見出し画像

暑いときの煮物保存方法など。古文書『廣益秘事大全』解読㉓

嘉永四年(1851)の古文書『廣益秘事大全』から、奇巧妙術類「生活の豆知識編」解読の第23回目です。

当シリーズの第1回目に「夏に煮物を長持ちさせる方法」という、タイトル通りの秘伝を一度取り上げたのですが、それとはまた別バージョンのものが出てきましたので、ご紹介したいと思います。

上記以外は水に関する秘伝ですが、なかなか現代では馴染みの薄いものばかりですので、ぜひ時代の流れを感じてみていただけると幸いです。

昔の日本人の、シンプルで人間にも地球にもやさしい生き方の中に、現代でも取り入れることのできるものがあればと思い、そのヒントを提供できるよう、古文書を読み解いてご紹介します。

1.井戸水の濁りを透明にする方法

雨などが降って井戸の水が濁ったときは
大豆50粒・杏仁50粒をすりつぶして
井戸の水に入れると、
早速水は透明になるでしょう。

杏仁

2.汲んでおいた水を透明にする方法

器に汲んだ水の濁りを透明にするには、
生姜を3・4個沈めておくと
すぐに透明になるでしょう。

3.湯茶の代わりに喉の渇きを止める方法

・白砂糖  四十匁(150g)
白茯苓しろぶくりょう※ 三十匁(112.5g)
薄荷はっか※  四十匁(150g)
甘草かんぞう※  十匁(37.5g)

 ※茯苓=松の根に寄生するサルノコシカケ科の
  マツホドの菌核を乾燥したもの

茯苓(ぶくりょう)

 ※薄荷=シソ科の多年草

薄荷(はっか)

 ※甘草=マメ科の多年草。根を乾燥させ、
  粉末を甘味料として使用。

甘草(かんぞう)

以上4種類を粉にしてなつめほどの大きさに
丸めて保存します。
一丸ずつ口に含めば、数里※の道を
急いでも喉が渇かないでしょう。

 ※一里は約4km

棗(なつめ)

4.暑いときに煮物を保存する方法

口の広い器などの底に藁灰を敷き、
煮物をお椀などに入れたまま
その上に置きます。

器の口を小さい布団などで覆って
その上から瓦で重しをし、
風に当たらないように置きます。

そうすればどんなに暑いときでも
2・3日は腐りません。

取り出して食べるときは
事前に鍋を熱しておき、
そのまま入れて煮ます。

もし器から鍋に入れるまでに時間がかかれば、
あっという間に味が落ちるでしょう。

5.急ぎ酢を作る方法

烏梅うばい一合(150g)を上質の酢五合
(900ml)に浸しておき、
梅が酢を吸い込んで酢がなくなったら
よく乾かして粉にして保存します。

使うときはこの粉を水に入れると
上質な酢となるでしょう。

 ※烏梅=梅の実が熟す前の未熟なうちに
  収穫して燻したもの

烏梅(うばい)

【たまむしのあとがき】

以前登場した、夏に煮物を長持ちさせる方法は、唐辛子をかけるということでしたが、今回のはより信憑性が高いものでした。

唐辛子味にならずにすむ方法もあったんですね。

食べ物が腐らない工夫は本当に大変です。命がけです。

心配性の私たまむし、冷凍の肉や魚を解凍する数時間でも、夏場は腐らないか毎度毎度びびっています。

ところで、いつも馴染みのないものが登場すると、自分もわからないのだから、読んでる方もわからないはずと思い、画像を添付するようにしたのですが、結構中国のものが出てくるんですよね。

漢方の生薬なんかは、中国や朝鮮半島からの輸入が非常に多いというのを聞いていましたので、よく考えれば当然のことなのですが、日本の食材が輸入に頼っているのと比例しているんだなぁと、改めてショックを受けます。


マガジン作りました!
過去の記事はこちらからぜひご覧ください!
   ↓↓↓

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?