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ヒゲの思い出

自分の価値を収入の金額で測っていた30代の頃
低学歴、資格も持っていない私は
働く時間帯と時間の長さで少し多めの給料を得ていた。
こんな私でも頑張ればこれくらいは稼げる。
そう思った。
男の人にも負けたくなかった。
男の人並みに稼ぐことが
一人で生きていくには必要だと思い込んでいた。

そんなある日
顎に太い毛が二本生えているのに気が付いた。
「ん?・・・ヒゲ?」
すぐ抜いた。
その後また生えた。
何度かそれを繰り返した。

女性にヒゲが生える。
珍しいことでもないらしいが
ホルモンのバランスなのか何なのか
私の体の何かが狂った結果のヒゲだったんじゃなかろうか。
あの頃、そうとう無理して張りつめて生きてたなと思う。

そんなに頑張らなくていいと思えるようになった50代の私。
私は男性になりたいわけじゃないし
女性が一人で生きることだってできる。
今は更年期を乗り越えて体の調子も落ち着いてきた。
そして性別を意識することが徐々に減りつつある。
なんて楽チン♪なんだろう。

今でもたまに
ついあの頃のクセで顎をさわってヒゲを探してしまう。
次、生えるのは白いヒゲかも。はははは。

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