ノミ・シラミ・ハエ退治の方法とは?江戸時代の古文書『廣益秘事大全』解読⑪
嘉永四年(1851)の古文書『廣益秘事大全』から、奇巧妙術類(生活の豆知識編)の第11回目です。
今回はなんと!嫌われ虫大特集です。
1.アブラムシ駆除の方法
カワラヨモギ(原文で「青蒿」)※の
茎・葉をかまどの間に置くと
奇妙なことにアブラムシは湧かなくなる。
※カワラヨモギ=キク科ヨモギ属の多年草
2.ハエ退治の方法
古いお茶殻を煙で焚けば
ハエは即座にいなくなる。
3.ノミ退治の方法
三月三日にセンダン(原文で「楝樹」)※
の葉を畳の下に敷いておけば、
ノミ・シラミが出ることはない。
※センダン=センダン科の落葉樹
また、ウンコウ(ヘンルーダ)
(原文で「芸香」)※の葉を
畳の下に置くのもよい。
※ウンコウ(ヘンルーダ)=ミカン科の多年草
砂場に建てた新しい家にはノミが多いため、
塩のニガリを床の下に撒けば、ノミは生じない。
さらに、子どもの肌着をセンブリ
(原文で「当薬」)※を煎じて染めれば、
ノミやシラミを防ぐことができる。
※センブリ=リンドウ科センブリ属の二年草
畳の下にクララ(原文で「苦参」)※
を敷くのもよい。
※クララ=マメ科の多年草。
根を噛むとクラクラするほど苦いことから
転じてクララと呼ばれるようになった。
4.シラミ駆除の方法
白鳥の羽軸※に水銀を入れて、下帯※に結い
つけておけば、シラミはことごとく死ぬ。
また、衣服を一夜外に出して、
地面の上に直に肌着や下帯を広げておくと、
シラミは駆除できる。
あまりに多いときは土中に埋めておく。
※羽軸=鳥類の羽毛の中央を走る太軸
※下帯=ふんどしや腰巻などの下着。
もしくは、その上から結ぶ帯・下ひも。
また、アサガオの実(原文で「牽牛子」)※を
肌着の袖に入れておけばシラミは移らないし、
もし移っても早く駆除できる。
※アサガオの実(牽牛子)=アサガオの種子を
乾燥させて粉末にしたもの。生薬のひとつ。
ビャクブ(原文で「百部」)※と
ジンギョウ(原文で「秦艽」)※の
二つを粉末にして焼き、衣服を燻せば
シラミはことごとく駆除できる。
湯で煎じて洗うのもよい。
※ビャクブ=ビャクブ科のつる性の多年草
※ジンギョウ=リンドウ科のオオバリンドウ
などの根を乾燥したもの
5.頭のシラミを駆除する方法
リロ(シュロソウ)(原文で「藜蘆」)※を
粉にし、髪の中にすりつけて一夜おけば
シラミはことごとく駆除できる。
※リロ(シュロソウ)=ユリ科の多年草
【たまむしのあとがき】
シラミに悩まされるなんて、今よりも不衛生な時代を感じさせる内容ですね。
それにしてもいろんな虫が出てくるので、画像を添付しようと思ったのですが、あまりに気持ち悪いのでやめました。
その代わりといってはなんですが、植物がやたらたくさん出てきます。
「青蒿」「楝樹」「芸香」「当薬」「苦参」「牽牛子」「百部」「秦艽」「藜蘆」
ひぃぃ~~~。
原文にはルビがふってありますが、まぁ~さっぱりわかりません。
この『廣益秘事大全』という古文書の最大の特徴は、植物(生薬)が大量に登場すること。そしてそれは今後も加速していきそうです。
こうした植物の場合、文字を判別・解読した上で、それが昔の呼び方なのか・当て字か・現代名は何かなどを調べて、さらに画像で確認します。
正解がハッキリしているので、すべて解決したときはスッキリ爽快。
でも、小さな労力の積み重ねで、意外と時間がかかるのです。
よほどの植物マニアでなければ、普通は知らないものばかりなので、地味にコツコツ調べています。
最後に、目次の「退治」と「駆除」の使い分けですが、大きいもの=退治、小さいもの・全滅させるもの=駆除、というイメージでつけました。
ノミは駆除ではないかという気もしたのですが、ノミ駆除よりもノミ退治のほうがしっくりきたので、退治にしました。
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