見出し画像

孤独Ⅰ 俺を生かすもの(詩)

月刊詩誌「ココア共和国」2020年5月 佳作 電子書籍掲載

酔っていようがいまいが 本音だろうが建て前だろうが 誰も俺に興味などないのだから 自分のことなど語らないのが一番で 語ろうなどとすれば 案外面白くて頭の切れるやつだとか 意外にイケてる充実ぶりだとか どう見てもらいたいかの言葉が知らぬ間に溢れ出し 自分プロデュースの自分に心の中で赤面する 他人の評価など関係ない 自分がわかっていればそれでいい みんな違ってみんないい なんて いつも深く頷いてメモまでとっていた思想などきれいに飛んでいる

俺は幸せだ 俺には才能がある 俺は愛されるに値する
ただそう強く感じたくて あふれ出す あふれ出す あふれ出す 
己を擁護する言葉 よく見せる言葉 数少ない自慢話を盛った言葉 
さりげなく 面白く ちょっと落として笑いに変えながらも
こう見てほしいと思う己の姿が上手いこと描かれるように
そして結局さらに孤独になる 孤独になる 孤独になる
笑える話だ 自分をどう見せるかに必死で 誰のことも
ちゃんと見ることができない俺が 誰かにわかってもらおうなんて

みなと別れ一人酔ってぼやけた頭で家路を辿りながら
あーまたやってもうたと後悔しても遅い
でも救いはある そう救いはある
だって何も変わっていないのだから
最初から一人で 今も ただ一人だということ! (笑)(笑)(笑)
かっこ笑い かっこ笑い かっこ笑い

そんな痛くて面倒くさいやつを アホやなと言う顔で迎えてくれる 
茶色の柔らかな毛並みを撫でつつ 
みんなこんなもんやろ とぽつりつぶやけば
どうでもええやろ みんななんてと
呆れ顔で顔を洗い うみゃっと鳴き ざらっとした舌で俺を舐める 
俺になど全く興味のないおまえが 今日も俺を生かす


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?