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化粧水の作り方など。江戸時代の古文書『廣益秘事大全』解読③

前回に引き続き、嘉永四年(1851)の古文書『廣益秘事大全』から、奇巧妙術類(生活の豆知識編)の3回目です。

今回は、油などの水分を使ったアイディア特集です。

1.すき油※の作り方

 ※すき油=髪をすくときにつける油
      (相撲取りが使う鬢付け油)

<方法1>
ゴマ油一合(180ml)に生蝋きろう※六匁(22.5g)
入れて練る。ただし、これは十月から正月
までの割合で、四月から八月までは
蝋を二匁(7.5g)増やして練る。

 ※生蝋=漆などからとった蝋。ろうそくの原料

<方法2>
石膏二斤(600g)、薩摩蝋五斤(1.5kg)、
種白絞り※たくさん
 
 ※白絞り=白ごまの種子を加熱しないで
      しぼった上質の油

ただし、油一升(1.8㍑)につき、
石膏と蝋450目(1.6kg)の割合で練る。

油はゴマより白絞りのほうがツヤが出て良い。
石膏は細かいほうが良く、唐のものは
さらに良い。これは油の固まりが良いため。

練り方は石膏を鉢に入れ、蝋と油とをよく
燃やし、その中に少し入れてかき回す。
固まったころに鉢の縁から離れたら、
そのあとから再び蝋と油を焚いたものを
入れてよく冷ます。

2.化粧水の作り方

 ※原文の「花の露」とは化粧水のこと

匂油においあぶら※一合(180ml)に生蝋きろう五匁(18.75g)
と龍脳※一分(375mg)を入れて練る。
蝋に季節や天気の加減あり。

 ※匂油=香料入りの油
 ※龍脳=龍脳樹という木から出た樹脂の結晶。
     香料の原料

<化粧水に関してはこちらの古文書にも記述が
 ありますので、ぜひご覧ください>
       ↓↓↓

3.褐色の無地に紋所をつける方法

紋のない褐色(茶色)の衣服に紋をつけるには、
その紋所だけ橙(だいだい)の実のしぼり汁を
つけて乾かせば、そのところだけ白地となる。
よく繕って上絵を描くこと。

4.角類を染める方法

器に小麦の酢で紅を溶き、紅一匁(3.75g)に
生塩硝※五分(1.875g)を入れて、
炭火で紅が煮え上がったときに
象牙や鹿角・馬骨・鯨の白骨などを染めると、
色がはっきりと紅色になる。

 ※塩硝=黒色火薬の主成分となる硝酸カリウム

5.紙に金砂子※をまく方法

 ※金砂子=金箔を細かい粉にしたもの

まず、箔を切って箔篩はくふるいに入れ、砂子をまく。
次に、紙に海蘿ふのりをひき、篩の切箔をふりかけて
そのまま紙をあてて、そっとなでつけ乾かす。
乾いたら羽箒はぼうきで掃く。

6.取り外しの難しい物に砂子をおく方法

貼り付け床などの取り外しの難しい物に
砂子をまくには、まず、油を浸した綿を
用意した一枚の紙に包んで軽くなで、
その紙で切箔を揉む。
箔をその紙で巻けば油気があるので、
小箔が紙についたものを砂子としてまく場所を
通常通り糊をつけたようになり、
その砂子を包んだ紙を持ち歩き
押し当ててそっと撫でたら紙を取る。

7.雨障子に油を使わない方法

大根かカブのしぼり汁を使って紙に塗ると
色がつかず、雨水を防ぐことができる。
蝋を塗ると3・4年もつが、
つけたあとが残るので
場所の良いところでは使わないほうがよい。


【たまむしのあとがき】

「化粧水の作り方」の原文タイトルは「花の露方」。

花の露方???

花から露を取る方法なのだろうと思って訳していたのですが、調合方法が書かれてあるので、なんか変だなと思い調べてみたところ、「花の露」というのは「化粧水」のことだと判明したのです。

ちょうどこの記事の直前に『容顔美艶考』というメイク本を投稿していて、その中にも「花の露」という言葉があり、化粧水のことだと知らずに訳してアップしていたので、大急ぎで修正したのでした。

花の露・・・・・。

一生忘れません(笑)



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