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読了「ラベンダーとソプラノ」

✎‎𓂃𓈒𓏸書誌情報

読了日:2023年1月20日
書名:「ラベンダーとソプラノ」
作者:額賀澪
出版社名:岩崎書店

✎‎𓂃𓈒𓏸あらすじ

真子の所属する小学校の合唱クラブは全国コンクール常連で、しかも2年連続金賞を受賞した強豪校。
でも、顧問が新任の先生にかわった去年は銀賞。引退する6年生から涙ながらに言われた「来年は金賞をとってね」ということばがいつしか呪いとなって合唱クラブを縛り、先生や部長の穂乃花は責任感から暴走し、クラブのみんなの心はバラバラに。
そんなとき真子は美しいボーイソプラノの声をもつ朔と出会い、半地下合唱団の存在を知る。
半地下合唱団に参加するのは、商店街のおとなたちから小学生、中学生まで個性豊かな面々。
全国コンクール金賞という栄誉を勝ち取るべく厳しい練習を強いるあまり崩壊寸前の合唱クラブと、ゆるく楽しく好きな歌を好きに歌う半地下合唱団を行き来するうちに真子に見えてきたものとは。

✎‎𓂃𓈒𓏸感想(ネタバレあり)

これは読書感想文コンクールの高学年課題図書有力候補では。(額賀澪さんの作品「タスキメシ」が2016年高校生部門の課題図書になっている)
内容から小学生の合唱クラブより中学生の合唱部のほうが合ってそうと思ったけど、朔の声変わりというか朔が声変わり前であることが物語の中で大きな役割を持っているので小学生である必要があったんだなと納得。保護者と先生の関わりや親子関係も小学生ならではの距離感。

顧問が変わった途端にレベルが落ちてしまった部活やクラブの、先生のプレッシャーや保護者からの圧力も想像に難くないし、経験の浅い若い先生ならなおさら焦ってから回ってしまうだろうなとリアルに感じた。頑張り方がわからない、なにをめざしてクラブを運営していけばいいのかわからない。終盤の先生の未熟さゆえの爆弾発言も、許せるものではないけど一度破滅の道を走り出してしまったら行き着く先はそこなのだろう。ゾッとするけど、あるあるだと思う。ここで反省して経験を積んで長谷川先生の今後の合唱クラブがラベンダーでも他の香りでもいいから、自分なりの香りのする歌声を作っていける力のある先生になってほしい。

と、先生に対して強く思い入れて読んでしまったが、先生には「また来年」があってもこどもたちにとってはその学年の合唱コンクールは1回しかないわけで、特に最高学年の子たちにとっては最後のコンクール。憧れの先輩たちが築いた歴史の重みを背負いながら、頑張った証の金賞というトロフィーはほしい。そこにたどり着くには厳しい練習に耐え努力するしかない。それについていけず合唱を楽しめなくなったり学校に来られなくなってしまう子さえいる。
でもゆるく楽しい活動をしている半地下合唱団に出合い、世の中にはさまざまな価値観をもった人がいることを知る。
頑張るってなんだろう。
正しさってなんだろう。
穂乃花の言うことも朔の言うこともどちらが正解でどちらが間違っているとは言えない、けどそれを伝える言葉を知らず宙ぶらりんだった真子が揉まれて成長していく姿に胸がすく。

小中高と合唱に触れていた身からも、先生との温度差、部長の空回り、それについていけない部員、同調する部員、先を案じても行動にうつせない部員など、いたいた、と当時の仲間の顔が頭に浮かぶほど描写がとてもリアルに感じた。
また、歌はうまいけど合唱クラブには入らない朔や合唱は好きだけど合唱部が大嫌いな藤野先輩からみた、合唱部のちょっとアレな部分も身に覚えあり。現役合唱部員よ、そういうとこだぞ。

あとがきも必読。

課題図書有力候補だと思ったけど入試問題もありそうだね!

✎‎𓂃𓈒𓏸いっしょに読むなら


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