世界はデザインでできている

デザイナーだけがデザインする訳じゃない

「良い?どんな仕事もデザインを気にすることはできるんだよ。デザイナーだけがデザインする訳じゃないんだから」

新卒で入社した会社で直属の先輩から言われた言葉。
この言葉を仕事中はいつも大事にしています。


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「マルちゃん製麺」のパッケージデザインや「ほぼ日刊イトイ新聞」のおさるのキャラクターデザイン等を手掛ける秋山具義さんの『世界はデザインでできている』を読みました。

自分たちの身の周りにどれだけデザインが溢れているのか、その数々のデザインはどういう想いから作られているのか、"デザインとは何か"を考えるきっかけになる一冊でした。

デザインってなんだろう?デザインについてもうちょっと知ってみたい!
そんなひとにお勧めです。わたしは普段エッセイや小説しか本はあまり読まないのですが、面白くてサクッと読み終わりました。

難しい言葉(専門用語)はほとんど出てこないのでいちいち調べたりせずに読み終えられるのも魅力。分かりやすく書かれているからこそ、自分で考えるゆとりが生まれます。
読んで終わりではなく、見る目を養って世の中のデザインをもっと面白がりたいなあって思える本です。


実際に作られた広告を例に話が進むので「なるほど、こういう点を意識して見てみるとデザインって面白いのね」というのが分かります。

色、フォント、写真、そういった「デザイン」と聞いてパッと思い浮かべるものだけでない部分が特にわたしは好きでした。具体的に言うと「信頼のデザイン」や「行動のデザイン」がそれに当てはまります。



さて、交通広告と聞いて何を思い浮かべますか?

駅貼りポスター、駅看板、車内の中吊りポスター、窓ステッカー、最近だとトレインチャンネルや駅のデジタルサイネージ。電車だけではなくバスやタクシーにも広告は存在します。

例えば、駅で見かけるパチンコ店のポスター。
あれは駅によって総量規制されていることが多いです。つまり、1駅あたりパチンコ店のポスターは同じ期間に何枚までしか掲載しないよ、という決まり事ですね。
つまりその駅のポスターが全てパチンコ店で埋まらないように、と配慮されていたりするんです。

電車内ではクリニックの広告も多く見かけます。
病院関係の広告と葬儀屋の広告は隣合わないように掲載するだとか、優先席の真上にはそういった広告が掲載されないように、というのも実は考えられています。

ドアのステッカーはおおよそ女性の目線の高さ、ということで女性向けの広告が人気だったりもしますね。



現場で見て考えることが大事だと秋山具義さんは書かれています。
実際に商品が並ぶ陳列棚を見に行き、ここに並べた時に手に取ってもらうにはどうしたら良いのかと。買い手の立場になって考えることがデザインをするうえで大事なんだと。

行動をデザインするというのはこのことです。

広告を掲載する媒体として何を選ぶのか。そこも行動のデザインなのではないでしょうか。先ほど書いた女性向けの商品の広告を電車内で出すならドアステッカーが向いているのかな、とか。

そして広告を掲載する側も「見る側への配慮」というデザインをしているのではないでしょうか。パチンコのポスターや病院・葬儀屋の広告などがそれに当てはまります。

今回は交通広告を例に挙げましたが、普段何気なく目にしているものって気付かないうちに「見る側への配慮」がされているのかもしれません。


普段見ているものの世界が、デザインを意識してみるだけで面白いものへと変わっていきます。家の中のお気に入りのものをじっくり眺めてみたり、コンビニに駆け込んでみたくなったり。

ああ、デザインって面白い!


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先ほど「見る側への配慮」もデザインされているのでは、と書きました。
つまり、絵が得意でないひとも、デザインの勉強をしてきていないひとも、ちょっと「見る側へ配慮」をすることによってデザインを意識できるのではないでしょうか。


「良い?どんな仕事もデザインを気にすることはできるんだよ。デザイナーだけがデザインする訳じゃないんだから」

冒頭に書いたこの言葉は、社会人になったわたしを支え続けている言葉です。
わたしに仕事とは何か、社会人とは何か、を教えてくださった先輩は「仕事はどれもデザインなんだよ」と言いました。
ちなみにわたしの仕事はデザイナーではありません。


例えば、別会社さんに送る資料。

相手がそのまま「保存」ボタンを押してデスクトップに資料が保存された時、すぐに分かりやすい名前にしているか。
相手が「印刷」ボタンを押した時にわざわざ印刷設定をする手間を掛けず、綺麗に一枚で印刷されるようになっているか。


例えば、メールの書き方。

開いた時に一目で見て読みやすく書かれているか。
言いたいことが的確に伝わるか。
改行は読みやすいか。


メールはその先輩の書き方に今も倣っています。

下記の件、お見積りをお願い致します。

 ■内容:ポスター印刷
 ■仕様:コート135km + マット加工
 ■枚数:20枚
 ■備考:白黒、カラーの2パターン

以上、ご確認よろしくお願い致します。

例えばこんな感じ。必要な情報がどこに記載されているのかパッと見て分かるように。伝えて残すことがメールだよ、と。メールだってデザインするんだよ、と。

いつでも送る相手、見る相手のことを考えて文章や資料を作る。それが自然に身に付いたのは先輩のお陰でした。

「仕事はどれもデザインなんだよ」と言われましたが、仕事だけではなく、日常のあらゆる場面でわたしたちはデザインを意識することが出来るのかもしれません。

当然のことばかり書いたかもしれませんが意外と読みにくい文章を書くひとって多い気がするんです。
句読点の「、」の代わりに全角スペースを使う上司、ずっと気になっているんですよね…。笑



デザイナーという職業じゃなくても、日常生活の中でデザインを意識して生活することは出来るはずです。それによって日常はもっと楽しく、豊かになる可能性が大いにあると思っています。
意外とデザインって自分にとって身近な存在です。


世界はデザインでできている。

デザインを、世界を、楽しむきっかけの一冊に、是非。

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