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努力は必ず報われる。たとえ原発推進派でも。

『努力は必ず報われる』と言い放った、AKB48時台の高橋みなみ。当時の彼女が、キャプテン兼グループ総監督というプレイングマネージャーのような立場にあったからこその発言だろう。
いっぽう、フランス在住の元2ちゃんねる管理人ひろゆき氏
私は、条件付きで賛成だ。
当初の目的が達成されなくとも努力の過程は、何らかの経験知になる。

努力の結果がみえた後が肝心

そこで、本人の性格というか、気質が問題になってくる。
努力を尽くした後、マイナス面の話に絞ると、以下のような事例が考えられる。

1.当初目的を達成
1-1.燃え尽きて、しばらく動けない。(これは同情すべし)
1-2.神や偶然のおかげと思い込み、自身の能力維持・更新を怠る(自信弱め、『勝って兜の緒を締めよ』・・・日露戦争)
1-3.自分の努力だけではないことを忘れ、高慢になる。
1-4.やり方や対象、条件を変える検討をせずに、再挑戦

2.当初目的を未達成
2-1.過度に落ち込んだり、引きこもり続ける(強い自責、これも同情)
2-2.責任を上位者や国、制度に全てなすりつける(自責弱め)
2-3.部下や後輩にも責任をなすり付ける(自責皆無+人格崩壊)
2-4.やり方や対象、条件を変える検討をせずに、再挑戦

同情できる状況もある。私だって、上記に当てはまる言動があったし、詫びなければいけない過去が色々とある。

実は、周囲にも悪影響が出る状況ほど、達成・未達成ともに、1~4と順番を後に挙げてみた。
1-1.と2-1.については、しばらく休んでくださいとの感謝の念が生じる。
1-2.と2-2.は、個人の問題にとどまるから、まだいい。
1-3.と2-3.の高慢については、周りが離れていったん冷静になってもらえれば何とかなる。「生きづらい」と自分で言っている方の原因の一つが、これかもしれない。

単純マジメが一番怖い

問題は、1-4.と2-4.だ。目的達成・未達成ともに、全く同じことを書かせていただいた。
努力した前例を繰り返して何が悪い。と思われるかともいるだろうが、それでも周囲の状況は変化する。過去の条件で上手くいったことも、やがては邪魔になることは多々ある。あの時上手くいったんだからと、同じ手を続けては痛い目に遭うケースだ。

少しでも柔軟性や主体性のある人なら、新たな状況に応じた微調整をしたり、「時代にあわせた検討」を行う。
ところが、柔軟性は「ルールを守らない」に通じ、主体性は「我が強い」にも通じる。しっかりした組織になればなるほど、『時代に合わせた検討』は先輩上司がやってきたことの否定として、遠ざけられる。新しい策の実行などは、もってのほかだ。
結局『時代に合わせた検討』すらしない組織に残るのは、前例を守る単純マジメな人々ばかりになっていく。ジリ貧だ。そこへきて退職勧奨などすれば、柔軟で主体性のある人から辞めていく。かの経営の神様が創業した大企業も、そうかもしれない。

エネルギー使用における単純マジメ(この段落、読み飛ばしOKです)

余談になるかもしれないが、「検討なしに?同じ努力を続けてます」な事例は、日本のエネルギー活用で考えるとわかりやすいかもしれない。

江戸時代まで:なるべく近くの里山から薪炭向けの木を採取。ただし、平野部の村落は権利地の維持が困難(飛び地、入会地)、近隣集落との紛争の原因に。一部で水力も使用したが、農業用途が優先されるため、一歩間違えると紛争原因に。
明治時代:薪炭にくらべて、はるかに高カロリーの石炭を活用し、電力源にも使用。水力発電も始まる。
大正・昭和戦前期:石油が登場、さらに高効率で常温で液体のため輸送が容易となり、重工業や軍需目的から導入。それでも発電は、水力および石炭が全盛期。
昭和戦後期~20世記末:原子力が登場、石油よりも質量当たりの高カロリーが魅力に。石油需要に代わられた石炭は次々と生産停止(廃坑、廃鉱)へ。
21世紀以降:太陽光パネル、風力発電の商業化。再生可能エネルギー優先が常識となり、石油使用の悪影響や原子力への危険性認識が定着。二酸化炭素など温室効果ガスによる地球温暖化問題も軸にして、石油肯定派と原子力肯定派が、再エネ推進派とは別で対立。石油も原発も×の流れで、ドイツは褐炭採掘に頼り、日本は天然ガスと石炭火力の比率を上げている。

まず、木による薪炭、ついで石炭が、完全に主力から外れた。明らかに山あいの農家でさえ、石油稼働のトラクターや仮払い機を使っている。ただし、どうしても出る間伐材の活用などは、前向きに検討されている。
石油も、エネルギー用途に限らず、プラスチックによる海洋汚染問題などで、じわりじわりと主力の座から離れつつある。
また、木を燃料に使う人がいるが、どうしても出る間伐材の活用など 「時代にあわせた検討」の上でだったりする。前例踏襲、ただの経路依存ではないことを、しっかり見分けたい。

・・自分でも、なんだかわからなくなってきた。
以上の文章は偉く矛盾している。主力から外れた石炭が一部では復権したり、東南アジアのようにこれから原発に頼もうとする地域もある。なかには、森林伐採のうえ生産されたパーム油で発電して、再生可能エネルギーをうたう輩までいる。
エネルギーに関しては、様々な間違った選択肢が出てきているのだが、いずれも『時代に合わせた検討』の過程であるとはいえる。それぞれの悪しき選択肢にいたったことそのものは責めても、その判断にいたった事情まで責めるのは難しい。ただし、前例踏襲、経路依存なら、人格以外の全てを責めてもいいかもしれない。

原発推進派は、むしろ気の毒?

そこで、まだ原発を続けたがる人のことを思うと、むしろ気の毒になってくる。個人的に同じ努力を続けたい人ならまだしも、立場として『時代に合わせた検討』が出来ない人達を見ると、生きている意味があるのかとさえ、むなしい気持ちになってくる。

もともと日本の原発推進は、「被爆国だからこそ平和利用」、フランスなどと同じく「先の戦争のように、石油不足で振り回されたくない」、「新技術への憧れ」など、様々な理由があった。高度経済成長期の勢いある世情。通商産業省(経済産業省)に、人物で言えば首相になる前の中曽根康弘や読売新聞の正力松太郎が、原子力熱を盛り上げた。
鉄腕アトムに、もともとは原子力で動く設定だったドラえもん。少年時代の私を含め、昭和の頃は「原子力」が最新のエネルギーだと思っていた。思わされていた。

しかしながら、日本国内で起きた、臨界事故の当事者が死ぬなど、あらためて危険物であることが知らされる。知ったうえで起きた、東日本大震災福島第一原発事故で、いっそうの恐怖と疑問がわき上がった。

そのうえ、原子力は、発電コストが最安というわけでもない。
まず、経済産業省資源エネルギー庁による、最新の資料をリンクする。
2020年時点の試算で原子力は、LNGだけでなく、ガスコージェネ、中規模水力にも発電コストが劣るとの報告である。事業用太陽光についても、似たようなコストになっており、今後下がっていくことが予想されるとの内容だ。推進し続けた省庁でさえ、このような報告を出している。

推進するのは、過去の努力を否定したくないから。

実は、原子力のほうが発電コストが高くつくケースは、前から知られていた。
2004年1月の電気事業連合会の資料を見つけたので、のぞいてみる。
12~14ページにある図3~図6をみてもらいたい。それぞれの電源について、設備利用率によって、どう発電単価が変わるかを示したグラフだ。
いずれも、40%程度までは、原子力が石炭やLNGにかなわない。さらに2021年の現況に近い、図5と図6にある法定耐用年数まで運転したケースでの比較は、設備利用率が70%に達しても、まだ石炭より高くLNGには遠く及ばない試算だ。作ってしまうと、動かさなければ、借金の山なのである。電力会社の業界団体自身が言っているのだから、間違いない。それも20年前の試算だから、年季の入った方々でも、そうお考えだろう。

原子力利用は、さらに発電所の立地地域に対する様々な補償に、イメージ好転の広告費など別の費用がかさむ。火力(LNG、石油、石炭)もまた、CO2対策経費やら当然の排気対策など、必須の社会的費用がかかる。
原子力も火力も、半世紀以上かけて、これらの努力を積み重ねてきた。国(経済産業省)と電力会社だけでなく、原子力推進については一部の政治家(ほぼ自民党)や読売など一部マスコミも、「何をいまさら」とは思うだろう。
「何を今さら」は、『時代に合わせた検討』をしない単純マジメの感想でしかない。一番厄介な、前例と既存の経路に従うだけの、単に勤勉な方々の発想だ。

原発推進への努力は、報われるのか。

報われます。・・この段落からは、文体を変えますね。
あくまで私の見解ですが、原発が全廃になったとしても、以下の点で経験知として残るんじゃないでしょうか。

A.国家レベル(公のセクター)の経験知
A-1.【成功欲だけで進めるな】憧れや意地で国策を進めないこと(1960年頃、電力の鬼こと松永安左ェ門など財界はコスト面で原発に否定的だった一方、通商産業省や一部政治家・マスコミは原発を推進していた。)
A-2.【反対派を維持すること】推進派と規制・反対派を別個に存在させ続けること。(東日本大震災前までは、規制を担当する原子力安全・保安院が、推進省庁の経済産業省管轄という、マッチポンプ状態だった)

B.企業団体レベル(共のセクター)の経験知
B-1.【拡大欲だけで進めるな】1965年頃、米国製軽水炉での発電コストが火力と競える状態なると、松永主宰の産業計画会議でも、原発事業への着手を肯定。すでに推進していた日本政府による債務保証なども追い風に、各電力会社それぞれが原子力発電所を建設。会社の規模は大きくなり、新技術を身に着けることにはなりますが、国の言いなりになっては、民間企業である意味はない。
B-2.【失敗も想定すること】関西電力の太田垣士郎・初代社長は、富山県の黒部ダムなど水力電源の開発に当たって、「七割成功の見通しがあったら勇断をもって実行する」と発言しました。裏返すと、3割の失敗は想定していたのです。ただ、原発について、どこまで成功を見通されていたかは不明です。ご意見などいただければ幸いです。参考リンク
※太田垣士郎は、直前まで阪急電鉄の社長を務めていました。(たとえギリギリでも)抱え込める失敗を重ねつつ事業を起こしていく、小林一三の精神が受け継がれていたのかもしれません。

C.個人レベル(私のセクター)の経験知
C-1.【成功体験を押し付けるな】意固地な上司(退職者込み)への対策
C-2.【反対力を確保すること】勤務先の方針に従わざるを得ない生活スタイルをやめる(すべての業界に言えることですが、教育や住宅に伴うローンを組んだとたんに、配点や転勤を申し付ける大企業なんてザラです。45歳以上は別ですが・・以下略)

これ以上言うと、普通に頑張ってこられた、昭和のサラリーマンに鞭打ち続けることになります。経産官僚や電力会社社員などに限らず、他の業界の方々全てに。
その当時はその当時で良かった、やむを得なかったと思いますし、私もそのおかげで少年時代を過ごせました。素直に感謝しています。鞭打っていいのは、『時代に合わせた検討』も無しに、過去のスタイルを続ける輩だけです。

年長者として出来ること。

先日、2,3歳ほど上の先輩と「昭和人はみんな死んだほうがいい」との話題になりました。もちろん、昭和生まれである私も対象です。過去の成功体験を強いて、新しい努力を妨げる可能性だけでも害悪だと。
もちろん、止めなければいけない新しい努力もありますし、経験が生かされる場面は多々あります。
場面に応じて、経験知を使い分ける判断を行っているか、言動に責任を持てていれば、いいのではないでしょうか。

判断の責任を負うことで、実行時のストレスを和らげるのは、年長者や経験者だからこそ出来ることです。
『自分の時代はこうだった』の話は私もしますが、行動判断に関係のない場面に限ってのことです。これから未来、新たに生じる行動については、その場その場で判断して、過去を忘れているぐらいの気持ちのつもりです。

失敗したならしたで、後が肝心。

それでも、判断や行動で失敗することがあると思います。
いつも思い出すのは、サラリーマン時代の上司(部長)の潔い姿です。

7,8年ほど、同じ直属上長(課長)にお世話になっていました。直属上長は別の部署の兼任となった時期があり、その時の上司が部長の方でした。えらく課長の残業がかさむので事情を聴くと、部長が思いついたことがあったら、すぐに調査を命じてくるとのことです。課長は管理職だから勤務時間管理の対象外、部長にとってやりやすかったのでしょう。しばらくして課長が兼任を外れられたので、影響はなくなりました。
しばらくして、私が配転した部署に、例の部長が赴任してきました。また同じことを繰り返しては、別の直属上司のパワーを削ぎ始めたのです。私のちょくぞ上長が2代続いて、えらい目に遭ったわけで、十分に影響が出ています。場面が変わっても、部長に同じスタイルを貫かれては、困ります。

人事部長から、退職する私に『何か気になることはなかったか』と聞かれました。
同じ人物に、直属上長が2人も同じ目に遭わされた話をしました。

退職日。驚いたことに、当の部長からお詫びがありました。
『近藤君、私は理系の特徴なのか、どうも新技術やらにすぐ飛びつく癖がある。これからは気を付けるよ』
もう辞める部下に対して、わざわざ言ってくれること自体、清々しく感じました。もともと穏健な方だとは思っていましたが、感動です。
その後、部長が本当に対処されたかは不明ですが、
私にとって、良い思い出が一つ増えたことは確かです。
「あの会社は、捨てたもんじゃない」と。

詫びればいいんじゃないでしょうか。
「現状になった責任の一端は自分にある」
とまでは言わなくとも、
「あんまり助けられなくてゴメン」
ぐらいは言っていいのでは。

アメリカのような訴訟社会でもないわけですし、自分で非を認められるなら、そのほうがいいです。なにより。次世代の「過去の非を認め、他の方策を考える」習慣にもつながるでしょう。
そのうえで、失敗経験を語れば、必ず努力が報われます。

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SDGs的なことを書いていると思いきや、情報社会関連、大学でも教えているボランティア活動などを書き連ねます。斜め視点な政治経済文化評論も書…

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