江戸時代のごはんのおかず卵料理編。卵三昧の古文書『万宝料理秘密箱』を訳してみた
今回が卵料理最終回。ようやくごはんのおかずになりそうな卵料理へと突入です。手間ひまかかった江戸時代の料理を、想像して食べた気になってみましょう!
1.卵鰌魚の作り方
①卵を20個どんぶりに割ってよく溶く。
②古酒を1合(180ml)入れてよく合わせる。
③どじょう2・3合を素早く入れ、
すぐに蓋をして半時(1時間)ほど待つ。
④器ごとせいろに入れて蒸す。
⑤ほかの鍋で薄い味噌汁を作り
よく煮立たせる。
⑥④のどじょうを小さじですくい、椀に入れて
⑤の汁をかけ、山椒を添えて出す。
お吸い物に一段とよい。
ただし、冷えの薬である。
2.卯花熬卵の作り方
①卵をお好みでいくつか割り、
これをざっくりと溶く。
②鍋の底に焼豆腐を2つほど敷き並べ煮る。
③その上に①の卵をそっと流し入れ、
遠火でゆっくり煮る。
④新しいわかめを火にかけ、すぐに細かくして
目の細かいふるいにかける。
⑤③の卵を器に入れ、④のわかめの粉をかける。
⑥薄醤油をかけ、その上に卯の花※を
置いて出す。
※卯の花=ウツギの花の別名
この料理ではおからのことではありません!
<補足>
・これは某茶人の秘方の料理である。
・卯の花は卵鳥の毒を消すものである。
・鍋の底の豆腐は使わない。
3.礒菜卵の作り方
これも茶人の秘方である。
①鍋に湯を沸かし、新しい卵を割り入れ、
そのまま湯がいて、浅草海苔をかけて食べる。
②別に用意したおちょこにわさび醤油か
煎り酒※を入れて出す。
汁次※に汁を入れ、卵は小皿に入れる。
浅草海苔の粉は折形紙に包んで出す。
※煎り酒=日本酒に梅干しなどを入れて
煮詰めたもの
※汁次=汁を入れてつぐ器
4.巻煎卵の作り方
①鍋に湯を沸かし、卵を湯の上で割る。
②浮き上がってくるまでじっくり茹でる。
③器にまんじゅうの粉を入れておく。
④油を熱する。
⑤②の卵を取り出し、③のまんじゅうの粉を
ぐるりとまぶして④の油に入れざっと揚げる。
茶家卓袱料理※にもよし。
※卓袱料理=宴会料理の一種
5.卵鱠の作り方
①卵をかなり薄く焼いて、長さ一寸(約3cm)
ほどに細く切る。
②ゆで卵を作り、白身を乱切りに薄く切る。
③黄身は手で細かくもむ。
④煎り酒で③の黄身を合わせ、
よくすり合わせる。
⑤生姜汁かわさびを入れ、①の千切り卵を
少しだけ入れる。大根おろしを入れても
よいが、多すぎに気をつける。
料理方法はいろいろある。
6.柹(柿)餻卵の作り方
①祇園柿の大きいものであれば3個ほど、
皮をよく洗いヘタを取る。
②すり鉢でよくすり、のばすと糊のように
なったら、酒を小さい杯で一杯入れる。
③よくすり合わせて卵をひとつずつ割り入れる。
④ゆっくりすりながら、12~13個ほど
割り入れる。
⑤箱か鉢に入れて蒸し、茶碗に入れる。
⑥敷味噌にはわさび・生姜・山椒・梅を使い、
いずれも味噌にすり合わせ、
少し火にかけて敷く。
⑦ごま油を熱し、⑤の柿卵をさじで取って
油で揚げる。平皿の添え物や、茶料理の
卓袱ものの取り合わせにも一段とよい。
7.時雨卵の作り方
①ハマグリをまな板の上で生抜身にして
塩汁が抜けきってしまわないように
手早く大根でやさしくハマグリをたたく。
②ハマグリがすり身のようになったら、
すり鉢に入れてよくすりのばす。
③分量が約3合(540ml)ほどあれば
卵を10個割り入れ、ざっくりかき混ぜる。
④鉢か箱に入れて蒸す。
ハマグリの香りが抜けないようにするのを
時雨という。木の芽や山椒を入れて蒸し、
小さじですくって盛る。
【たまむしのあとがき】
江戸時代の庶民の食卓では、ガッツリしたおかずというのはそうそうなく、そもそもが質素だったのでしょうが、卵料理はちょっとしたアクセント的な位置づけの料理が多いように感じます。
ただ、今回はようやく「揚げもの」が登場したので、やっとおかずらしいメニューの調理方法が垣間見えました。
柿と取り合わせた「柹(柿)餻卵」がいったいどんな味なのか、非常に興味があります。
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