灼熱のスタジアムと,朽ちゆくパイロン.アテネ・オリンピックスタジアム(2019年7月訪問)
スタジアムが好きで,出張先の近くにスタジアムがあると何とか時間を見つけて出かけるようにしている.その中でも,「オリンピックスタジアム」は選ばれしもののみ冠せられると同時に,巨大イベントの遺構として活用されず朽ちてゆくものも少なからず含まれる特別な名称である.
アテネは2004年にオリンピックを開催し,そのメイン会場となったスポーツ公園が中心地から少し離れた場所にある.アテネ訪問は2019年7月で,翌年の東京五輪の会場が大会後どうなるか?という文脈で廃墟化した過去の会場の写真が数々公開されていた時期でもあった.
鉄道駅が併設されており,都心からのアクセスは悪くない.白い鉄骨のモニュメントが出迎えてくれるのだが,人の気配が乏しく,とにかく広い空間に距離感がつかめない構造物だけが目に入るので,文明が朽ちた別の星に降り立ったような気分になる.
大会中は水が張られていただろう溝はすっかり枯れている.この日のアテネはとても天気が良く,酷暑で知られる名古屋から訪問した私もかなりきつかった.この日か前の日には,高温のため丘の上にあるパルテノン神殿への訪問が禁止されたくらい.湿度が低いため風が吹けば涼は取れるのだが,日影が恋しい.
冒頭に貼った写真は,間接照明か何かのために床に埋め込まれていたガラスが割れ,そこに赤いパイロンが置かれているがパイロンも酷暑のため朽ちている様子.リンクした記事でも印象的な一枚で,これが今どうなっているか見たかったのも訪問の目的の一つだった.記事よりもパイロンが少なくなっていて少し残念であった.他にはガラスが完全に撤去され埋められている場所もあった.こういったところの維持費は捻出されていないようである.
総合スポーツ公園なので様々な施設があるのだが,思ったよりきれいである.プールには水が張られていて,ある施設には地元の小学生くらいの団体がいた.最初に人間が少ないところを訪れてしまっただけで,きちんと現役のスポーツ施設であるようだ.こういうところは現地に来てみないと,想像力の乏しい僕は勘違いをしてしまう.
スタジアムを回って帰ろうかと思っていたら,この日は何かのイベントの準備だったようで,ちょっと中をのぞくことができてしまった.屋根の向こうの青空と山が美しい.サッカーではいくつかのクラブとギリシャ代表のホームグラウンドとして使われているそうだ.
外国を訪れると,道路や公共施設などの維持管理の水準の違いに驚くことが多い.大体日本よりもちょっと朽ちているくらいが水準なようであり,裏を返すと日本の水準が過剰なのかもしれない,と思う.
この日は翌年の東京五輪が延期になった後翌年無観客で開催されるなどこれっぽっちも想像することなく,ただ無事に開催された後の施設が10年後20年後どうなるのかまで思いをはせながら,来た時と同じ路線を逆向きに,市内中心部へ戻っていったのであった.
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