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デザインで福祉はもっと広がる 野ノ湯を支える上田さん

ちょっと疲れたとき、戸棚に野ノ湯があるだけでなんだか安心できて、大切な人にゆっくりしてもらいたいとき、気がねない贈り物として野ノ湯を選びたくなるのは、きっと、野ノ湯のパッケージが素朴で愛らしいから。野ノ湯が多くの人の手に渡るきっかけを作った上田さんにお話しを聞いてきました。

● 上田さん について
株式会社アンドにて、広告撮影のスタイリストとして活動するかたわら、宮島にある雑貨ひぐらしでは、商品の仕入れからスタッフのシフト組みといった雑貨屋の仕事も行う。二足の草鞋を履きこなす姿に、思わず「すごいですね」と言葉が出てしまったら「すごくないです、おもしろいことをやりたいっていうだけです」と笑顔で返してくれる気さくでハンサムな女性。デザインの相談は、メールにて受付。
higurashinew@gmail.com

●  雑貨ひぐらし について
宮島にある和モダンの宿 蔵宿いろは 1階にあるギフトショップ。野ノ湯はもちろん、鳥居の形をした箸置きや宮島の合戦図をモチーフにした手ぬぐいといったお土産にぴったりのものから、「わ!すてき!」と思わず手に取りたくなる器や小道具が並ぶ。オンラインショップも営業中。
https://higurashi.base.shop/

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1. 野ノ湯のパッケージデザインができるまで

上田さん
5年くらい前、ショッピングモールの小さなイベントに出店したときに、当時うちのスタッフだった沢田妙というイラストレーターが日向さんを紹介してくれたんです。そのとき野ノ湯はぜんぜん違うパッケージで…たしか5個入りで500円だったかな?300円だったかな?めっちゃ安く売ってたんですよ。それを見て、安すぎるだろうと。サンプルが置いてあって、すっごい良い匂いだったんです。これはちょっと自分でも買ってみようと思って。2日間のイベントだったので、1日目に買って、その日の夜、自分で使ってみて。2日目の朝に「すごい良かったです、うちのお店で売りたいです」っていう話を日向さんにさせてもらったんですよ。ただこのパッケージのままだと…。

――
当時のパッケージってどんな感じだったんですか?

上田さん
透明のビニールパックみたいな感じで、真ん中にシールが貼ってあったかな?名前も野ノ湯じゃなくて「ななゆ」だったかな。

――
イベントで出会ってたことをきっかけに、パッケージデザインを担当することになったんですね。

上田さん
沢田に日向さんを紹介してもらったから、せっかくだから「あなたが描いたら」って。彼女が得意な手書きっぽい感じで、印刷にそんなにお金はかけられないから一色でできて、昔のお薬の処方箋みたいなイメージでーって言って、デザインの参考になるような画像をいくつか送りました。で、一発ですごい良いのが上がってきたんです。普段は、10回くらいやり直したりするんですけど。(笑)

――
10回!デザインってそういう世界なんですね。

上田さん
野ノ湯に関しては、ほぼ一発でしたね。彼女がすぐにつかめたんだと思うんですよね。私が思ったイメージと日向さんたちがやってらっしゃる作業的な部分と。ちゃんとマッチしたというか。いいデザインになりました。

――
すごいかわいいデザインです。

上田さん
ありがとうございます。

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2. ちゃんといいものを作って、ちゃんとお金をもらう

上田さん
15年くらい前にしょうぶ学園を知ったとき、感動したんですよ。婦人雑誌で特集を組んでいたのを読んで、おもしろくて、すぐネットで調べました。すごく楽しくて、なんて素晴らしいんだと思って。
作業所で作ってるから安いっていうのはなしだろ、とずっと思っていたんです。クッキーとか50円で売られていることがありますよね。何でそんなに……なんていうんですかね、敷居を下げようとされているのかな、それやめたらいいのにとずっと思っていたんです。ちゃんといいものを作って、お金をもらうっていうところを しょうぶ学園 がやっていたから、やっぱりそうだよねと。そうであってほしいと思っていたので。

*しょうぶ学園:鹿児島県にある障がい者支援センター。木工・陶芸・染め織り・和紙・縫いなどの工芸・芸術活動や、音楽パフォーマンス等の創作・表現活動が高く評価され、国内外から注目されている。

3. ものを見るプロとして

上田さん
自分たちは、ものとして商品を見ることはすごく得意なので、なにかしら提案ができると思うんですよ。
仕事柄、ものはさんざん見てきたんです。ありとあらゆるデパートとか、ショッピングモールとかの、低価格から超最高級まで。ものを見るということだけに特化すれば、うちの事務所の右に出るものはいないんじゃないかと思うくらい見てきているはずです。
あとは、どうにかしたいけど、どうしていいかわからないという人たちがきっといると思うので、ここをこうした方がいい、もっとこうしようという提案は、いくらでもできると思っています。

――
すごい頼もしいです。困っている施設はたくさんあると思うので。上田さんのことを紹介してもいいですか?

上田さん
ぜひぜひ!ほんとに、私たちで良ければ。企業として、お互いに利益になることを模索していければいいなと思うんですよ。ボランティアでは、10年も20年も継続する事が難しいと思っているので、お互いに利益が出せることを模索できればなと思います。

――
デザインを頼んだことがないと、いくらくらいお金がかかるのか想像できないのですが…。だいたいどれくらいかかりますか?

上田さん
うーん、このぐらいですってはっきり断言ができないんです。パッケージの素材がボトルなのか、紙なのかにもよるし、大きさにもよる。商品がお菓子なのか、石鹸なのか…本当にものによるんです。
例えば、数年間という期間を区切って、売り上げの何パーセントがデザイン料で、みたいなやり方もあります。ほんとに様々だと思います。
でもパッケージをすごいかわいくして、中身も良ければお客さんはぜったいついてきてくれると思うんです。

――
どういう施設と仕事をしたいとかありますか?

上田さん
ないない!自分たちができるところとだったら、どことでも。
宮島のひぐらしに置くんだったら、レモンを砂糖漬けにしたレモンピールとか、それをオランジェットみたいにチョコレートコーティングしたものとか。モミジの色のチョコレートやコーヒー羊羹なんかもやりたいんです。レモン塩や味噌とか、調味料もやりたい。
特に、食べ物はいくらでもやる価値があると思ってて。みんな大好きな分野じゃないですか。人に差し上げてもいいし、自分が食べてもいい。食べ物は、少々高くても買いますよね。協力できることがあればいつでも、なんでもやりますので。

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4. 少しずつでも広められたら

上田さん
日向さんが「ひぐらしで野ノ湯が売れるんです」と言ってくださるんで、パッケージや店舗、ディスプレイも大切だなと思います。そういうことが少しずつでも広められたらなあと思っているんです。

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野ノ湯のパッケージデザインの話を伺いに行ったら、心強い味方に出会いました。いいものを、売れるものを、お客様に喜ばれるものを作りたい、そんな福祉施設にとって(もちろん福祉施設じゃなくても!)上田さんほど頼もしい存在はいないと思います。ちょっと気になる…そんな方がいらっしゃったら、えいやと、連絡してみませんか?
そして読者のみなさまには、野ノ湯の裏側にある熱い思いを知っていただき、野ノ湯を入れたお風呂で心と体を温めてもらえたらうれしいです。

(2019年9月取材)



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