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3番のりば支援員 二宮由香理さんインタビュー【第3回・最終回】チーム3番のりばの商品づくり

第2回 あっぷでアート活動をスタート

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就労センターあっぷの中でのアート活動は、絵を描くスペースから始まったんですね。3番のりばは…

二宮さん
なかった!ずっと貝に穴をあける作業をしながら、火曜日の午後だけ絵を描くっていうのを3、4年ぐらい続けていくうちに、だんだん…ここからどうしよう?って。余暇という位置づけで、みんなが絵を描いてリフレッシュできる時間があるのはいいんだけど、グッズを作りたいなって思うようになって、それが最初のきっかけかな?

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なるほど。

二宮さん
最初、何作ってたんだろう…確か、キーホルダーだったと思います。

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へぇ。

二宮さん
とにかくできることをちまちまやってたんですよ。そうしたら、牡蠣殻をやめてみようかって話が持ち上がったんですね。牡蠣殻の仕事は、ずーっと立ちっぱなしで、ずっと穴をあけて、重い物持って…1カ月みんなでがんばっても1万ちょっととか…。

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内職は、そういう世界ですよね。

二宮さん
ある利用者さんが、治具を使って貝に穴をあける作業をもうずーっと、5年ぐらい続けていて…お母さんもスタッフも彼は一人でする仕事が向いてるんだって、思い込んでたんですよね。

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うんうん。

二宮さん
だから…なんだろう、儲けはなくても落ち着くための作業だと思ってずっとやっていたんですね。

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落ち着くための作業。

二宮さん
そう。でも、アートもだんだん人数が増えてきたし、もしかしたらグッズも作れるかもしれない。ハーブ畑もできたことだし、何か色々と挑戦してみたいねってなって、施設長の城崎から変えてみようって提案があって。

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3番のりばの始まりですね。

二宮さん
当初、私は不安しかなくて。

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不安ですか?

二宮さん
というのも、貝仕事なら雨の日でもできる、微々たるものでも安定した収入はある。利用者さんもその仕事をすることで安定しとると思い込んでいて、それを全部なくしてしまったらどうなっちゃうんだろう?って。

アートに取り組める人と取り組めない・取り組みたくない人ってやっぱりいるし、絵は描けてもみんなでどんな仕事があるんだろう?みたいな不安もあって。最初はもう本当に不安でした。

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最初は不安だったんですね。

二宮さん
でも、もうやるしかないから!プラバンとか、ひつじの毛を紡いでフェルトボール作ったり、藍を育てて染めたりしてみようとか。できそうなことをピックアップして、これで1年やってみようと思ったら…結局プラバンだけで1年が終わったんです。(笑)

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ふふふ。(笑)

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二宮さん
牡蠣殻の仕事がなくなって不安定になるんじゃないかと心配していた利用者さんは、3番のりばの隣で苗箱を洗浄したり土壌改良材をつくる仕事に変わったんだけど、調子が良くって!みんなと一緒にしたかったんだな、と思いました。笑顔が増えたし、ご自身の思いを伝えてくれるようになって…先入観だけでずーっと変化を恐れていたことに気づかされました。だからそういう意味でも変わって良かったし、収入も増えたし、アートグッズ製作は意外とみんなできる作業工程はあるなって思ったんですよね。

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プラバン一つとっても、絵を描いて、プラバンを切って、焼いて、ニス塗って…いろんな作業がありますもんね。

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二宮さん
そうそう。もちろん、試行錯誤しながらなんだけど…2年くらい前かな?アート・ルネサンスで西淡路希望の家さんのアートセミナーに参加させてもらったんですけど、それがすごく良くって!いい意味で肩の力が抜けたっていうか。

▶アート・ルネッサンス
広島で行われている障がいのある人のアート作品展
https://www.hullpong.jp/artrenaissance

▶西淡路希望の家
大阪府にある主に知的障がいのある方が通う生活介護・就労支援の施設。60名ほどの利用者さんが手織りや軽作業などに従事している。12名の部員が所属する美術部が月に3回活動している。アート・ルネッサンス2019の招待作品。
http://www.normalization.or.jp/publics/index/214/

それまでは、グッズづくりは利用者さんが全部しなきゃいけない、いい意味で「そうじゃなくてもいいんだ!」って思えたのがあのセミナーでした。

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うんうん。

二宮さん
商品は、4人だったかな?スタッフの方でぜんぶ作ってるって教えてもらったんですね。原画は利用者さんが描かれた絵なんだけど、それを元にスタッフで話し合って、それを活かした形でカバンを縫製しているって聞いて「あ!それでもいいんだ!」って思ったんですよ。

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商品として、スタッフが形にしてもいいって思えたんですね。

二宮さん
そう。でもね、それでもごく最近まで、わたしがニス塗っていいのかな?って思いながら…。

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わかります、思いますよね。

二宮さん
思うじゃないですか。これ全部利用者さんが作らんと意味がないんじゃないか?とかってなんか変に思ってたのがずっとあったんですけど、最近、何がきっかけかわからないけど、なんかこう…支援する側される側って考えるからなんだと思って。これを同じチームって考えれば、利用者・スタッフっていう立場じゃなくて、同じチームの仲間として作業工程をそれぞれやっていくだけ。で、それが3番のりばの商品って思えるようになって、そしたら楽になったというか、それが自然なことだなと思えて。それまでは無意識に支援する側だから手伝っちゃいけないんじゃないか、とか変に思ってた。

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うんうん。

二宮さん
これ、自分の中で大発見だったんです。それが、正解・不正解っていう問題ではなくて、自分の中で腑に落ちたというか。それで、罪悪感なく、みんなと一緒に作っていけばいいんだって思えたんです。雑誌とか、セミナーとか、西淡路希望の家さんの話とか、他の事業所のスタッフさんの声を聞いて、商品を見て、今の3番のりばの商品につながっています。

(おわり)

3番のりばの商品は、少しですが、こんこんオンラインショップでも取り扱っております。二宮さんの思いが形になった商品をぜひご覧ください。


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