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サヨナラだけが人生ならば
寺山修司はそれに続けてこう綴る。
サヨナラが永遠の離別のことであるのなら再び巡りくるこの出会いは、人は、季節は、一体なんなのですか。
それを言いたくなる気持ちは私もとてもよく分かるのです。不惑を過ぎてからここまで、私の周囲にはもう二度と会うことのできない人が突然増えました。そうしてそういう人々というのは「まだいいよ、ちょっと早いよ、もう少しここでゆっくりしていったら」と言いたくなる人ばかりです
短編小説:春みたいにやさしい。(短編集・春愁町1)
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靴1足分程度、玄関ですらない玄関とひと口コンロの台所とシャワー、あとは作りつけのベッドと机と押し入れだったものを作り変えたらしい収納スペース、1K6畳一間、去年国立に全敗、1浪して今年何とか国立の大学に滑り込んだ俺の春からの新しい住まいになった。
敷金礼金、日割り家賃と次月の家賃、そういうものを全て不動産屋から渡された書類に記載されている口座に振り込んだ月曜、4月、晴れた午後、これからその