アイディアと表現のNISSAN

誰もが知る大企業、日産

では日産と聞いて思い浮かべるものは何ですか?



まずはやっぱり自動車でしょうか。

リーフ、ノート、セレナ、ジューク、キューブ
マーチ、デイズ、ルークス、クリッパー
エルグランド、バネット、キャラバン
エクストレイル、スカイライン …



ああ、カルロス・ゴーンさんも浮かびますね。


それから有名なキャッチコピー。

「世界の日産」
「"ぶっち切れ"技術の日産」
「今までなかったワクワクを。」


テレビCMも思い出すかもしれません。
矢沢永吉、のってカンガルー、が印象的。

「"やっちゃえ"NISSAN」
「日産がやらなくて、ほかに誰がやる。」



わたしが思い浮かべるものはラジオCMです。
そう、わたしは日産のラジオCMが大好きなんです。

「ラジオCMで好きなのは?」と質問されれば迷いなく「日産!」と答えるのですが、残念ながら今のところその質問をされた経験はありません。


ラジオCMなので当然のことながら視覚情報は一切無し

自動車が軽快に走る姿も、カラフルな色のバリエーションも、スタイリッシュな見た目も、一目で伝わることはありません。

でもだからこそ、聴覚だけだからこそ面白いラジオCMが日産には沢山あるんです。




運転を助ける相棒

女「うわあ、坂道発進かぁ…」
?「ここは俺に任せろっ!」
女「デイズ!」
車「しばらくの間、ブレーキ状態を維持しておく…!その隙に、アクセルを踏むんだ!」
女「やってみるっ」
車「今だ、行けぇーっ!」
女「はいっ!」

男N「あなたの運転を助ける相棒、日産の新しい軽自動車、デイズ」

(中略)

車「だが機能には限界がある。安全運転を心掛けるんだ」
女「はいっ!」

テレビCMよりもラジオCMの方が合っているなあと思うのが自動車や部品の擬人化
上で書いたのは自動車ごと擬人化でしたが、自動運転技術についてのCMだと、アクセル、ブレーキ、ハンドルがそれぞれ「ここはわたしが!」とサポートしてくれるものもあります。

同じく擬人化だと、話題性のあるラグビーを盛り込んだCMもありました。


 -歓声-

男「それではヒーローインタビューの時間です。いやぁ、すごいトライでしたね」
?「ありがとうございます」
男「あのトライ前のラン、迷いがなかったですね」
?「そうですね。ボールを持った位置からゴールまでの道筋は、正確にセンチメートル単位で常に頭に入ってます」
男「センチメートル単位ですか!無駄のないコースに加え、背後や左右から来るディフェンダーも巧みにかわしていました。もう、後ろに目が付いてるのかと思いました」
?「そうですね。まあ、目というよりはセンサーって感じです。360度、何があって、何が起こっているか、認識しています」
男「360度ですか!さすがに人間離れしていますねえ。それでは、今日のヒーロー、日産スカイラインに大きな拍手を!」

両方とも会話劇の後にナレーションが入ってより詳細な説明がされるのですが、ナレーションだけだと記憶に残るCMにはならないと思うんです。
擬人化だったり、ラグビーネタだったり、そういうものと掛け合わせることによってCMに面白みが出るような気がします。

スカイラインなんて何のCMか分かるのは最後の最後なんですよね。そこまでは面白い違和感を感じながら聴くことが出来ます。違和感を感じさせるのってラジオCMでは強みだと思うんですよね。

テレビCMにはテレビCMの良さ、ラジオCMにはラジオCMの良さがあって、日産はラジオCMの良さを最大限に発揮しているように感じます。



死の角度とは、よく言ったものね

父「あ、ユカちゃん見てごらん。シマウマさんだ」
娘「ほんとだ」
父「お目目が小さいねえ」
娘「うん。でも、シマウマの視野は350度あるんだよ」
父「へえ…じゃあシマウマさんは美味しそうな草をすぐに見付けて食べられるね」
娘「逆よ?パパ。あれは、食べられないためのもの。草食動物はいつ肉食動物に襲われるか分からないから、危険を察知する能力が高いの」
父「じゃあ、シマウマさんは安心だ」
娘「甘いよ、パパ」
父「えっ…」
娘「350度見えるってことは、残りの10度は死角だってこと。そのたった10度の死角から襲われることだってある。死の角度とは、よく言ったものね。パパも、目に見えているものだけにとらわれていると、いつか死角をつかれて危険な目に遭うかもしれないよ」

男N「新しいセレナなら大丈夫。360度セーフティーアシスト搭載。死角になりやすい後方の危険も検知する」

ユカちゃん役の女の子が良いんですよねえ。
「死の角度とは、よく言ったものね」の言い方が好き。

最後のナレーションまで車の名前や機能について何一つ触れられていないのが面白いですよね。シマウマと自動車の掛け合わせも新鮮ですし。


ラジオパーソナリティーさんって大人の声がほとんどだと思うんです。なのでラジオから子供の声が聞こえてくるというだけでも思わずハッとなりやすいのかなと思います。

日産のラジオCMは結構あるんですよ、子供が話すもの。

最近あまり聴かなくなってしまったんですが、女の子がふたりで会話するルークスのラジオCMも大好きだったんですよ。

白馬の王子さまに憧れる女の子に対してもうひとりが「白馬って白一色でしょう?その点ルークスなら20色から選べるよ」とか「座り心地狭くない?自動アシスト機能もないでしょう?」ってひたすらルークスを勧めるんです。

こうして記憶に残るラジオCMってそんなに無い。
ビジュアルが無いのに記憶に残るっていうのはアイディアが面白いからこそだと思うんです。



まだ、帰りたくないの…

男「今日は一日楽しかったね、ユリちゃん。家まで送るよ」
女「ユリ、まだ帰りたくないな…」
男「えっ?!あ、ああ、じゃ、じゃあウチ、くる?」
女「ううん、ユリ、まだ帰りたくないのっ」
男「だから、ウチに…」
女「ううんっ!…ユリ、好きなの……ノートの加速…」

女N「ずぅっと楽しんでいたい乗り心地。電気の走りの、日産ノートe-POWER」

これは何のCMだろう?」と思わせる男女の会話。
男性視点にたってユリちゃんはどういう意図で帰りたくないなんて言うんだろう?と思っていると…なるほどこう来ましたか。

今でこそradikoという便利なアプリがあるものの、基本的にラジオは聴き流していくもの、だと思っています。

中高生の頃は新曲初オンエアをMDに録音して何度も聴いたり、友達とラジオの文字起こし交換ノート(しかも手書き!)をやっていたりもしましたが、そういうきっかけが無いと巻き戻してラジオを聴くなんてわざわざしないのではないでしょうか。

その中で「これは何だろう?」と思わせられるかどうかがラジオCMのキーポイントだと思っています。テレビCMでは好きな俳優さんが出ていればそれだけで注目して観てしまうものだけど、聴き流されるラジオで注目して広告を聴いてもらうのはなかなか難しいのではないでしょうか。

このラジオCMは、思わず流れてくる会話に耳をそばだててしまうものでした。
単純に「ノートが好き」じゃなくて「ノートの加速が好き」なので、しっかりとその車の特徴が入っている点がまさに広告だなあ、とうっとりします。



その他にも、

山びことの掛け合いが何度かあって(「ヤッホー!」「ヤッホー!」等)最後の最後で山びこが同じ返しではなく会話を返すもの。そして続くナレーションが「ついていく、だけじゃない。状況に合わせたあなたをアシスト」というエクストレイルのCMや、

ベートーベンの「運命」がひたすら流れて(その間セリフは無し)最後に一音ボーンと外れる。ナレーションは(曖昧ですが…)「たった一回で運命は変わる」というCMや、

「走れメロス」が通行止めにあって迂回せざるを得なくなり、日産の電気自動車リーフに助けられるCM、


…とにかく日産は様々なラジオCMがあります。



誰もが知る大企業の日産ですが、日産のラジオCMを知っているひとは一体どのくらいいるんでしょうか。

わたしは好きです、日産のラジオCMが。
毎回のアイディアが、その表現方法が。

新しいCMが流れると思わず手を止めて、今度はどういう展開だろうとワクワクしながら耳を澄ますあの瞬間が、たまらなく好きなんです。

技術の日産は、技術だけではないんです。

アイディアと表現の日産、でもあるんです。

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