祖母のカメラのファインダー[ショート小説]
"親戚にカメラ好きを公言すると、次々とクラシックカメラを貰える"
カメラ雑誌を眺めているとそんな裏技らしき文言が目に入った。私はちょうどフィルム写真が気になっていたので、さっそく母経由で親戚に言いふらしてもらうと、一週間後におばあちゃんから宅配便が届いた。
ダンボールの中からまず野菜が出てきたが、その脇に入っていたカメラを取り出すと、いつか田舎で見た覚えがあるコニカだった。ネットで調べてみるとレンジファインダーというタイプらしい。レンズを回転させるとファインダーの像が動いて、ちょうどいいところに像を合わせるとピントが合う構造。
のはずなんだけど、ファインダーをのぞいてみると、なぜか暗い。よく目を凝らすとカビだらけだ。これじゃあちゃんと写真を撮れないよな… そういえば田舎でおばあちゃんに写真を撮ってもらうといつも下手くそだったな。
正直もっと高級なものを期待していたけど、折角送ってもらったものなのでちゃんと使わないと申し訳ない。分解して掃除することにした。
どうやらカニ目レンチという道具が必要なので、(今日はサボりたかったけど)大学の研究室に顔を出した。工具箱からお目当ての道具を見つけてなんとか分解し、研究室のキムワイプで内部のガラスを拭き取って、組み立て直した。気づくと40分も経過していた。
ファインダーを覗くと、うん、よく見える。さっそく、フィルムを入れて撮ってみよう。
そんなとき、研究室のドアが空いてF先輩が入ってきた。からし色? のスカートが微妙に似合わない。
カメラをもらって修理していたことを伝えると、
「へぇ、じゃあ一枚撮ってよ」
ファインダーを覗くと、ニヤッと笑いながら、ピースを構えた。ポーズもダサい。でもそんなところが素敵だ。胸の苦しさをごまかしながら、なんとかピントを合わせてシャッターを切った。
「こんど現像したら見せてね」
「半目だったらウケますね」
研究棟を出ると、遠くの空がオレンジ色が目に入った。
空ってこんなにキレイだったんだ。
楽しみが増えた感覚と、胸の苦しさを感じながら家路についた。
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