月のもののお悩み解決。古文書『廣益秘事大全』解読㉙
嘉永四年(1851)の古文書『廣益秘事大全』から、「即効妙薬類」解読の第29回目です。
前回の出産に関する記述以外にも、婦人科・産婦人科系のものはたくさんあるのですが、きわどい描写も多く、さまざまな生薬が登場するために面白さに欠けるという点から、大幅に割愛することにしました。この部分は、古文書講座のほうで扱いたいと思いますので、ご興味のある方はぜひご検討ください。
さて今回は、女性の月経についてのお悩み特集です。
こちらも男性には少し敬遠したい内容かもしれませんし、それなりに訳すのも躊躇われる箇所があるため、どうしようか迷いに迷いましたが、女性にとっては切っても切れないものですし、江戸時代はどう対応していたのか大変興味深いものですので、思い切って取り上げてみることにしました。
古今東西の女性の身体の最大の悩み、少しだけ覗いてみましょう。
1.月のもののめぐりが悪いときの薬
ミョウガの根を刻んで水で煎じ、
酒を少し入れて、空き腹に飲みましょう。
また、阿膠(アキョウ)※の粉を一匁(3.75g)
酒で飲むのも良いでしょう。
※阿膠=ロバの皮を水で加熱抽出して
作られる膠(ゼラチン)のこと
2.月のものが久しく来ず、お腹が張るときの薬
ミョウバンと蛇床子(ジャショウシ)※を
細かくして、酢で糊を溶き、ムクロジの
大きさに丸め、紅を上からかけて絹に包み、
陰門の中に入れます。
熱く感じたら取り替えましょう。
また、トウゴマ(唐胡麻)※をひとつ
細かくして、足の裏に張っておけば、
不思議なことに早速やって来ます。
※蛇床子=オカゼリ(丘芹)の果実
※トウゴマ=トウダイグサ科の大形一年草
3.月のものを延ばす方法
女性は場合によって、月のものを延ばさねば
ならないことがあります。
そのときはトウゴマ(唐胡麻)を細かくして
頭の百会(頭の真ん中)に張っておけば、
不思議といつまでも月のものが延びるのです。
いつでも取り外すとすぐにやって来ます。
ただし、性行為は避けましょう。
4.経血量が多くて止まらないときの薬
経血量が多くて止まらないときは、
阿膠(アキョウ)の黒焼きを一匁(3.75g)ずつ
酒で飲みましょう。
また、抜け毛の黒焼きも良いでしょう。
多すぎるときは崩血という熟したヘチマと
シュロ※の皮を同量黒焼きにして
酒か塩湯で飲みます。
血の塊が出るときは、キジノオ(オオワラビ)※
を炒って粉にし、酢で飲むと良いでしょう。
※シュロ=ヤシ科の植物の総称
※キジノオ(オオワラビ)
=オシダ科の常緑多年草
【たまむしのあとがき】
なかなか直球の内容なので、訳し終えても公開してよいものかという迷いがあります。
以前、現代人の経血量の多さは食品添加物の影響ではないか、という記事を見たことがあり、それなら昔はどうだったのか、真偽のほどを確認したかったので、ようやくここで遭遇することができたのですが、それなりの対応策はあったようですね。
ただ、時代による程度の差はまったくわかりませんし、ましてや、食品添加物の影響があるかどうかというのは、また別の課題のようです。
しかし、ここで登場した処方はとてもシンプルですが、今では無理そうなものばかり・・・。
これら植物が容易に手に入る環境もなければ、阿膠なんて日本に存在しているのかどうかもわかりません。驚異的な効果がありそうですけど・・・。
ロバの皮・・・(笑)
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