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伊坂幸太郎「フーガはユーガ」を読んで
伊坂幸太郎史上 もっとも切なく、でも、あたたかい。
僕たちは双子で、僕たちは不運で、だけど僕たちは、手強い
双子の兄弟が織りなす、「闘いと再生」の物語
常盤優我は仙台市内のファミレスで一人の男に語り出す。
双子の弟・風我のこと、幸せでなかった子供時代のこと、
そして、彼ら兄弟だけの、誕生日にだけ起きる不思議な現象、
「アレ」のこと――。
ふたりは大切な人々と出会い、特別な能力を武器に、
邪悪な存在に立ち向かおうとするが……。
数々の伏線を回収する鮮やかさは相変わらず。どうでもいい会話や出来事は一つもない。
軽やかにすら聞こえる語りで紡がれるのは弱者が理不尽に虐げられる世界。作者はこの世から悪意や罪や理不尽がなくならないこと、勧善懲悪が通用しないことを知っている。
小説的能力があっても都合のよすぎる大団円はない。それでもユーガとフーガはただできることをするのだ。そこに作者のどうにもならないことへの姿勢を感じる。
最後は風我の中に優我はいると思わせる描き方で微かな救いを与えてくれる。
やりきれなさの中に清々しさも。そんな風に読みました。
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