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かわいいだけじゃない、ピューロランドで勇気を育んできた|小巻亜矢『サンリオピューロランドの人づくり』

思い出の中にあるピューロランドは輝いていた
サンリオエンターテインメント代表取締役社長である小巻亜矢さんの『来場者4倍のV字回復!サンリオピューロランドの人づくり』を読んで、この書き出しだけで胸がいっぱいになってしまった。
わたしの思い出の中のピューロランドも輝いている。かわいくて、やさしくて、あたたかくて、そして、ピューロランドは自分の中の勇気を育む場所でもあった。

わたしが産まれたのは1992年、東京都多摩市。
その2年前の1990年、同じく東京都多摩市でピューロランドは創業を開始した。ピューロランドはたった2つ違いのお姉さんだったのだ。

家から近くだったことと母がサンリオ好きだったこともあり、ピューロランドにはよく連れて行ってもらった。当時はまだ紙のパスポートがあって、キャラクターの顔が付いたパスポート入れのバッジを洋服に留めてもらうのが嬉しかったことを覚えている。それはピューロランドに来たという証であり、夢の国の中でいっぱい遊んで良いんだよという許可証でもあった。
サンリオキャラクターボートライドに乗る前にスタッフのお姉さんにしっかりパスポートが見えるよう得意気に掲げるのだ。パスポートを確認してもらって、行ってらっしゃい!と笑顔で手を振ってもらうのが大好きだった。キャラクターだけじゃなく、目に映る全てのものが輝いていた。

行くと、わたしが必ず訪れていたアトラクションがある。2005年に終了した『ゴールの伝説』だ。
国内初の360度回転式シアターが使用され、ぐるぐると移り変わるシーンにハラハラし、巨人ガイザと火炎竜グリモーザの迫力に子どもの泣き声が響き渡り、我々観客は幽閉されている王女・ルシアに力を送り、そうして世界(パルム星)を平和に導く壮大なストーリーだった。お気付きだろうか、かわいいサンリオキャラクターは一切出てこない。
回転式シアターが目玉として注目されていたが、わたしの印象に強く残っているのはシアターに入る前の部屋だ。前説部屋のような役割で、四方八方を石にされた巨人や謎の怪物たちに囲まれているおぞましい部屋だった。すでに泣き叫ぶ子どもたち。いまにも動き出しそうな巨人たちの迫力は何度行ってもドキドキした。そこに案内役のお姉さんと妖精の掛け合いが始まる。要はわたしたち地球人にルシアを助けてほしい、というような話なのだが、その途中で周りの巨人たちが少しずつ動き始めるのだ。これは何度見ても、知っていても怖かった。

「時間がありません!さあ、早く!」
と促されて回転シアターに入るのだが、ここで入口が2つに分かれている。それが『勇気』と『思いやり』だった。この2つが王女ルシアを助ける上で必要な力であり、それぞれの入口から勇気や思いやりの力を授かることができた。
「こむぎは勇気の入口でしょ」と親に言われ、確かにわたしには勇気が足りていないな、と思いながら毎回勇気の入口を潜っていた。(勇気はドクロの入口で、それも結構怖かった。)
きっと今でも『ゴールの伝説』があったのならわたしは迷いなく勇気の入口を選ぶのだと思う。30を過ぎても未だにわたしには勇気が備わっていないからだ。

書籍のタイトルにV字回復と書かれている通り、ピューロランドは一時期大赤字を迎えていた。それを2年で黒字化に導いたのが小巻社長である。小巻社長はまさに勇気を持ち、勇気を活用している人だった。

第1章で小巻社長は15年ぶりにピューロランドを訪れ「これでは、人は来ないだろうな」と思う惨状を目の当たりにした。当時の小巻社長はというと、サンリオのグループ会社で働いていたもののピューロランドには関わっていない状況だったという。
館内は全体的に暗くどんよりとしていて、スタッフには笑顔が少なく、食事メニューも食べたいものがなかったと。そんな状況を見た小巻社長は当時のサンリオの社長である辻社長にすぐ手紙を書いたそうだ。
改善点を見つけた場合、それを指摘してくれる人だって僅かだろう。しかし小巻社長の手紙の内容はクレームではない。久しぶりに訪れた感想と目についた課題を書き、手紙の最後の締めくくりは「大変です!ピューロランドは可能性に満ちています」。
読みながら1人のサンリオファンとして涙が滲んでしまった。勇気あるこの行動が、ピューロランドを大きく変えていったのだから。

その後、紆余曲折あって小巻社長はピューロランドの館長に就任する。その時点でテーマパーク経営の経験は無し、それでも覚悟を決めた。
「2年で黒字にする」と自分で目標を定め、自身の得意分野である心理学的アプローチを取り入れながら見事2年でのV自回復を達成することになる。

笑顔が少なく、そもそも接客マナーも出来ていなかったスタッフについて「本人たちの責任ではない」と言い切る箇所がある。当時のピューロランドに限らず教育の行き届いていない場で働いている人は今だって決して少なくないはずだ。ピューロスタッフの中にもきっと小巻社長のこの考えに救われた人たちが多くいただろう。

とはいえ、これは本人たちの責任ではありません。きちんと教育がなされていないだけ。そもそも、ピューロランドが好きで仕事をしている人たちです。きちんと教えてあげれば必ず、いいサービスを提供できます。

p41

ふと思い出す。
子どもの頃、ゴールの伝説で「自分には勇気が無い」という一面にばかり目を向けていた。だけどあの時、親は「こむぎには思いやりの気持ちは備わっている」ということも同時に伝えてくれていたのだった。そうだ、無いものばかりではなかったはずだ。わたしには、思いやりの気持ちがあった。

読みながら小巻社長の「勇気」と「思いやり」に沢山触れることが出来た。
ただ、触れることが出来た、で終わらせたくはない。1人のサンリオファンとして、わたしもサンリオの理念に沿って行動したい。子どもの頃から勇気を出すことを教えてくれたピューロランドに、堂々と胸を張りたい。
というわけで、2点わたしの「勇気」の一歩(二歩?)を書いておくことにする。


メンタルケア、キャリアサポートについて学ぶ

会社員として働く中で、わたしは何度かメンタル面での不調で休職を経験している。と同時にそういう人たちの相談役でもある人事部で働いてもいた。自分の経験が活かせると思っていたし、実際にわたしだから、と相談を受けたケースもあった。
人事の仕事は好きだ。採用の仕事も、入社後の社員教育に関わる研修の仕事も好きだった。さらに今回この本を読んで、小巻社長が得意としている心理学的アプローチにもとても興味が湧いた。
周りにも何人か適応障害等で会社勤めが出来なくなった人たちがいる。わたし自身も現在休職中ではあるが、そういう働けなくなってしまった人への支援等、今後はより積極的に関わることが出来れば、と思うようになってきた。

ピューロアンバサダー就任

ピューロランドには「ピューロアンバサダー」というプログラムがある。公式からの分かりやすい「推し活法」であって、こういった部分にいち早く目を付けた点が素晴らしいなと思う。(アンバサダープログラムは2016年より開始)

ピューロランドが好きなら誰でもアンバサダーになることができ、公式のデジタル会員証だって貰える。SNSにハッシュタグをつけて呟くことでポイントが付与されるという画期的なシステムだ。

デザインは数種類から選択可能
わたしが選んだのは大好きなウィッシュミーメルちゃん

いままでも公言してきていたが、今後はアンバサダーとして今まで以上にピューロランドを応援していこうと思う。
まだまだわたしの中の勇気はちっぽけだ。それでも目標を書き出して公表することは自分の中で大きな一歩だった。

サンリオはかわいい。だけど、それだけじゃない。
わたしは今でもピューロランドに勇気を育んでもらっている。


【過去記事】

折角なのでピューロアンバサダーのハッシュタグを追加して再アップ!


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