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考えてしまう。「話せばできる子」の罠

Twitterで子供の忘れ物に関するコメントがタイムラインにいくつか上がっていた。その多くが「何をどうしても忘れてしまう子」の親御さんの発言で、わかるわかる、と頷きながら拝見していたのだけど、我が家の真ん中、小4少年の忘れ物エピソードについて一つ思い出したので書いておこうと思う。

(彼のエピソードについてはこちら

彼が小学2年生のころ。学校のPTAで主催されている将棋イベントに参加申し込みをした。通常授業が終了した後、校内の特別教室を使って実施されるものだ。イベント担当の親御さんが見守りでついてくれて、外部から先生も来てくださる。毎回人気のイベントのため抽選で当選者が決まる。それまでも何度か参加し本人も楽しいと言っていたので応募し、無事当選した。

当選通知をイベントの1週間前程度にもらってきた。家族のカレンダーや、本人が毎週もらってくる時間割のプリントにも記載し、普段の会話でも「将棋久しぶりだね、楽しみだね」と話した。

落ち着きの見られない子だったから、3日前くらいから意識して「〇曜日は将棋だからね、学校が終わったら必ず〇〇室に向かうんだよ」と伝えていた。前日の夜も、当日の朝も、しつこく。
うんざりした顔で「そんなに何度も言わなくても分かってる」と言われた当日。

授業が終わって真っ直ぐ帰ってくる時間に、息子が帰ってきた。

驚いて私が
「あれ?将棋…」
玄関で二人とも固まった。
「忘れて帰ってきちゃった…」

このイベントは抽選でしょう?参加したい人が全員参加できないの、当たった人しか参加できないんだから忘れないでねって何度も言ったよね?
今からでも間に合うから、学校に戻って担当のお母さんに謝ってやっておいで!
と、私が思わずイライラした調子で言うと、しくしく泣きだした。もう帰ってきちゃったから学校戻りたくないよう。
そんなやり取りをしていたら、時間的にはイベントの半分は終了していた。
でも、申し込みの時に当たったら必ず行くと約束したから、無理やり向かわせた。

その日の夜。イベント担当のお母さまからメールをもらった。

“本日彼は遅れてやってきてほとんど参加できませんでした。
理由を聞くと忘れて一度家に帰ったからとのこと。
このイベントは人気のため抽選制です。誰もが参加できるわけではありません。
まだまだ低学年、お子様が忘れてしまうことはあると思うので、お母さまがきちんとフォローしていただかないと困ります。
今後はちゃんとお子さまに言い伝えて、必ず参加できるようにしてください。“

ごもっともなことが書いてあった。
だけどわたしは驚いてしまった。

この方、私が息子に“言い聞かせていない”と思ってる。

言うだけなら何度も言った。
見えるところに大きく書いた。

これ以上どうしたら良かったのか?
学校から出てくるところを待ち構えて、帰ろうとしているものならその場で戻せば良かったか?
彼の手の甲にでも油性ペンで「将棋」と書けば良かったのか?

そのお母さまは面識のある方だった。当時6年生に長男、息子と同学年に次男がいた。

そこでハッとした。

このご家庭のお子さまたち、お母さまがきちんと話せば、それだけで言うことを聞ける子なのではないかしら…。

普通に言っても聞けない子供がいる。
そういうことを、根本的に分かっていないのかもしれない。
なので、子供が参加しない=親の怠惰、という思考回路につながっているのではないか。


わたしはもともと、子供が小さな失敗をすることは悪いことではないと思っている。けれど、しなくて良い失敗は少ないほうがいいとも思うから、今回のことではかなり神経質に言い聞かせたつもりだった。
そのうえで本人が忘れるようなことがあれば、間に合えば参加させて謝り、間に合わなければその後わたしも一緒に謝ればよいと思っていた。
あぁ、失敗したなあ、気を付けよう、と本人が思うところがあれば、それはそれとして経験になるのだと思うから。

今回のことで驚いたのは、彼の失敗は親の不始末、しつけ不足と思われる文面をもらったことだった。子供は小さいから仕方ない、けれど親の貴方は…。そういう風に言われたことだった。

長女も困るところはあったけれど、息子とは違った。長女はもらったプリントをなくすことはなかったけど、息子は度々失くした。長女は失くしもの、忘れ物をしたら焦ってしまうタイプだけど、息子は気にしない。当時は男女の差なのか?なんて思っていたけれど。

もしうちの子が全員、私の話を良く聞き、行動に移せるような「聞き分けの良い子」だったら、確かに言っても聞かない子供がいるなんて、分からなかったのかもしれない。

翌年4月、そのお母さまの長男は日本で一番難しい学校に入学した。

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