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知恵と工芸の女神アテーナ― ~父の娘、論理的合理的思考の策略家 ギリシャ神話編③

本日は、処女神グループの次なる女神アテーナ―の登場です。

ギリシャ神話の神々は、その出生からして特異だったりするのですが、アテーナ―の出生もまさに仰天です。

アテーナ―の神話
父は最高神ゼウス、母はゼウスの最初の妻であり知性を司る女神メティウスです。しかしメティウスから生まれる子は、ゼウスを超える神となると預言され、それを恐れたゼウスはなんとメティウスを飲み込んでしまいます。

メティウスが孕んでいた子は、ゼウスの頭の中で成長し、やがて陣痛が起こります。ゼウスはひどい頭痛に襲われ、ヘーパイトスに自分の頭を斧で叩き割らせます。

なんと、アテーナ―は父ゼウスの頭から生まれてきたのです。それも、「オギャー」と赤ん坊として生まれたのではなく、すでに成熟した女性の姿で、黄金の鎧を身に纏い、槍を手に力強い鬨の声をあげて勇ましく現れ出たのです。

アテーナ―は自分には母親がいるということに気付かず自分にはゼウスという父親しかいないと思い込んでおり、彼と永遠に結びつき、彼の右腕としてオリュムポスの神々のなかで、ゼウスの権力の象徴である盾(アイギス)を受けた唯一の神となりました。

その後、神話の中では、英雄的な男性の保護者、助言者、パトロン、同盟者というような存在として語られています。戦時中には戦略を、平和時には家庭の技術を統括する女神の役割を担いました。彼女の軍事と家事の技能は、合理的に練られた策略と計画性に基づいています。

アテーナ―は工芸の神とも言われているように、素晴らしい織物の技術を持っていました。

あるとき、織物を得意とする人間の女性アラクネーが、織物の技術を女神アテーナ―と勝負したいと言い出します。

これを耳にしたアテーナ―は怒りを覚えますが、彼女を諭すために老婆の姿を借りて神々の怒りを買うことのないように忠告します。しかしアラクネーはそれを聞き入れず勝負を望んだため、アテーナ―とアラクネーは織物勝負をすることになります。

アテーナ―の織物は見事でした。アテーナ―は様々な戦いの図を描き、アラクネーにこの競争をやめるよう警告しました。

一方でアラクネーの織物も見事でした。そこには大胆にも、神々の失敗や過ちを描き出し、なかでもゼウスの愛の裏切り(白鳥に姿を変えてレーダーの寝室に入り込み我が物にする。白い牡牛に変身して乙女エウローペーを誘拐するなど)を描き出しており、アテーナ―はアラクネーが父ゼウスの神にあるまじき行為を公にしたことに腹を立て、アラクネーを追い込んで首を吊らせてしまいます。

アテーナーはアラクネーの死に少し哀れみを覚え、生き返らせることにしましたが、蜘の姿に変身させました。そのため、アラクネーは永遠に一本の糸にぶら下がり糸を紡ぐことになったということです。

このようにアテーナ―に象徴される女神元型は、「父の娘」、つまり父なるものの強い影響下にあり、権威的男性に自然と惹かれます。そうしたことから、アテーナ―の元型を持つ女性は、そのような男性と子弟関係を結んだり、右腕となって働くなど、常に男性側につき、父権的価値を擁護する立場をとります。

鎧を身に纏っているのはアテーナーの特徴であり、アテーナ―の元型を生きる女性は、知的防衛に身を包み、現状を客観的に観察、分析し、どうあるべきかを決定する冷静さを持っています。このため感情に流されたり、巻き込まれたり、感情に支配されない特性を持っています。

アテーナ―元型を生きる人の特徴
物心つく頃には、周りから教えられもしないのに、本に興味を持ち、自分で読み出すなど、知的好奇心強く、ものの仕組みや成り立ちなどさまざまなことに興味や疑問を持ち、「なんで?」「どうして?」と親を質問攻めにするところがあります。

娘の賢さを父親が誇りにするのであれば、アテーナ―タイプは自身の能力に自信を持ち、知的好奇心を伸ばし、野心的に成長していくことでしょう。

しかし、父親がアテーナ―タイプの性質に否定的で、「女の子なんだから、そんな難しいことはわからなくていいんだ」とか、「よけいなことに首を突っ込むな」などと言われたり、また父親自身の人生が失敗続きでやさぐれた生活を送っていたりする場合など、娘の能力を認め、それを後押しする支えが欠けているため、娘は自分の能力に自信を持つことができず、能力があるにも関わらず、成し遂げられないという状況に陥ってしまうということがあります。

母親がアテーナ―タイプでなくとも、少なくともアテーナ―タイプの子どもに理解があれば別ですが、そうでなければ、「お母さん、そんなこともわからないの」という娘の態度に母親は見下されていると感じてしまいます。当然ながら、母は娘を可愛く思えなくなります。

一方娘は母親に、あるがままを受け入れてもらえず支持を得られないまま大人になっていくことになります。こうしたこともアテーナ―タイプの女の子を生きづらくさせます。

アテーナ―タイプは、感情的なものを人と共有することが得意ではないため、思春期の頃には、同級生の女の子たちが好きなタレントに熱を上げ、その話題で盛り上がるなんてことが、馬鹿げてみえて、女の子たちとうまく関わることができません。むしろ知的好奇心の強い男の子の方がウマが合い、居心地よく感じるかもしれません。

手先が器用で、創作のセンスがあり、手芸や裁縫を楽しむアテーナ―タイプであれば、そうした手仕事の楽しみを通じて、母親や他の女の子たちとうまく繋がっていくこともあるかと思います。

アテーナ―タイプの人は、明確なビジョンを持ち、目標に向けて懸命に働きます。やみくもに努力するのではなく、論理的で合理的な最善策を見つけ出し達成していきます。知的武装に身を固め、男性優位の社会のなかでも有能に立ち振る舞いことを成し遂げていきます。

結婚においては、社会で実力を発揮している男性に惹かれ、そうした男性を選びます。

夫に情緒的な深い結びつきを求めることはなく、夫を社会的に支える同盟者、右腕的存在であろうとうするでしょう。いわゆる内助の功というヤツですね。
家事能力も抜群。実際的で合理的な精神を駆使し、効果的に家を整え管理します。

アテーナ―タイプの女性にとって、中年期は人生のなかでもっともよい時期です。若さや美しさといったものはアテーナ―タイプにとって本質的ではなく、本質は知性や有能さといったものだからです。

ものごとをあるがままに冷静に捉えることができるので、自分の現況を見定めて、自分の道を選択し、次の展開へと移っていきます。

ただ、中年期は今まで眠っていた他の女神たちが活性化するときでもあり、今までの整然とした生活に、思いがけない反応が起こって、心が乱され、危機に陥る可能性も無きにしもあらずです。(例えばアフロディーテー元型が目覚め、ロマンスを求めるようになるとか…)

アテーナ―タイプは生涯を通じて、精力的で実践的です。若い頃は仕事や家庭に精力を傾け、歳をとるとともになんらかの社会貢献活動に積極的に関わるでしょう。


もともと自己充足型の処女神アテーナ―の強みで、子どもたちが巣立っても空の巣症候群になることもなく、また夫に先立たれても、生涯独身で通しても、一人で自立し充実した老後の生活を送ることができます。

アテーナータイプの課題となるのは、知的防衛という鎧です。頭で生きる部分が強すぎて、からだの感覚を十分に味わい体験すること(官能性、親密さ、深い共感、苦悩、エクスタシーなど)をし損ね、生き方が一面的になりやすいというところがあります。


また自分と異なるタイプの人々の特性に価値を置かずに切り棄てたり、非合理で感情的な人の心の問題に容赦なく、批判的になりがちです。

自分の内なる子どもの側面に目を向け、分別をいったん脇に置いて、新しいことを無心に感覚的に味わったり、女性的なもの、母なるものに触れ直す、再発見する機会を得ることで、アテーナ―の特性は深みを増していくことでしょう。

アテーナ―の特性は、客観的に物事を捉え、見通しを持ち、計画を練り、技術を磨いて、忍耐強く達成していく力です。これは、ある意味、仕事をやり遂げる上で必要な能力であり、教育のなかで、アテーナ―元型は刺激され、活性化していくところがあると思われます。

また、女性が窮地に陥り、そこから脱出したり、生き残る手段を考え始めるときは、いつでもアテーナ―が活性化されるということです。

感情的に巻き込まれそうな状況で明確な思考をする必要があるとき、私たちは女神アテーナ―のイメージを強く意識するとよいのかもしれません。

同じ処女神とはいえ、アルテミスとはまた違った特徴がありますね。

目標に向かってそこに全集中するところは共通していますが、自然志向で野性味が強く、女性同士の繋がりを大事にするアルテミス。

一方、アテーナーはどちらかというと頭脳明晰な知性派、男性優位の競争社会のなかで揉まれながら、果敢に有能さを発揮し、我が道を歩む一匹狼的なイメージ。

お読み下さった皆さんはどんな印象をもたれましたか?

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

さて、次回は、処女神の最後のひとり、ヘスティア―の登場です。同じ処女神でありながら、アルテミスとアテーナ―と全く趣を異にします。

次回もまたお読み頂ければ嬉しいです。




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