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先願主義のお話

弁理士が登場する日テレのドラマ「それってパクリじゃないですか?」が2023年4月12日に始まり、知財業界では話題になっています。知的財産を扱い、しかも弁理士が前面に出てくるドラマはほとんどないので、少しは弁理士の知名度も上がるかも?

第1話では特許が扱われ、「先願主義」も出てきました。
https://www.ntv.co.jp/sorepaku/story/01.html

今回は「先願主義」についてちょっと説明してみます。

先願主義とは

例えば、Aさんが発明Aをし、Bさんも発明Aをした場合、AさんとBさんのいずれに発明Aについての特許をあげるのか?という問題が出てきます。

ある発明についての特許権は世の中にただ1つだけ認められるので、AさんとBさんのいずれに特許をあげればよいのかを決めなければならないからです。

その問題を解決するのが「先願主義」で、最も先に特許出願した人に特許を与えるという主義です。つまり「早い者勝ち」です。

先に発明をした人がかわいそうでは?

ここで「最も先に発明をした人を保護するべきでは?」と思いますよね。

その考え(先発明主義と言います)、分かります。

しかし、先発明主義は一見よさそうに見えるのですが、実は以下のような難点があります。

◆発明をした時の立証が難しい
上の例で言えばAさんとBさんのどちらが先に発明をしたのかを確定するためには、発明Aを発明した日時をきっちりと証明できなければなりません。

しかし、多くの発明は他の人から見えないところで創り出されているため、AさんやBさんが提出した証拠が本当に信じてよい証拠なのかは最終的には訴訟でもしない限り、確定は難しいということがあります。

◆権利の安定性や信頼性に欠ける
例えば、AさんとBさんが様々な証拠を出して「Aさんの方が先に発明Aを発明したね」とAさんとBさんとの間で確定し、Aさんに特許権を付与したとしましょう。

しかし、実はCさんという人がAさん及びBさんより先に発明Aを発明をしていた、ということが後で分かる場合もあります。この場合、先発明主義を採用するのであれば、AさんではなくCさんに発明Aの特許権を与え直さなければなりません。しかも、実は更にDさんという人がCさんよりも先に発明していたということが後で判明することもあります。

そうすると、先発明主義に基づいて誰かに発明Aの特許権を与えたとしても、後から発明Aについて先に発明した人が出てくることによりその特許権は安定的に存在しなくなり得、また信頼性も欠けてしまいます。

以上のように先発明主義には様々な難点があります。

先願主義の利点

一方、先願主義は、いち早く特許庁に特許出願した人を保護するので、誰が最も早く特許出願したのかについて判断が非常に簡単です。特許庁に特許出願した日時を見れば一目瞭然だからです。

上記の例でいえば、Aさんが最も先に特許出願すればAさんが特許を取ることが可能になり、一方、Bさんが最も先に特許出願すればBさんが特許を取ることが可能になります。

これが「先願主義」です。「早い者勝ち」というのはこのことを言います。

先願主義は、制度面で言えば、色々証拠を集めて当事者に主張立証させ、先に発明した人を決めるというような面倒な手続きを要せず、特許出願という手続きのみでスパッと判断できる、という面もあったりします。

似たような発明の特許出願が同時期にされることはよくある

なお、似たような発明の特許出願が同時期にされることがよくあります。

これは、誰かが誰かの発明を盗んだ、というわけではなく、皆さんが「同時期に同じような社会環境で生活している」からというのが要因の一つだろうと思います。

つまり、皆さんは「いま」という時代において同じような社会で日々生活しているので、「こういうのが欲しい」とか「こうあってほしい」という不満や欲求も似てきやすいという側面があると思います。

発明はそういった不満や欲求を解消することができる1つのツールなので、不満や欲求が似ている以上、似たような発明も創出されやすいのだと思います。そこにおいて「先願主義」は重要な役割を果たしているのだと思います。

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 弁理士 今 智司
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