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味噌汁の味は祖母の優しさ

今でも僕は味噌汁が大好きだ。食事に味噌汁が添えてあるとそれだけで嬉しくなる。
味噌の種類にこだわりはないが、あえて言うなら甘めの白味噌が好みである。具に至っては、それこそなんでもいい。味噌汁ほどどんな具材とも相性がいいシンプルな料理は珍しいのではなかろうか。玉ねぎ、にんじん、カボチャにじゃがいも。ゴボウに大根、シイタケ、しめじ、えのきになめこ。こんにゃく、白菜、ホウレンソウ・・・お豆腐に青ネギ、ワカメにお麩は王道か。

お椀を持ってそっと一口目をすすると、口の中に芳醇な味噌のうまみがフワッと広がる。次に具をつまんで口に入れる。味噌と具材の絶妙なハーモニーが奏でられる。最後の一滴を飲み干すまで幸せな気分に満たされる。同時に日常の喧噪を一瞬打ち消してくれる安心感が心に漂う。

味噌汁の味の思い出を辿ってみると、はるか昔の幼少期にに遡る。車で15分ほどの距離にある祖母の家には毎週のように家族で訪れていた。その都度一緒の食事をするのだが、必ずそこにあったのが祖母の手作り味噌汁である。
味噌汁は出汁づくりから始まる。いりこと北海道から取り寄せた利尻昆布。鰹節は削るところからである。台所にはいつも削り器が置いてあり幼い手で必死に固い鰹節を削るのを手伝っていたのを覚えている。具は庭の畑で採れた自家製の野菜を季節に合わせてアレンジする。特に好きだったのはカボチャの味噌汁。柔らかくなったカボチャの甘味は味噌汁との相性がとてもよかった。
そして隠し味に日本酒を少々入れるのが祖母流だった。一段とコクが深まりおいしさが増すのである。

思い返すと僕の味噌汁好きのルーツは幼少期に味わった祖母の味にあったようである。それから何といっても、最高の隠し味は祖母の愛情だったのかもしれない。



#元気をもらったあの食事

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