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寺田蘭世さんのお店=HONEY ROSIE HOUSE でおしゃれをしよう!〔中編〕

前編はこちら

ふと考える。私が好きなゲームをやるとき、道すがら武器を集めて魔法を会得しクリアを目指す。そこには様々な装備の組み合わせがあり、上手く組み合わせれば1+1が3にも10にもなる。その点ではおしゃれと同じだ。

しかしゲームにはクリアがある。敵との戦いに勝利することで、その組み合わせが正解であることをゲーム側から認めてもらえる。早押しクイズのようにたった1つの正解ではないが、勝利という結果が後から正解を造り出す。

おしゃれは違う。

この世は正解のない世界だと寺田蘭世さんはよく言っていた。そしてだからこそ己の正解を大事にする。孤独と言えば孤独な道だが、蘭世さんのおしゃれ道にはある種のあたたかさも感じられる。それはなぜだ?

そんなことを考えつつ、私はHONEY ROSIE HOUSEへと向かっていた。あの寺田蘭世さんが帰ってくる、一期一会いちごいちえのセレクトショップへ。

そうこうしている内に電車が横浜駅に到着する。目的地は東京(代官山)だったが、いったんここで降りることにした。持病持ちの身体に長時間の移動はこたえるからだ。しかし問題はない。そうなることを見越してたっぷりと時間を確保してある。着いてからの時間潰しに迷うくらいだ。

こちとら念願の来店なので計画プランは万全である。少し休んでから東京への電車に乗った。我ながら惚れ惚れするほど完璧な……、

普通に酔った……。

おしゃれとも持病とも関係のないただただ普通の乗り物酔いが私を襲う。普通の乗り物酔いで普通に苦しみながら品川駅で乗り換える。あれ?品川ってこんなんだっけ?などと血迷ったことを言いながら、渋谷行きの電車に乗り換えて。

待つこと10分程度で渋谷駅に到着する。気温の変化が想定より大きい。持病との相性が悪いがホッカイロを持ってきたので問題はない。下見も済ませてあるので道にも迷わない。我ながら惚れ惚れするほど完璧な……、

定刻5分前に到着する。

着いてからの時間潰しに迷うとは何だったのか。そんなことを考えている場合ではない。蘭世さんが借りたレンタルスタジオに急いで足を踏み入れる。

どこだ……?

この建物のどこに行けばいいのかわからない。後から冷静に考えると迷うはずもないのだが、5分前という条件は人をバカに変える。元々バカだろとか無情なことを言ってはいけない。だが私には必勝の策がある。

小判鮫戦法こばんざめせんぽう

私と同じ店に来たっぽい知らない人についていく。この知性あふれる他力本願によって私は2階のお店に無事到着した。ありがとう知らない人。

しかし助けられっぱなしでもない。WEBサイト上にチケットが見つからず困惑していた知らない人に対し、今日のチケットは「過去のチケット」に移動していることを告げる。これで貸し借りはなしだ。さて……、

遂に私はHONEY ROSIE HOUSEに入るのだ。

もっとも、3日目の中盤である。めぼしいものは既になくなっている可能性が高いとも聞いている。だがそんなことは大した問題でもない。

「寺田蘭世は前日に怪我をしてこの場にはいない」

「1つ前の時間帯にアラブの大富豪が来店してアイテムを全て買われている」

このぐらいの想定は既にしているので何の支障も無かった。それもう何しに来たんだとか言ってはいけない。あれこれ期待するのではなく、目の前にあるものと向き合う。そういう心境に達してここに来た。

いざ!

お店に入ったとき……、ちょっと離れたところに蘭世さんがいた。軽く会釈えしゃくしてもらい、ほとんど条件反射でこちらも軽くおじぎをする。よくよく考えるとだいぶ変な構図だが、私にとってはごく自然なことだった。

かつて蘭世さんは言っていた。

おしゃれで大事なことは自分が一番楽しむことであり、自分がいいと思ったことを貫くことだと。そしてアイテムを選ぶときのポイントは、自分がときめくかどうかだと。そう常々つねづね言っていた。もちろん、人としてのルールやマナーを守る必要はあるのだが、そこから先に道はない。ならば、

私は私の在り方でお買い物をするのみだ。

最初に目に付いたのは帽子ぼうしだった。古着ではなく、HONEY ROSIE HOUSEが自前で作ったやつだ。色はピンク・ネイビー・グレイ・ブラウンの四色がある。ピンクで冒険した分、残り3つで抑えに回った配色か。あるいは、福岡で販売したTシャツ(バーガンディー&ベージュ)との相性か。

いずれにせよ、1つは買っておきたいと単純に思った。この4つの選択肢の中で、私がかぶるならグレイかブラウンかはたまた……、

ピンクが残り1個だった。

OK. 大丈夫。わかってるわかってる。そういうことじゃない。在庫があと1個だろうと100個だろうと、自分が欲しいものを欲しいだけ買いきるのが良きお買い物だ。それに第一、流石にピンクは冒険しすぎではないか。確かに前日、それはそれで愉快かもなあと思った覚えはあるが、だからといって……、

帽子ピンク、購入決定。

残り1つとなった帽子にうっかり運命を感じてしまった。ま、まあ、それはそれで面白いと思ったのは嘘じゃないから良きとしよう。

バカ①: "あと1つ" に弱すぎる

次に訪れたのはアクセサリ類のコーナーだった。お店のInstagramを眺めている内に指輪が欲しくなっていたのだが、幸いにもまだいくつか残っていた。

私は子供の頃、無駄に石とか集めちゃうタイプの人間であった。石とか付いてる指輪が欲しいなあぐらいに思っていたら、おあつらえ向きに青緑の石付きが1個残っていた。自分の欲求を信じて2品目の購入を決定する。

他に何かないかと机の上をざっと見渡してみた。花のブローチのデザインが妙に気に入ってしまったので、使い道は全く思い浮かばないがキープする。ここはこのぐらいでもういいかな……いや、待てよ。

👌の形の手のオブジェが置いてあった。

机やタンスの上にでも置いたら愉快かもしれない。急場の容れ物と化した帽子の中にキープしたのだが、2人いたスタッフの内の1人が飛んできた。

店「それ売り物じゃないです」
私「Σ( ºωº )」

値札がついてないことを確認していない痛恨のミス。これは恥ずかしい。それ以前の段階で気づけと言われそうだが、蘭世さんなら有り得るかなとか思って……、ごめんなさい。私が120%悪いです。これは恥ずかしい。

バカ②:謎の手

気を取り直して今度は服のコーナーをうかがう。古着屋のメインコンテンツとも言えるが、今の私には難しさが大だった。

なぜなら今は3日目の中盤だ。需要と供給のかたよりを考えると、180cmある私が買えそうな上着など流石にもうなさそうだが……、

なくはない、か

ギリいけそうなのが1つあったが、そこで私は大いに迷った。デザインは良い。値段も無問題。しかし「ギリいけそう」というのが問題だ。服のサイズに対する私の見立ては全くもってアテにはならない。

もしダメだった場合、私はその服を処分しなければならなくなる。服を欲しがる友人の心当たりもないので、ちゃんと処分するしかない。代金についてはHONEY ROSIE HOUSEに寄附きふしたと思えばいいが、せっかくここで買った服を最速で処分するなり封印するなりしないといけないのはどうしても嫌だった。

もう1つの選択肢として、福岡で売っていたTシャツが再販されていたがこちらはこちらでMサイズ。私は思った。今日はその日じゃない。他の誰かが買う日だったのだ。着るものについては諦めることにした。

しかし諦めっぱなしではおもしろくない。

押してダメなら引いてみな。着るのがダメなら巻いてみな。日本古来から伝わる格言に従い、代替案としてベルトを調達する。いかに私の目が節穴でも、ベルトの長さなら服よりも見立てやすい。きっとイケると思った(※実際にはやや小さかったが十分使える範囲内であり、日々の生活で普通に使っている。もうちょっとやせるか、あるいは自分で穴を開けるのも良きかもしれない)。

ここまでの戦果は悪くない。悪くはないが……、もう一声ひとこえなにかあればもっと愉快になれる。他に何か、がっつり買えるといいのだが……、

おや?

微妙に見辛い角度にたながあった。そこにはバッグが2つと……、

ずた袋?

最初に浮かんだ言葉がそれなあたり、私のおしゃれ語彙ごいは絶望的にまずしい。袋の上部をヒモで開け閉めするブラウンのリュックっぽいやつであり、漫画やアニメの放浪者が背負ってそうな縦に長い袋をちゃんと真面目に作ったようなやつでもある。だが重要なのはビビッとくるかだ。なんとなく手に取ってみる。

これ、良いな……。

手ざわりがいい。私の身体にも丁度いいサイズだ。値段も全く問題がない。そして何より……、この容れ物には需要ニーズがある。

去年の冬、私は長年使っていた手さげ袋を壊してしまった。なので渡りに船と、HONEY ROSIE HOUSEのトートバッグを買おうとしたのだが……、前回つらつらと書いたとおり叶わなかった。その後はイマイチ買う気になれないまま、百均ひゃっきんのトートバッグでしのぎ続けていたのだが……、

これを買おう。

ビビッと来た。楽しい。すごく楽しい。宝探しに成功したような気分になり、何やら妙に気持ち良かった。これを抱えてレジに行こうと思った。レジ……そうだ。私は今からあの場所に行くことになるのだ。

寺田蘭世さんが立つあの場所へ。


後編へ続く


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