小波 季世|Kise Konami

文筆家。本・旅・猫・日本酒・文化人類学(観光/災害/ダークツーリズム)。第二回 杜の都…

小波 季世|Kise Konami

文筆家。本・旅・猫・日本酒・文化人類学(観光/災害/ダークツーリズム)。第二回 杜の都人類学賞受賞。 KIRIN×note #また乾杯しようコンテスト審査員賞受賞。無類のホヤ好き。

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記事一覧

久々に読書会を開催。「積読しそう、でも読みたい!」という本を読むための絶好の機会でもあり、一つの作品を鏡にいろいろな人の人生や価値観を知ることのできるチャンスでもある。参加者の皆さんが本当にあたたかかった。

8月日記|美しい、瞬間は。

■春の日のメロディーポストを開けると、夜空色の封筒が入っていた。見覚えのあるその封筒。受け取るのは2回目だ。 中身はわかっていた。だからこそちゃんと落ち着いたと…

「こうなれ」「ああなれ」と声高に叫んでくる文字の多さ。

7月日記|Relish【動】〔食べものや経験を〕味わうこと

■過去からの贈りもの 7月某日、大学の先生からメッセージが届く。今年ゲストとして大学1年生向けの授業にお邪魔した。その受講生の提出課題についてのお知らせだった。 …

"祈りのナガサキ"を訪れた10年前の8月9日。

「現場に行ったからといって、すべてがわかった気になってはいけない」

あの日から10年、私は何か「わかった」のかどうなのか。

https://note.com/konami_kise/n/n632cf7a34855

自分が主語じゃない言葉は信用できないと思ってしまうのは、「大きい主語」を振りかざすことへの忌避感があるせいかも。

「『みんな』に迷惑でしょ!」とか「だから『年寄り(あるいは若い人)』は!」とか。ついそういうことを思ってしまった時、自分の解像度の低さに悲しくなる。

「正論は正しい。だが正論を武器にする奴は正しくない。お前が使ってるのはどっちだ?」

『図書館戦争』で一番印象深かった言葉。

「自己理解が大事」とよく聞くけれど、なかなか難しい。

そんなとき
「10年前の自分へのメッセージ」や
「10年後の自分からのメッセージ」を
考えてみると、おもしろいかも。

3年、1年、半年、3ヶ月スパンでもいい。過去や未来の自分の視点を持つと、いい意味で今の自分を俯瞰できる。

6月日記|書くこと。読書スタイルの変化と人間関係のこと。

■宝物のようなほめ言葉6月某日。尊敬する方に、お見せした原稿を手放しでほめられた。今でも夢なんじゃないかと思う。書くことを人生のなりわいの一つにしているとはいえ…

小波季世(Kise Konami)プロフィール/お仕事依頼について

こんにちは、小波季世です。文筆家として主にコンテンツ(本や音楽、映画、舞台や旅、食などありとあらゆる体験)について綴っています。 Profile大学2年生の3月、20歳の…

5月日記|ユーラシアの向こう側–光を追いかけて

■プロローグ日本から飛行機を乗り継いで25時間ほど。ロンドン、ヒースロー空港。子どものときから好きで、年末にはいつも観たくなる映画の舞台。人生2回目のヨーロッパ旅…

4月日記|瀬戸内、生まれなおしの島

■穢された豊かさ。そしていま。1日1日の密度が、それまでの1年をぐらぐらと煮詰めたくらいに濃かった4月。旅に出た。 成田空港から飛行機で西日本へ。初めて降り立った…

3月日記|あなたという本はどんな本?

■石橋を叩いて割る彼女、今にも落ちそうなつり橋を走り抜けようとする私3月某日。疲労感とともに目覚める。前日、気づいたら7cmヒールで1万歩近く歩いていた。パソコンや…

2月日記|哲学のある公園−Jとの往復書簡

■アメリカからの友人と旅人2月某日、アメリカ在住の友人Kが一時帰国するというので数年ぶりの再会。数年ぶりでも、久しぶりという感覚はほぼなかった。お互い、今以上に…

友人からのプレゼント、『華氏451度』。1953年に書かれたとは思えないほど、今の時代に刺さる。

おもしろすぎて早く結末が知りたいけど、読み終わってしまうのがもったいない…という幸せな悩み。

今年は出会った本のこともいろいろ書いていけたらと思います。

1月日記|ソウル、そして日常。

■6年ぶりの海の向こう 2024年の2日目。10年ぶりに韓国を訪ねた。人生3度目の訪韓。 海外旅行は実に6年ぶり。コロナで海外渡航も難しかった2021年、海外に行けるように…

久々に読書会を開催。「積読しそう、でも読みたい!」という本を読むための絶好の機会でもあり、一つの作品を鏡にいろいろな人の人生や価値観を知ることのできるチャンスでもある。参加者の皆さんが本当にあたたかかった。

8月日記|美しい、瞬間は。

■春の日のメロディーポストを開けると、夜空色の封筒が入っていた。見覚えのあるその封筒。受け取るのは2回目だ。 中身はわかっていた。だからこそちゃんと落ち着いたときにこそ開封したいと思っていたら、数日が経っていた。静かな部屋の中で一人そっと封を開ける。中に入っていたのは、数枚のモノクロ写真と折りたたまれたメッセージ。私は一瞬で「あの日」に戻っていった。 * * * 春の昼下がり。窓から明るい日差しが降り注ぐなか、長テーブルを囲んで、それぞれが思い思いに食事と会話を楽しん

「こうなれ」「ああなれ」と声高に叫んでくる文字の多さ。

7月日記|Relish【動】〔食べものや経験を〕味わうこと

■過去からの贈りもの 7月某日、大学の先生からメッセージが届く。今年ゲストとして大学1年生向けの授業にお邪魔した。その受講生の提出課題についてのお知らせだった。 提出課題は、それぞれの学生が趣向を凝らした短い動画形式でまとめられていた。数ヶ月前、授業で私が話したこととリンクするような内容もいくつかある。技術的には荒削りでも、圧倒的な素直さで胸のど真ん中に飛び込んでくる言葉や表現。目の奥が熱くなって、思わずまばたきした。 小手先の技術は、圧倒的な素直さの前にはひれ伏すしか

"祈りのナガサキ"を訪れた10年前の8月9日。 「現場に行ったからといって、すべてがわかった気になってはいけない」 あの日から10年、私は何か「わかった」のかどうなのか。 https://note.com/konami_kise/n/n632cf7a34855

自分が主語じゃない言葉は信用できないと思ってしまうのは、「大きい主語」を振りかざすことへの忌避感があるせいかも。 「『みんな』に迷惑でしょ!」とか「だから『年寄り(あるいは若い人)』は!」とか。ついそういうことを思ってしまった時、自分の解像度の低さに悲しくなる。

「正論は正しい。だが正論を武器にする奴は正しくない。お前が使ってるのはどっちだ?」 『図書館戦争』で一番印象深かった言葉。

「自己理解が大事」とよく聞くけれど、なかなか難しい。 そんなとき 「10年前の自分へのメッセージ」や 「10年後の自分からのメッセージ」を 考えてみると、おもしろいかも。 3年、1年、半年、3ヶ月スパンでもいい。過去や未来の自分の視点を持つと、いい意味で今の自分を俯瞰できる。

6月日記|書くこと。読書スタイルの変化と人間関係のこと。

■宝物のようなほめ言葉6月某日。尊敬する方に、お見せした原稿を手放しでほめられた。今でも夢なんじゃないかと思う。書くことを人生のなりわいの一つにしているとはいえ、本当に尊敬している––高校生の時から知っている––プロの書き手の方からの言葉だったから。 あたたかいお言葉と「!」やニコニコマークがいっぱいの感想原稿を受け取った日から、何度も見返している。愛を持って厳しいことも率直におっしゃる正直な方からの賞賛だったからこそ、うれしくてしょうがない。 上っ面だけの賞賛や心ない

小波季世(Kise Konami)プロフィール/お仕事依頼について

こんにちは、小波季世です。文筆家として主にコンテンツ(本や音楽、映画、舞台や旅、食などありとあらゆる体験)について綴っています。 Profile大学2年生の3月、20歳のときに仙台で東日本大震災を経験。人類の負の面に着目する観光「ダークツーリズム」の観点から、被災地内外の人的交流について石巻・台湾・シンガポールでフィールドワーク研究をしていました。 できること Works■エッセイ ・KIRIN×note #また乾杯しようコンテスト 審査員賞受賞作 大学時代に1ヶ月間

5月日記|ユーラシアの向こう側–光を追いかけて

■プロローグ日本から飛行機を乗り継いで25時間ほど。ロンドン、ヒースロー空港。子どものときから好きで、年末にはいつも観たくなる映画の舞台。人生2回目のヨーロッパ旅行はそこからスタートした。 イギリスへの入国手続きはあっけなく終わる。EU諸国やカナダ、オーストラリアなどといった国のほか、日本や韓国のパスポートを持っている入国者は、無人ゲートでパスポートを機械にスキャンさえすれば、すぐに入国できる。それ以外のパスポート保有者は、有人ゲートに並ぶ必要がある。映画やドラマで見るよ

4月日記|瀬戸内、生まれなおしの島

■穢された豊かさ。そしていま。1日1日の密度が、それまでの1年をぐらぐらと煮詰めたくらいに濃かった4月。旅に出た。 成田空港から飛行機で西日本へ。初めて降り立った土地や懐かしい土地を歴訪した数日間。最後に訪れたのは、香川県は豊島にある豊島美術館だった。 訪問の数週間前に読んでいた冒頭の小説にも登場するこの美術館。私がその存在を知ったのは、元々は親友夫婦に勧められてのこと。いつかは行きたいと思っていたその場所が小説に登場した瞬間、旅の最終目的地は決まった。 瀬戸内海沿い

3月日記|あなたという本はどんな本?

■石橋を叩いて割る彼女、今にも落ちそうなつり橋を走り抜けようとする私3月某日。疲労感とともに目覚める。前日、気づいたら7cmヒールで1万歩近く歩いていた。パソコンや本が数冊が入った鈍器のようなかばんを持ち歩きながらの移動だったので、さすがに足首が悲鳴を上げている。 疲労のあまり寝るのが優先で、マッサージを怠ったのがいけなかった。まずは体を温め直さなくては。寝ぼけまなこで浴室に向かい、蛇口をひねってバスタブにお湯をためる。 上京する姉が今日から泊まりにくるというのに、家の中

2月日記|哲学のある公園−Jとの往復書簡

■アメリカからの友人と旅人2月某日、アメリカ在住の友人Kが一時帰国するというので数年ぶりの再会。数年ぶりでも、久しぶりという感覚はほぼなかった。お互い、今以上にもっと未熟だった学生時代に出会い、相手の赤裸々な一面を良くも悪くも知り尽くしているから、ということもあるかもしれない。 私が人生に弱気になっていたときにKに本気で怒られたときもあるし、Kに対して私が烈火のごとく怒り狂い、絶縁予告をしたこともある。そんな仲なので、昨日も会っていたかのように軽口を叩き合いながらお酒を飲

友人からのプレゼント、『華氏451度』。1953年に書かれたとは思えないほど、今の時代に刺さる。 おもしろすぎて早く結末が知りたいけど、読み終わってしまうのがもったいない…という幸せな悩み。 今年は出会った本のこともいろいろ書いていけたらと思います。

1月日記|ソウル、そして日常。

■6年ぶりの海の向こう 2024年の2日目。10年ぶりに韓国を訪ねた。人生3度目の訪韓。 海外旅行は実に6年ぶり。コロナで海外渡航も難しかった2021年、海外に行けるようになったらすぐに行けるようにと新調したパスポートは、お披露目になるまでに実に3年がかかった。 成田空港とも6年ぶりの再会だ。6年前も今回も、年明け早々日本を発つ。クリスマスや年越しのシーズンを過ぎてから海外渡航するのは、飛行機のチケットやホテル代が少し安くなるというのが理由。だけど、非日常的な季節に旅