忘却はよりよき前進を生む
タイトルは哲学者・ニーチェの言葉から。
忘れてしまいたいことを忘却することが出来たら人生よい方向に前進していくものなのでしょうか。
魚の骨が刺さったようにチクチクと残る嫌な記憶。
その忘れたい事柄だけをうまくスポンと頭から忘れることが出来たのなら、どんなに楽だろうと思う。
記憶と感情は結び付いているものなんだろうか。そんな気がするけれど、文系だから脳の構造とかの詳細までよく分からない。
楽しい記憶よりも嫌な記憶の方が鮮明に覚えていたりもする。どうでも良いことだけダラダラと何十年も覚えていることもあれば、大事なことをうっかり忘れてしまうこともある。
もし、自ら望んで忘却する事項を決められるとしたら…
あなたはその事項を忘却することを選びますか?
だけど、それって、本当に忘れたいことだった?
ジョエル(ジム・キャリー)はバレンタイン直前に恋人のクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)と喧嘩をしてしまう。謝ろうと彼女の職場に行ったジョエルだったが、クレムは目の前で他の男といちゃついていた。ショックを受けて帰宅するジョエルはラクーナ医院から友人夫婦に届けられた手紙を見る。
「クレメンシュタイン・Kは記憶からジョエル・Bを消去 彼との過去を話さぬように」
恋人と喧嘩をし、謝ろうとしたらその恋人は既に自分との記憶を消していたなんて。怒ったって、悲しんだって、もう仕方がない。後悔したって遅い。そうなった時、一体どういう選択を人は取るのか。
ジョエルもまた、クレムの記憶を消しに行くのだ。
現実の時間、消されようとしている記憶の中、そして過去の思い出、と時間軸がぐちゃぐちゃになるのでしっかり頭が働く眠気のないときに観ることをお勧めします。一瞬、こんがらがる。
記憶を消すラクーナ医院で働くメアリー(キルスティン・ダンスト)がとっても可愛らしいのですが、もうメアリー…ああメアリー…となってしまう。大好きだ、メアリー。
キルスティン・ダンスト、調べたら『ジュマンジ』の子役の女の子でした。
そう、その記憶の消し方もはじめは成程と思うのだけど(思い出の品をひとつひとつ見て、それを見て感じる脳の働き?を診ていたりする)、実際に消す場面になるといい加減か!と突っ込みを入れたくなる。なんてふざけているんだろうか。
むかし付き合っていたひとに対し、別れた時にはそのひととの思い出を全て忘れてしまいたいと思っていた。よく言われる「女は上書き保存」というまさにその典型的タイプで、好きだった部分を思い出すのも辛いから忘れてしまいたい、と思った。
わたしは遠距離になってしまってそこからすれ違ってうまくいかなくなったので、顔を合わせるなんてこともなくなってしまった。
今なら分かる。
思い出してしまうのが辛い、はやく忘れてしまいたい、ってそんなの本気の恋だったからこそだ。とっても好きだったからこそ、別れることが辛かった。当時はタイミングが悪かったんだね、きっと、お互いに。
そういう気持ちを抱いたことがあるひとに刺さる映画だと思う。
別れた直後は辛いけど、やっぱり全部を忘れたい訳じゃなかったはずだ。すこしずつ記憶が薄れていくのは悲しいことだ。
忘れるひと、忘れられるひと、一体どちらが辛いんだろうね。
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