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女子サッカー/日本×北朝鮮前半を振返る/1st.leg/パリ五輪アジア最終予選


1.先発と試合前情報

いよいよパリオリンピックをかけた最後の戦いが始まると思っていたら、北朝鮮が自国でホームの試合をすることが許可されなかったと知りました。
恐らく運営能力が無いと判断されたのだと思います。
そこから試合を開催する場所が決まらずに、やっと開催地がサウジアラビアに決まったのが試合の3日前でした。
日本は国内選手と数人の海外選手が日本の合宿所に集まり、試合の為に準備をしながら開催地が決まるのを待ち、それ以外にもイングランドのクラブに所属する選手は日本に帰国すると、到着後すぐ開催地に移動するという二度手間が発生する可能性があった為、開催地が決まるまではイングランドに待機して、コンディション調整等をする状況に置かれていたため、試合の3日前に慌ただしく開催地に移動しそこでチーム全員が揃う事になりました。
なのでチームとしてプレー面の確認はあまり出来ていない可能性があり不安な要素ではありました。
他にもサウジアラビアは日本と比べて気温が高く今の時期でも暑いため、寒い地域からの移動で寒暖差と長距離移動の定番時差ボケなどもある為、コンディション調整の難しさなどが考えられました。
しかし、選手がチームに合流するのが遅くなったこと以外は両チーム同じ条件なので、開催地の決定時期が遅すぎるというクレーム以外は特に何も言うことはないでしょう。
先発メンバーを見て試合前に私が思ったのは、W杯後にやり始めた熊谷を1ボランチに置いた4−3−3(4−1−2−3か4−1−4−1)のフォーメーションを今回の試合でもやるのか?ということと、遠藤や宮澤が怪我で招集外であることが気になる点でした。
要するに4−3−3は機能するのか?ということと、主力が怪我で戦力ダウンすることが気になることでした。
女子日本代表は自力でのオリンピック出場がロンドンオリンピックまで遡らないとありません。
今回出場を決めれば自力での出場は12年ぶりになります。
リオデジャネイロオリンピックではアジア予選で上手く力を出せずに出場権が取れませんでした。
現在の代表チームはリオオリンピックのアジア予選を経験した選手がほぼいませんし、難しさを知る人も僅かです。
リオオリンピックのときとは出場権獲得のための大会方式は変わりましたが、対戦国はアジアの強豪であることに変わりがありませんしW杯よりも出場枠が少ない難しい予選です。
難しいオリンピック予選について経験の少なさが、悪い方向にでなければいいとただ思うばかりでした。
試合前に考えていたことは以上です。
では、試合を振り返っていきましょう。


2.試合開始

試合が始まり両チームのフォーメーションを確認すると、日本は4−3−3(4−1−2−3か4−1−4−1の形)で予想通り熊谷が1ボランチに入っていました。
北朝鮮は5−4−1で左SBが比較的高い位置をキープし、攻撃のときは積極的に上がり中盤が5人になるイメージで、守るときは左SBが下がり5バックになる感じでした。
基本的にはしっかり守備をしてカウンターというのが狙いのようでした。
日本は熊谷が1ボランチとして攻守に高いレベルのプレーを見せられれば、試合の主導権を取って戦えるでしょうが、最大のポイントは先取点をとれるかどうかで、先取点を取れれば恐らく試合を優位に進められるでしょうが、もし先に失点してしまうとかなり厳しい展開になることが予想出来ます。
前半序盤は両チーム互いに攻守を切り替える場面が多くどちらかが一方的な感じはありませんでしたが、日本が攻撃するときは北朝鮮が5−4−1でブロックを敷いて守る姿が見られたので、比較的ボールを保持するのが楽な感じがあり、日本がボールを保持していると言うよりは持たされているという感じに見えました。
球際についてはそれほど差は感じませんでしたが、北朝鮮のほうが若干球際に強く激しさもある感じに見えました。
この試合展開を例えるなら、男子アジアカップのイラク戦やイラン戦のような感じだと思います。


3.北朝鮮の決定機

試合開始から12分ほど経つと日本が徐々にボールを持つ時間を長くして、主導権を取っているように見えましたが、日本の攻撃内容はサイド攻撃がメインで、なかなか中央を縦パスで崩す姿が見られないこともあり北朝鮮のブロックが崩れることはありませんでした。そんな中、日本は北朝鮮にボールを奪われると攻守の切り替えを早くして、相手の最終ラインにプレッシャーをかけボールを奪おうとしますが、パスコースの限定やマークが十分に出来ていないことと、北朝鮮の最終ラインが5人いて日本選手のプレッシャーをかける人数より、数が多いことでボールを繋がれてしまいプレッシャーをかいくぐられると、北朝鮮が日本最終ラインの裏を狙うロングボールで、両チーム合わせて初となるこの試合の決定機を作り出します。
裏に抜けた北朝鮮選手がボールを受けるとそのままシュートを撃ちますが、日本のGK山下がキャッチして何とかピンチを免れました。
一見偶然にも見えるカウンターでしたが、日本のプレッシャーをしっかりかわしてから、狙いを定めたロングボールで日本最終ラインの裏をとり、シュートで攻撃を終わらせた非常にシンプルで効果的なカウンターでした。
その後日本も右サイドからパスを繋ぎ、右SBの清水にフリーでボールが渡ると、サイドから中に切り込みチャンスを作りますが、選択したパスが味方合わずに中途半端になってしまいました。
北朝鮮に決定機を作られた後だったので、できればシュートを撃って流れを日本に呼び込みたい場面でしたがそうはなりませんでした。
この場面で分かったことは、北朝鮮はパスに反応して守備位置を修正しブロックで守るので、日本はビルドアップからワンタッチパスを混ぜて、北朝鮮の守備位置の修正よりも早くボールを動かすことで、チャンスが作り出せることが分かったことだと思います。


4.序盤が終わり中盤へ

両チーム少ないチャンスをものにできないまま、試合時間は序盤から中盤に移行していきましたが、日本はビルドアップからの攻撃ばかりが目立ち、何度かあった速攻やカウンターのチャンスもチーム全体が後ろに重い感じや、意識も速攻からビルドアップにすぐ変更していた感じがあったため活かすことが出来ませんでした。
もちろん北朝鮮の帰陣が早いというのも理由の1つですが、だとしても速攻への意識が薄かったと思います。
そうなると攻撃はビルドアップからばかりになり、リズムやバリエーションが単調になってしまいます。
北朝鮮にとってはしっかり帰陣してからの守備になるので、慌てることも少なく日本の攻撃に徐々に慣れてくるので守りやすくなります。
北朝鮮が守りやすい状況で守備ブロックが崩れないと、展開としては北朝鮮の思惑に日本がハマっているような状況になります。
攻撃面でもシンプルな速攻やカウンターを多用して、さらにシュートで終わらせる流れの良さも見せ、状況は徐々に北朝鮮の方がいいように見えていきます。
そんな中、日本が右サイドのスローインで清水から右CBの高橋にボールを投げると、高橋がトラップをミスして北朝鮮の選手にボールを奪われます。
北朝鮮の選手はそのままゴール方向に向かいドリブルすると、ペナルティーエリア手前で日本の両CB高橋と南に進路を阻まれたので、後ろから走り込んできた味方に合わせ横パスを出します。
後ろから来た選手はパスを受け取って前に行こうとしますが、守備に戻ってきた日本の選手が2人いて突破やシュートが難しい状況だったのか、すぐに3人目の後ろから走り込んできた味方に、ポストプレーでボールを落とすようなパスを出すと、3人目の北朝鮮選手がパスをそのままシュートしました。
ミドルレンジから撃たれたシュートは勢いよく山下の正面上部に飛んでいきましたが、山下がパンチングで枠外にボールを出し何とか守り切りました。
その後すぐに北朝鮮のコーナーキックがあり、左のコーナーからアウトスイングのGKから逃げるボールを蹴られると、ペナルティーエリアの中央付近で北朝鮮の選手にヘディングシュートを撃たれます。
枠は外れていたので失点はしませんでしたが、フリーでシュートを撃たれているように見えたので危険なシーンでした。
その後も両チーム交互に攻撃に出ますが、パスを繋いで崩そうとする日本は、なかなか上手く相手ゴール前まで行けずシュートシーンも見れない状況でした。
それに対して北朝鮮はシンプルなロングボールが高い確率で前線の選手に渡るためシュートやゴール前まで侵入する場面が多く見られました。


5.中盤から終盤へ

気温が高いためウォーターブレイクを途中で挟むと、再開後北朝鮮に変化が見られるようになりました。
北朝鮮は攻撃のときだけ両SBと両サイドのMFが前にポジション取りするようになり、フォーメーションが攻撃のときは3−4−3で守備のときは5−4−1になる可変式のフォーメーションになっているようでした。
もしかするとウォーターブレイク前にも同じようなことはしていたのかもしれませんが、ウォーターブレイク後はより積極的にサイドの選手がポジションを前に上げていたように思います。
そして変化はフォーメーションだけではなく、比較的ロングボールを多用していた北朝鮮の攻撃は最終ラインからボールを繋ぎ、ボールを保持するような感じにも変化していました。
あまり北朝鮮にボールを繋ぐイメージはありませんでしたが、サウジアラビアの暑さや90分守備をすることを考えると、途中からボールを保持して得点を取りに行くことと、ボールを保持することで体力の消耗を抑える狙いがあるのかもしれないと思いました。
しかしそうなると日本は嫌がっていたシンプルな攻撃を北朝鮮がしてこないことになるので、守備のとき怖さが減ることになります。
サッカーは流れが重要な要素の1つでもあるスポーツなので、当然北朝鮮が変化すると流れも変わります。
このときは日本にとっていい変化に変わり、流れが良くなっていきます。
北朝鮮のミスでボールがタッチラインを割ると、左サイドから日本のスローインで試合が再開します。
左SBの古賀がスローインで南にボールを入れると、熊谷が両CBの間に入ってビルドアップする形になり、それと同時くらいに両SBがポジションを少し前に取るようになりました。
北朝鮮の前線はプレッシャーをかけに行きますが、日本の最終ラインに熊谷が入ることで
人数的に有利になりパスを回していると、北朝鮮の前線選手がプレッシャーに行ききれなくなったところで、GKの山下から右サイドのFW藤野に北朝鮮最終ラインの裏を突くロングボールが蹴られると、藤野はロングボールに追いつき北朝鮮選手と一対一になり勝負しようとしますが、北朝鮮選手も簡単には抜かせてくれないので清水にボール下げると、清水が中央に低いクロスを入れました。
入れたクロスはクリアされ藤野がボールを回収すると、清水とのコンビで右サイドを突破しようとします。
しかし相手に阻まれサイドを割ったので、清水が右サイドに近づいてきた熊谷にスローインでボールを入れると、熊谷から藤野へパスを出しボールを受けた藤野は、前を向くとすぐにクロスを入れます。
クロスは相手にクリアされますが、クリアが小さくペナルティエリア内にこぼれると近くにいたFWの田中がそれを回収してシュートを撃ちました。
シュートは北朝鮮GKの足に当てられてペナルティエリア中央付近の空中に上がると、空中戦を北朝鮮選手が2、3度勝ってピンチを逃れました。
日本は恐らくこの試合初めてシュートを撃ったシーンで、試合の流れが変わったから撃てたシュートだと思いますが、それ以外にもここまでで1番積極性のあるプレーをしていた時間でもあったと思います。
その後もビルドアップから熊谷を中心にパスを繋ぎクロスを上げる場面も見られましたが、決定機を作り出せないまま前半は終了してしましました。


6.前半まとめ

前半は全体的に見ると北朝鮮の方が内容が良かったと感じました。
攻撃も守備も自分たちが用意してきたことをしっかりやれている感じが見えたと思います。
しかし良かったにもかかわらず、終盤にスタイルを変更したことで日本に流れを渡してしまったのは、北朝鮮のミスだったと思います。
日本は積極性があまり見られなかったのが残念でした。
シュート本数も恐らく1本か2本程度でしたし、競り合いも熊谷以外はあまり勝っている印象がありませんでした。
攻撃もどんどん勝負を仕掛けてほしかったですが、ほとんどの場面で慎重だったと思います。
やはりオリンピック予選の経験が少ないことが、プレッシャーとしてプレーに出てしまったのかなと思う内容でした。

後半に続く。

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