になったのは拓人の思い人で、同居人の元恋人の瑞月のこと。作中では5人の中で最も早く内定を貰い、誰よりも現実的で大人。他4人とは異なり、欠点が見えにくい人物です。

 瑞月の影の部分をあえて挙げるなら、「諦念」なのではないかと思います。自分は自分の人生を生きられない、という諦め。作中瑞月の口から、母親が精神的に不安定であり、父親と離婚しそうであることと、瑞月が母親の世話をしないといけないということが語られます。読んでいて気になったのですが、瑞月は母と暮らすことを当然のこととしていて、一人暮らしをするという選択肢はないようです。就職を機に親と縁を切ることもできるはずなのに、それをしない。不安定な母親と生きていくことを決めている。その理由は瑞月と母の愛ではなく、瑞月が母に心理的に囚われているから、とした方が自然に思いました。そんな瑞月が演劇やライブに目を輝かせるのは、自分が自分自身の夢を追いかけられるような状況ではないから、何かに夢中になっている人が眩しい……ということではないでしょうか。

終わりに

 なんとか書けました。拙い文章ですが、少しは前進できたと信じたいです。

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