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悲しいだけならこんな恋はしてない

人間らしさが溢れる物語が好きだし
人間らしさを歌っている歌が好きだし
人間らしい駄目な部分が出ているひとが愛おしい。

ドラマ『獣になれない私たち』6話までを観た感想です。


まず始めに、反発されるかもしれませんが…Twitterで感想を検索して見ていて思うのは「世間よ、晶の味方をしすぎじゃないか?!」ということ。いや、いいんです。分かるよ。晶の味方でいてほしい。
言いたいのはそこの部分よりもむしろ他の登場人物たちをあまりにも貶し過ぎていませんか?ということなんです。


まず多いのが、朱里(黒木華)。

晶(新垣結衣)の恋人である京谷(田中圭)の元カノ。京谷が晶と付き合っている今も京谷の家に住み続けて「仕事が決まったら出て行く」と言いながら引きこもり無職のまま4年。
朱里は前職の虐め(?)がきっかけで仕事に行きたくないと思うようになってしまう。心配した京谷が「そんなに辛いなら仕事辞めちゃえば?それで一緒に住めばいいじゃん」と提案。

朱里のこの4年は京谷がそう言ってくれたことにただ甘えていた4年間では無かったと思う。

わたしは新卒で勤めた会社をストレスで辞めている。それも、突然休職して。
毎日体調悪いなと思っていたらある日突然、通勤の電車に乗れなくなった。駅で呆然と電車のドアが閉まるのを見送ってしまって、その足で「もしかしたら」の考えから逃げ続けていた心療内科へ行って、鬱の一歩手前、自律神経失調症ですね、と診断を受けた。

職場でストレスを抱えて働けなくなった状況に陥った人は、きっと考える。
「どうしよう、次の職場でも同じだったら」

自分自身に全く自信がなくなる。
大学まで平気だったのになんで。みんな働けているのになんで。

環境の変化が何よりも怖い。
精神をとにかく安定させたい。
仕事が決まっても、その後実際に働いてみて仕事が落ち着くまでは、自分に対して安心なんて全く出来ない。

朱里がどんなストレスを抱えていたかまでは不明瞭だけど、一度薬の大量摂取で自殺を図ったことがある、って出てきたから心療内科の薬の可能性もある。

たぶん朱里はこの4年間自分自身を責め続けている。
なんであの時働けなくなっちゃったんだ。あのまま働いていれば今ごろ京ちゃんと…。そうならなかったのは、全部わたしのせいだ。わたしがこんなことになっちゃったから。

同じ家に暮らしていながらも、もう恋人では無い京谷。
家から出ないのにずっとペディキュアを塗り続ける朱里。
そのペディキュアを見せる相手はひとりしかいない。
そのひとりの相手は晶の爪にしかきっと気が付かない。


「なんで京谷は朱里を追い出せなかったのか」

と、Twitterでよく書かれているのを見るけど晶も言っている通り「出来ないよ」とも思う。実際に朱里が倒れた所を目の当たりにした京谷なら尚更。簡単に踏ん切りなんてつかないだろうな。その頃の朱里に対して感じていたのが愛情じゃなかったとしても。見捨てることは出来なかったよね。

じゃあ皆さん、晶が同じ立場になった時に同じことが言えますか?とも思うんです。

晶も晶で職場のストレスを抱えて日々を過ごしている。駅のホームを呆然と見つめて飛び降りそうになったり。誰かに助けを求めようとしたり。ひとり泣くことも多い。

そんな晶を見かねて「辛いなら仕事辞めて俺の家に来れば?次の仕事決まるまで居ていいから」と京谷が言ったとする。一緒に暮らし始めたものの、なかなか次の仕事に踏み出せず、そうこうしているうちに京谷には新しい恋人が出来て、出て行って欲しいと言われて「京谷が言ったんでしょ?仕事決まるまで居ていいって!」と言い返す。

全然あり得るんだよ。
朱里は晶の延長線上にいるんだよ。


って、こう書いてくると京谷が自分勝手!みたいにも見えるけど京谷は京谷で全然クズでもなんでもない普通のひとなんだと思う。

朱里との恋愛に悩んで、そんな時に同じ悩みを持つ晶に出会って、お互い好きになって、朱里とは別れて、晶と恋人になって。

誰がどこで住んでいるかを抜きにすれば全然普通のこと。ちょっと家のことが厄介だけど。

呉羽(菊地凛子)との浮気についてはもちろんダメだと思うけど、これについて職場のひとと話した時に「晶は同じ土俵に立った方がいい」って言われてドヒャー!それじゃ何も解決しないのではー?!と思ったんだけど、晶やりやがったな、って感じですね。笑

(ちなみにわたしも同意ではあるものの「呉羽は仕方ない。だってああいう人だから」で片付けてしまうの、そういう人ずるいよなあって思う。分かるんだけど、モヤモヤする!)

今週の6話で晶が恒星(松田龍平)とキスしていた時、それを京谷が見ているって知ってた上でやった、と晶が話す場面で「今の晶、可愛くない」と言った京谷に「最低!」とネットは荒れていたけれど、ねえ本当に最低?

未遂に終わったとはいえ晶は自分から恒星のことを誘ったり、今回のことも京谷がこっちに来ちゃう、嫌だなあ、ええい、とりあえずキス現場でも見せつけて帰しちゃえ!のキスだったし。
彼氏がいる(別れていない)状況で、彼氏の目の前で他の男性にキスをしてしまう、そこだけ取り出すと全然「可愛くない」でしょ。しかもその相手にも軽く「ごめん」って。晶そんなこと出来ちゃう女だったの?ってわたしはショックだったけどなあ。
みんなガッキーが可愛いから許してるでしょ!判定甘くない?って思う。


感じ方が人それぞれなのがドラマについて話していて面白いところでもあるので良いんですけどね。
結局はちょっと見方を変えてみると意外といろんな登場人物に感情移入できちゃうドラマだよね、という話がしたいんです。

(晶が朱里の元に訪ねて行った時に「わたしはあなたが羨ましい。良いね、そんなふうに泣けて」みたいな台詞は、朱里の立場からすると本当にハアアアアァァ?!って感じだと思うんだよね、とか。笑)


そうそう、このドラマの主題歌あいみょんの『今夜このまま』も大好きなんですけど、タイトルにも使用した『ふたりの世界』も結構ぴったりな歌詞かも、と思います。

そばにいるだけで幸せだなんて
私そんなこと今まで一度も思ったことないわ
でも勘違いしないで
嫌いなわけじゃないのよ
私だってよく分からないわ
なぜ泣いているのか


付き合っている = 幸せ
そんな方程式はどこにもないんだよね。

けもなれ、癒しの存在は佐久間(近藤公園)さんだから、仕事辞めないで〜!って本気で思っています。社内にいたら好きになるタイプ。

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