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フリートーク・ロックバー読本Ep.5: Blank Generation/Richard Hell and The Voidois

Podcastは下のリンクから(こちらからも)

Ep.5はRichard Hell and The VoidoisのBlank Generation。ロックバー読本Part.1に収録されています。

コラム本文

以下、ロックバー読本Part.1よりコラムを抜粋します。

 77年ファースト・アルバム『BlankGeneration』の6曲目。
 
 正直に書こう。

 パンク・ムーブメントは俺にとって、ロックと離れるための正当な口実になるはずだった。

 地下室に篭って読書と議論に明け暮れるか、横浜スタジアムのライト・スタンドにいるか、部屋でヘッド・フォーンを被っているか、まともとは呼べない大学生生活であったが、夜間の英語の学校にも通い、結局は、大手と呼ばれていた商社に入った。

 自分が青春時代に、読み、聴き、観てあこがれた、一般と大きく外れた生き方を生きることなど、自分が出来るとは思えなかった。これといった才能もないし、普通の生活をしようと思ったのだ。
 
 そんな時に風靡していたパンクは、俺には、行き過ぎのように思えた。普通の生活のロック的活性化という枠組みを越えていると思った。だから、当時、パンク・ニュー・ウェーブは殆ど聴いていない。

 社会に出た。3年くらいロックを聴かなかった。自分が社会人として通用するか丁稚のつもりで働いた。
 
 仕事。つまらないとかくだらないとかは全く思わなかった。しかし、自分のいる場所ではないことはすぐに分かった。そこで同僚たちが、幸せ、満足、としている価値観に全く興味が湧かなかったのだ。

 またロックを聴き始めた。しかし、まだ、パンクは守備範囲外であった。ぎりぎりまで臆病な青春だった。 結局、会社を辞めた。同じようなことを思っていた銀行員だった友と最初のロック・バーを開いた。
 
 パンクを真剣に聴いたのは、それからである。
 
 爾来、ロック的な生活の中に、普通の生活のエッセンスを見つめるというのが、俺の生活の方法論となった。
 
 8年経った。途中でもう一人相棒が増えた。
 
 相方がロック・バーに倦んだ。ロックバーを続けるより、仲間と生き抜くほうがロックだと思った。だが、今思うと実際は、いい歳をして、まだ独りで思うがままに生きる根性がなかっただけだ。
 
 一度目のロックバーを閉めて8年間ロックを聴かなかった。聴かなくてもロック的な生活をしているつもりだった。仲間がいた。仲間と同じ釜の飯を食うこと、一緒に仕事をしていくことで、演奏しないロック・バンドをやっているつもりだった。
 
 人生とは何なのだろう? 結局、仲間と別れた。
 
 そして、またロックバーをやっている。今度は一人で、多分死ぬまで・・・
 
 友情が一番。そんな風に思ったこともある。いや、思い切ったと言えるほど思ったという自信はある。それに殉ずる覚悟もあった。しかし、結局、それも、俺の心と頭の中の、欠落(ブランク)を埋めることは出来なかった。
 
 人生の最終段階に入った今、才能の有無、音楽としてロックをやるかどうかに関わらず。自分がどこまでも、『MyGeneration』であり『BlankGeneration』であることに、もはや疑いの余地はない。俺の人生からロックは切り離せないのだ。

 店でロックを大音量で聴いたり、このようなロックに関する落書きをしたりすることで、俺の心と頭の中のブランクが埋めきれるとは思ってはいないが、少なくとも、ロックにはブランクの存在を忘れさせてくれるだけのリアリティがある。
 
 このパンク世代のアンセムが訴えるところは、全ては欠落を認める、認識するところから、始まるのだ、と、いうことだろう。
 
 そして、いかにそのブランクを埋めて生きていくか、もがき苦しめということだろう。真理だと思う。

Podcast Ep.5のお話は、ニューヨークパンクの有名曲、ブランクジェネレーションを取り上げています。ロック黄金期を体験した西川氏にとって、パンクはどういった存在だったのか。ロック、パンクのマインドと、それに関わる象徴的な出来事について深く語ってもらっています。

編集後記

一通り西川氏の人生、Upset The Apple-Cartの今に至るまでを序章とし、今回からは音楽について語る内容にしていくつもりでしたが、やはり私小説的エッセイに含まれた哲学や人生経験を解題する内容としています。

今回、諸事情により配信が遅れましたが、今後は毎週配信を目標に進めて参ります。いいね(♡マーク)やサポート機能、Twitterでの拡散など応援いただけると幸いです。

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