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どこかにあるかという

この絵は「どこかにあるかという森」というシリーズの絵。

僕が小さい頃。家の前はわりと深い森があり、そこが僕の遊び場だった。森の向こうは広い原っぱでさらに向こうは川が流れていた。

そこにはウサギやイタチやタヌキやキジなどを見ることができた。

その森には倒木がいくつもありそこを渡るのが僕が好きな遊びだった。たまに倒木から落ちて怪我をしたりしていた。

その森には崖というほどでもないけれど急斜面があった。「やっちゃんの崖」と僕たち子どもたちは呼んでいたけけれどなんで「やっちゃん」なんだろう??起源は知らない。それかもしかしたら知っていたのかもしれないけれど忘れちゃったのかも。

その急斜面の途中あたりには粘土が取れる地層もあった。

確か僕が10歳の時だったけれど父さんが「粘土を取りに行こう」と僕を誘った。そして僕たちはバケツ一杯に粘土をとった。

そして次はその粘土に風呂場で水をかけながら器を作った。その作業は少し気持ち悪くて僕は母さんに文句を言ったりしていた。だけど我慢して作っていくと粘土が器になり、そうなると僕の機嫌が直ったりもした。

次に父さんは裏庭に大きな穴を掘った。そしてそこで火を起こした。するとたくさんの真っ赤な炭が穴の中に溜まった。

そのあとに粘土の器を焼いた。

「もっともっと温度が高くないとしっかりと焼けないんだろうけどね」と父さんは言っていたけれどそれでも器はそれなりに硬くなっていて父さんは灰皿がわりに使っていた。僕はどんぐりとかそんなのを入れていたのだと思う。

僕がこのことをよく覚えているのはとても嬉しかったからだ。父さんが一日ずっと遊んでくれたこと。何かを一緒に作ったこと。そんなことが嬉しかった。

この前、父さんにそんなことあったの覚えている?と聞いたら「覚えているよ」と答えた。なんだかホッとした。

そのあと森は随分と開発されてしまった。残った森は子どもの頃に感じていた「深くて暗くてどこか湿っている」という森という感じではなくて、妙に明るくてそして小さいように感じられる。森自身が小さくなったし僕自身が大きくなったし。

でもあの森を歩いているときに匂いや空気は覚えている。


そういう経験もあったせいか僕はずっと森が好き。


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