要約と感想「 withコロナ時代の京都観光の打ち手とは? 〜マイクロツーリズムの可能性を探る〜」に参加。
観光経済新聞社主催のセミナーに参加したので、要約と感想のメモ。
6月19日に国内移動が解禁されGOTOキャンペーンも始まる。
コロナのリスクを可能な限り低減しながら、観光客の皆様に来ていただくというアクセルとブレーキを同時に踏まなきゃいけない難しい局面がしばらくは続いていく。
そんな中で、ほかの観光協会やDMOはどんな活動をしているのだろうということで、興味をもって参加。
※以下要約の見出しは私の受け取り方で公式ではありません。
要約① モデレーターとスピーカー
今回のテーマは、「国内観光解禁緊急企画! withコロナ時代の京都観光の打ち手とは? 〜マイクロツーリズムの可能性を探る〜」
オンラインセミナーで、モデレーター・スピーカーは下記の皆様です。
公益社団法人京都市観光協会(DMO KYOTO)事務局次長 兼
公益財団法人京都文化交流コンベンションビューロー 事務局次長
赤星 周平 氏
まいまい京都 代表
以倉 敬之 氏
株式会社やまとごころ代表取締役
村山 慶輔 氏
要約② 京都観光協会 赤星氏 コロナ前の京都の状況とコロナ後の展望
・コロナの影響:
京都では宿泊率が低下、祇園まつりも58年ぶりに中止となるなど大きな影響が出ている。
観光解禁で少し光が見えたが、まだ一寸先は闇という状態。安全安心を守りながら、観光経済を回していく難しいかじ取りの時期。
・コロナ前の京都:
京都はインバウンドばかりと言われているが、そんなことはなく修学旅行の誘致やMICE、国内市場にも予算を投入している。
国内の主要都市の2020年度観光振興関連予算を比較しても、京都市は約12億でベスト10圏外。
※ちなみに我が札幌市は23億円で9位。北海道が22億円で10位。
京都市のインバウンド振興予算はそのうち4.5億円。
欧米マーケットを中心としたブランディングも行っており、東アジアのみに頼らない、欧米ハイエンド層をとってきた。
京都の観光消費額は1.3兆円で、これは市内消費の半分を占めている。
そんな中で観光公害という話もでてきた。市内の混雑、違法民泊、マナー問題、限定的な経済効果など、京都全体が外国人観光客を狙って金儲けに走っているという批判を受けてきた。
しかし、観光公害という言葉で市民感情をあおり分断を生む結果になってしまっている。
国内外の観光客が増えることによって経済を支え市民の便益になっているという点もある。
例えば、バスでいえば黒字路線があることで、赤字路線を支えている。
こういった観光便益についてももっと周知を進めていかなくてはならない。
オーバーツーリズム的な課題が発生した中で、全力で対応していくというタイミングでコロナを迎えてしまった。
・コロナの渦中での動き
DMOのMは、「まとめる」のMでもあると思っている。地域をまとめる、いわば仲人のような役が求められる。
コロナ騒動の中で、会員の皆さんに伝えてきたのが以下の4つのメッセージ。
・みんなで生き延びましょう
・安全安心環境を作るべく準備しましょう
・ホスピタリティを高めましょう。
・国内外のファンに京都の魅力を発信しましょう
観光協会としてもオンラインセミナーや無料で使えるピクトグラムの配布、つながるNAVIなどでの情報発信などを行ってきた。
皆様の声を聴きながら、ベストではなくてもベターな手を打てて来たと思う。
・コロナ後の動き
移動が解禁されたのだから、人を集めればいいのかというとまだ時期尚早だと思っている。
ビフォーコロナの時点で、オーバーツーリズムなどを迷惑だと思っていた人たちの心の整理はついてなく、ウェルカムな状態にはなっていないのではないか。
当面の短期的な動きとしては、近隣のマイクロツーリズムを狙っていくのは効果的だと思うので、需要喚起キャンペーンを行う。
これを機に京都の旅館に泊まっていただき、魅力を感じていただき、お友達や京都以外の方に発信していただければと思う。
また、安全安心対策を行い、地域から愛される観光づくりをもう一度行っていきたい。
今はまだだが、将来、中長期的には外需の取り込み・インバウンドは必要だと思っている。
アフターコロナの中で、観光産業は京都にとって必要不可欠。そのプロセスにおいては、地域の人と相互理解を深めながらオーバーツーリズムに戻らないようにしていく。
そのためにやることとして、デジタル化の推進を進めていきたい。ICTが重要になると考えている。
仁和寺では、制限をかけて3密回避をしつつデジタルを活用して秘宝の開帳などをしている。
オーバーツーリズム対策であったデータの利活用も進めていく。
市民と観光客、リピーターと一元さんで柔軟な料金設定を考えることもできる。
市民の皆様にとって、観光の便益を実感できるようにしていく。
ターゲットについても今までは、アメリカ・フランス・イギリスなど地域の設定をしていたが、今後は「文化的なものに興味がある人」などのペルソナ設定によるターゲットをやっていきたい。
Distance、Digital、Demand、Diffusionの4つのDが重要になると思っている。
3密の回避など距離のマネジメントのほか、京都との関係性の距離、地元住民の方との心理的な距離の是正などをしていく。
デジタルにおいては、オンデマンドで状況を把握し、対策を売っていくためにさらに推進していきたい。
季節や時間、場所のマネジメントをどうしていくか、心理的なハードルをどう下げていくか考える。
最後に拡散。いち早く観光に来てくれる、情報の起点になる方々をアンバサダーと考えて、その方々にどのように京都の価値観を拡散していただくかが大事。
そういった、京都を好きな方々のフィルターを通して発信していただくことが、質の悪いサービス業者を減らすことにもつながると思う。
こういうときだからこそ、セオリーに捕らわれずにやっていきたい。
要約③ まいまい京都 以倉氏 まいまい京都の考え方とコロナ前後の動き
・まいまい京都さんの概要と思い
「まいまい」とは「うろうろする」という京との言葉。
地元の方に愛される京都で、京都の住民がガイドするミニツアーを行っている。
ツアーは1.5時間程度で、名物ガイドさんがいるのが強み。累計400人程度いる。
街の最大の魅力は「モノ」や「コト」でなく、「人」。
愛情という切り口でツアーを考えている。
例えば仕事への愛情。庭園を実際に手入れしている庭師の皆さんがガイドして、仕事への愛情を語る。大工さんが自分の仕事について語る。
趣味への愛情をガイドするというものもある。京都高低差学会の方。高低差というとなんだかわからないが、2~3時間歩くと高低差が気になるほどになるし、地形が好きになってくる。
地元への愛情をガイドする。老舗と呼ばれる場所は観光客には敷居が高いが、街に住んでいる人から見れば近所の人だったり幼馴染だったりする。
町に住んでいる人と一緒にあるくと町に親近感がわく。
町の人も、同じ町の人が介在することで、交流する人が増えれば観光について嫌な思いをしたりというような距離感が減るかなと思っている。
そうなっていけば、ゴミを捨てるとか落書きとかも減っていくかと考えている。
・現在のツアーの概況
参加者数はどんどんと増えていて、コースも720コースあったが、コロナによって止まった。
参加者は京都市内の方が多く40%。75%が京都市内を含む近畿。ただしこれはリピーターも入れているので、ユニークで言えば近郊と遠方は半々くらい。
好きになってくれるとリピートする人が増えて、そこからつながりが生まれて友達になったとか女子会やったとかそういう話を聞く。
ツアーを通じて、町の中の人と外の人が交流する。観光というと疎外感を感じるといわれがちだけど、町の面白さを伝えることができれば住んでいる人ほど楽しいのではないかと思っている。
データとしてほかに面白いのが、一人参加が多いこと。夫婦で参加していたリピーターさんが一人できたので、どうしたのかと思ったらもう一人は別のツアーに参加しているみたいなことがよくある。
・コロナの中での動きとその後
4月7日にすべてのツアーの中止を発表し、収入の見込みが立たなくなった。
その後、クラウドファンディングを行い、1000万円以上の支援が集まった。
その間、二条城と連携してオンラインツアーを実施。約700名が参加した。
5月21日にツアーの再開を発表。6月のコースは満員になった。
これも人の魅力を伝え、ファンがいるからだと思う。
オンラインについては、普通ではいけないところに注目して、今度は輪違屋という一見さんお断りのお座敷の体験などを行う。二条城のオンラインツアーも7月に実施する。
どんな時だって人には探求心や感動があるので、そこを満たしていく。
観光は、ハードウェア型(寺社仏閣や文化財)→ソフトウェア型(物語の体感)→ヒューマンウェア型(人との出会い)になっていくと思う。
要約④ 対談 民官の得意分野と今後の展望
赤星氏:インフラについてはデジタルの推進をしていくことになるが、ホスピタリティの部分では人とのふれあい、リアルなコミュニケーションが求められていくと思う。
DMOとしてガイドさんの育成もしているが、ガイドさんがいることで、今まで売れなかったものが売れるようになったり、VIPの接遇のレベルも上がるということもある。
以倉氏:民間のほうが動きはやりやすいこともあると思う。京都全体の広報のような動きは観光協会にやってもらって、民間がやりやすいところは民間がという協力関係がいいと思っている。
ガイドさんについては、育成というのは必要ないと思っていて、面白い人は町に必ずいるので、その人をどう探していくか。
探せば面白い人はたくさんいるので、探すだけのマンパワーがあれば、あとは我々のように企画で落とし込む人が増えていくことが大事かと思った。
赤星氏:マイクロツーリズムという言葉で事業を推進していくことはないが、まず近郊の人でというのは現状では必要。
とはいえ、いくら近くても知らない人が歩けば気になることもある。地域にどう貢献していくかというのがマイクロツーリズムの一歩かと思っている。
キャンペーンでお客様を誘引していくというのもあるが、まずは近所の人に再発見をしてもらうのが大事だと思っている。
国内のお客様にも海外のインバウンドにも京都を愛していただくために、どういう投資をしていけばいいのか。
マイクロツーリズムを通じて、コロナとは違う次元での京都にしたい。
個々の取り組みでいえば、二条城の取り組みは、オンラインツアーまで振り切れる二条城側の柔軟さがあると思う。
私が当初来たときは考えられなかった。
そういった、コンテンツサイドとプレイヤーをつないでいくような、きっかけを作り背中を押すような橋渡しをしたい。
要約⑤ 最後にこれからの京都観光の展望
以倉氏:今までの観光はマーケティング偏重、中身まで外向けを作り出したことが問題なのではないか。それが京都の人には嘘もんに見えた。
中の人にも、外の人にも面白いというコンテンツを目指す必要があるのではないかと思っている。
赤星氏:1000年以上続く京都というのはSDGsが注目される前から持続可能な都市。京都の皆様が団結して作ってきた歴史の、その上澄みを使わせていただいている。
歴史に対する感謝を持たないといけない。
この後さらにさまざまな問題が起こってくると思う。観光公害とか住民と観光客の皆様の対立構造をあおるような報道もあるが、今まで町の皆様がやってきたように話し合いながら、10年先、50年先を作っていきたい。
こういった民間の事業者様ともお話しできる機会を作っていきたいし、DMOとして進んでいければと思っている。
感想:近郊の誘客、コンテンツの方向、人を中心にした観光の可能性
マイクロツーリズムについて:
しばらくインバウンドは厳しい状況が続くし、風当たりも強いと思われる。赤星氏の短期的には近郊をとっていく、中長期的には外需の取り込みも必要になるというお話は納得感がある。
札幌近郊でいえば、こちらのツイートが面白かった。
小樽・余市・積丹方面、新千歳経由室蘭方面、旭川方面が良く動いている。東京在住者なので全く同じにはならなくても、このルート上の動きは道内の方の旅行圏に近しいように思う。
となれば、上記3方面から札幌にどう来てもらうかという動きが必要になるかもしれない。
良質なコンテンツの再発見と加工
今だからこそ良さを「再発見」してもらうというのは、重要な視点になる。
札幌の良さ、札幌の魅力について地元の人たちはどう思っているのか、札幌の入込数の6割を占める道内の方々にとって、どんなものが刺さるのか。
この時期だからこそ考えたい。
以倉氏がおっしゃっているように、「外向けの作られたコンテンツ」が地元の人にとっては嘘もんに見えてしまうという問題はあると思う。
例えば雪まつりについて、「あれは観光客向けだからね」と言われることはよくある。(もちろん、雪まつりを愛してくださっている地元の方々もたくさんいる)
地域の方にも愛され楽しまれ、外の方にも刺さるようなコンテンツの切り出し方ができるのかは考えていきたい。
ヒューマンウェアコンテンツ:人の魅力が生み出す観光
観光の世界では、モノ消費からコト消費へと言われて久しい。
以倉氏の考えでは、さらに一歩進んで「人」に焦点が当たるようになるという。
これは実は、SNSマーケティングと根っこが同じところにあるのではないかと思っている。
飯髙さんの「僕らはSNSでものを買う」では、友人知人からのおすすめが購買につながるという話をしている。
そのためUGC(ユーザーが生み出すコンテンツ、Twitterのツイートやインスタの写真も含まれる)を増やす施策の重要性を説く。
これは赤星氏が言っている「ガイドさんのおすすめで売れていないものが売れる」にも合致する。
ともに歩いていろんな話をしてくれた、地元のガイドさんがおすすめするなら買おうという心の動きは想像に難くない。
モノやコトがなくなるのではなく、人とモノ・コトがつながっていくようなイメージの観光が重要視されていくのではないか。
以上。
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