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アフター・アフターゾロリ

 うちの息子は、わりと本をたくさん読むほうだと思います。体を動かして遊ぶことよりも、読書が好き。文字があるとつい読んでしまう、文字中毒です。
 母親のわたしとしても息子に静かにしてもらわないと困ることが多かった為、日ごろから息子の嗜好に合った本を図書館で借り、息子の読書習慣をサポートしてきました。
 しかし、年長頃から、ある壁に当たるようになりました(わたしが)。それは「次、何を借りるか」問題です。
 
 

アフターゾロリ
 

 みなさん、「アフターゾロリ」という言葉を知っているでしょうか。日本で子ども時代を過ごした人、今現在子育てをしている人の全員が知っていると言って過言ではない、原ゆたか氏の「かいけつゾロリ」にまつわるお悩みを指した言葉です。
 乱暴に説明しますと、「うちの子ゾロリばーっかり読むんです。そろそろ、違う本も読んで、ステップアップして欲しいんですけど…。」ということなんですけど、結構よくある話なようで、某袋系掲示板や、某町系掲示板に複数の同じネタが載っていました。
 詳しく知りたい方はググるこちらをどうぞ。

 アフター・アフターゾロリ
 

 で、我が家はと言いますと、特にゾロリだけに執着することもなく、どんどん図書館から借りては読み、借りては読みして、アフターゾロリとして挙げられている作品群を読み終わってしまいました。アフターゾロリ期、終了です。
 じゃあ次はズッコケ三人組か?マジックツリーハウスか?とさらに進んだ作品を提供してみたのですが、「字ばっかりで嫌だ。おもしろくない。」と拒否されてしまいました。この時息子5歳。
 精神年齢的に、話の内容に共感できない・息子の読書は挿し絵にも依るところが大きい。という点でこの二作品は受け入れられなかったのかと思います。本を読むのが早いけど、決して心の成長が早いわけではないので。まだゾロリ的読書、絵と文が一体となったもので、教訓的メッセージ(ズッコケってこれ結構強くないです?)のないものを求めていたのだと思います。

 じゃあ、字が大きくて、挿絵がたくさんある低学年向けの本で、まだ読んでないおもしろい本て?
 と、ここからわたしの「次、何を借りるか」を求めて彷徨う日々が続きました。

彷徨う日々
 

 まず、この壁に当たる前から、絵本naviなどのサイトや各出版社が司書向けに出しているカタログ、ブックガイドを使って本を選ぶ、ということを既にしていました。
 それらの媒体にまだ載っていない本で、息子の年齢にあった本。
 図書館の棚からいけそうな本を見つける端から借りて、読んで、また探す…。
 ゾロリのように、長いシリーズがあると借りるのが楽なのですが…。なかなか誰も知らない隠れた名シリーズってないものですね。
 しばらく「サバイバルシリーズ」「実験対決」「サイエンスコナン」「ドラえもん学習漫画」などの科学読み物を中心に借りていました。ですが、これらはとても人気があって、図書館で全然予約が取れず、図書館活動はあまり捗りませんでした。
 週に1度はパソコンと睨めっこして、図書館の蔵書検索サービスから息子の本を見繕う日々が続きました。

 今思うと、息子に「読む本がない~。本をくれ~。本~。」と言われたことは特にないのですが。とにかく一人で静かに読書をしていてくれると助かる、という目的の為に本を探していたような気がします。ひどい話ですね。

壁を掘る日々

 で、アフター・アフターゾロリを抜けるためにどうしたかというと、わたしはビフォー・ゾロリに戻りました。それは
 絵本
 読み聞かせ

 です。

 わたしが都度都度借りる手間を惜しんで、早々にゾロリ群に移行した為、まだ読んでいない名作絵本がたくさんありました。瞬殺でもいいじゃない。どんどん借りれば、と気持ちを切り替えました。

 息子はトミー・ウンゲラー氏のものが気に入ってました。文章量が低学年の国語の教科書に出てくる読み物と同程度で、丁度よかったです。
 
 また、ゾロリ以後ずっと卒業していた、読み聞かせを復活させました。息子が嫌がりそうな、文字量の多い本はわたしが読むことにしました。これは学研の「10歳までに読みたい名作」シリーズをよく読みました。こちらは挿絵も多く、とっつきやすかったようで、前日の夜に途中まで読み聞かせ→翌日学校に持っていって自分で読む というパターンが出来ました。図書館であまり人気がないのか、簡単に借りられたので、シリーズをどんどん制覇していきました。
 息子は『南総里見八犬伝』をとても気に入って、「もっと長い訳も読んでみたい!」とリクエストしてきました。そこで、岩崎書店版の物を提供してみたところ、一人で完読出来たのです。これは高学年向けとなっていて、かなり文字量の多いものでした(結局8人集まらなくて、怒っていましたが)。


その後
 

 初めてマジックツリーハウスを提供してから、1年ほど経ったでしょうか。
 八犬伝が読めたなら、そろそろいけるのでは?と思い、再び借りて本棚に置いてみました。
 息子が手に取りました。
 どうかな?どうかな?
 結果、あっさり20分ほどで1巻完読!
 他人が1冊の本を読み終わった、ということに心が動かされたのは生まれて初めてです。
 文章を読む力、息子の精神年齢の両方が成熟したタイミングだったのでしょう。
 これが我が家のアフター・アフターゾロリが終わった日でした。
 
 今では 

 マジックツリーハウスはもちろん、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズも一人で読むようになりました。
 他にはオウマガドキガクエンシリーズ、ドラゴンスレイヤーアカデミー、暗号クラブ、などを読んでいます。読める文字量が増えたことで、選択肢が一気に広がりました。ポプラ文庫もあるし、青い文庫も、角川つばさ文庫だっていけそうだ。これでまたしばらくは借りる本に悩まなくて済みそうです。

 わかったこと
 

 このブレイクスルーから、強いて教訓を述べるなら、「成長と共に、自然と読む本も変わっていく。その時がくるのを待つべし。」ということでしょうか。ごく当たり前のことなのですが。
 もし、アフターゾロリのそのまた後で悩んでいる方の参考になれば幸いです。


 
 補足
 

 わたしからの働きかけの他にも、この期間に息子が学校へ入学し、主体的に読書に取り組むようになった、という要素もありました。
 休み時間のほとんどを図書室で過ごし、放課後の学童でもずっと本を読んでいましたので(親としては複雑ですが)。
 学研の『~のひみつ』シリーズなど学習漫画を全巻制覇したり、手塚治虫氏の作品群に感銘を受けたり、欲求のままに読書を楽しんでいました。わたしも、息子の選んだ本に「やるな。」と感心させられることもありました。特に手塚作品は、心の成熟に一役買ったと思っています。

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